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誘いの手
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「ねぇ、ミナ」
「えっ。…あっ、アキ…」
ミナの顔が一瞬曇った。
今時のギャル風の女子高校生二人が、ミナに近寄ってきた。
「何よ、どうしたの?」
ミナは声を潜め、構える。
「冷たぁい。何、その態度ぉ」
チャラけた声に、ミナの眼がつり上がる。
「…やめてよね。アンタ達との付き合いは、終わったんだから」
「ひどっ~い。ヤダね、ユマ」
「うん、ヒドイよミナ。中学時代、あんなに仲良かったのに」
「…うるさいなぁ。言いたいことがあるなら、ハッキリ言って。マカが戻ってきちゃう」
今は放課後。
教室の掃除当番だったミナと、日直だったマカ。
ミナは掃除中で、マカは日誌を担任に渡す為に教室を出て行っている。
「マカ、ねぇ。あんなのと付き合ってて、何が楽しいの?」
アキが鼻で笑うように言うと、ミナの眉間のシワが深くなった。
「マカの悪口を言うな。それより用は何なの? 早く言ってくれないと、ムシするけど?」
「あっ、そうそう。今晩、ヒマ?」
「ちょっとしたお遊びするんだけど、ミナも参加してよ」
「クラブなら行かないし、合コンもしない」
「違うって」
「そんなんなら、ミナ誘わないって」
二人の笑い方に、ミナはホウキを持つ手に力を込めた。
早くしないと、マカが戻ってきてしまう。
こんな二人と一緒にいるところ、ホントはクラスメートにだって見られたくはない。
「学校の隅に、プレハブ小屋あるでしょ?」
「あそこでちょっと遊ぶんだ。大丈夫、どっちかって言えば、ホラー系だから」
「肝試しみたいなもの?」
「そうそう! それで夜の七時に、学校の門の前に集合ね」
「遅れちゃダメだかんね」
「って、ちょっと!」
「後一人、誘わなきゃいけないから」
「じゃ~ねぇ」
二人はミナの返事も聞かず、教室から出て行った。
入れ違いに、マカが戻ってきた。
「お待たせ、ミナ。…って、まだ掃除終わってないのね」
「あっ、ああ! ゴメン、マカ。すぐに終わらせるから!」
ミナは慌ててホウキを動かし始めた。
けれど頭の中は、アキとユマのことでいっぱいだった。
マカには絶対に言えない、言いたくない過去が、ミナにはある。
実はミナ、中学時代は少しグレていた。
ギャル風の格好をし、行動や考え方もそっち寄りになっていた。
両親が仕事一筋だった為、寂しさから行っていた。
けれど高校受験を前に両親と和解し、高校ではマカと出会ったことにより、今のミナになった。
アキとユマは中学時代の悪友。
高校からは同じクラスになることもなかったし、あえて自ら声をかけたこともなかった。
なのに今更…。
「ミナ? 手が止まってるわよ」
「あっ、ああ。ゴメン…」
マカは首を捻り、ミナの額に手を置いた。
「…熱はないみたいね。でも勉強疲れが出たかしら?」
「そっそうかな?」
「そうよ、ここんとこ詰め込みすぎたわね。…んっ、掃除は私が代わるから、ミナは休んでなさい」
「でっでも…」
「いいから。具合が悪い時は、甘えなさい」
そう言ってマカはホウキをミナから受け取った。
「それじゃ、私が掃除代わるからね! ちゃっちゃと終わらせて、早く帰りましょ!」
クラスメート達に聞こえるように言って、マカは掃除を始めた。
クラスメート達もマカに言われては、早く動くしかない。
そんなマカを教室の隅で眩しく見つめるミナ。
いついかなる時もミナの味方で、優しくしてくれるマカ。
だからこそ、自分は闇の中から抜け出せたのに…。
きっと今夜行かなければ、明日からしつこく付きまとわれるだろう。
となれば、昔の自分の過ちもマカに…。
ミナは唇を噛んだ。
「えっ。…あっ、アキ…」
ミナの顔が一瞬曇った。
今時のギャル風の女子高校生二人が、ミナに近寄ってきた。
「何よ、どうしたの?」
ミナは声を潜め、構える。
「冷たぁい。何、その態度ぉ」
チャラけた声に、ミナの眼がつり上がる。
「…やめてよね。アンタ達との付き合いは、終わったんだから」
「ひどっ~い。ヤダね、ユマ」
「うん、ヒドイよミナ。中学時代、あんなに仲良かったのに」
「…うるさいなぁ。言いたいことがあるなら、ハッキリ言って。マカが戻ってきちゃう」
今は放課後。
教室の掃除当番だったミナと、日直だったマカ。
ミナは掃除中で、マカは日誌を担任に渡す為に教室を出て行っている。
「マカ、ねぇ。あんなのと付き合ってて、何が楽しいの?」
アキが鼻で笑うように言うと、ミナの眉間のシワが深くなった。
「マカの悪口を言うな。それより用は何なの? 早く言ってくれないと、ムシするけど?」
「あっ、そうそう。今晩、ヒマ?」
「ちょっとしたお遊びするんだけど、ミナも参加してよ」
「クラブなら行かないし、合コンもしない」
「違うって」
「そんなんなら、ミナ誘わないって」
二人の笑い方に、ミナはホウキを持つ手に力を込めた。
早くしないと、マカが戻ってきてしまう。
こんな二人と一緒にいるところ、ホントはクラスメートにだって見られたくはない。
「学校の隅に、プレハブ小屋あるでしょ?」
「あそこでちょっと遊ぶんだ。大丈夫、どっちかって言えば、ホラー系だから」
「肝試しみたいなもの?」
「そうそう! それで夜の七時に、学校の門の前に集合ね」
「遅れちゃダメだかんね」
「って、ちょっと!」
「後一人、誘わなきゃいけないから」
「じゃ~ねぇ」
二人はミナの返事も聞かず、教室から出て行った。
入れ違いに、マカが戻ってきた。
「お待たせ、ミナ。…って、まだ掃除終わってないのね」
「あっ、ああ! ゴメン、マカ。すぐに終わらせるから!」
ミナは慌ててホウキを動かし始めた。
けれど頭の中は、アキとユマのことでいっぱいだった。
マカには絶対に言えない、言いたくない過去が、ミナにはある。
実はミナ、中学時代は少しグレていた。
ギャル風の格好をし、行動や考え方もそっち寄りになっていた。
両親が仕事一筋だった為、寂しさから行っていた。
けれど高校受験を前に両親と和解し、高校ではマカと出会ったことにより、今のミナになった。
アキとユマは中学時代の悪友。
高校からは同じクラスになることもなかったし、あえて自ら声をかけたこともなかった。
なのに今更…。
「ミナ? 手が止まってるわよ」
「あっ、ああ。ゴメン…」
マカは首を捻り、ミナの額に手を置いた。
「…熱はないみたいね。でも勉強疲れが出たかしら?」
「そっそうかな?」
「そうよ、ここんとこ詰め込みすぎたわね。…んっ、掃除は私が代わるから、ミナは休んでなさい」
「でっでも…」
「いいから。具合が悪い時は、甘えなさい」
そう言ってマカはホウキをミナから受け取った。
「それじゃ、私が掃除代わるからね! ちゃっちゃと終わらせて、早く帰りましょ!」
クラスメート達に聞こえるように言って、マカは掃除を始めた。
クラスメート達もマカに言われては、早く動くしかない。
そんなマカを教室の隅で眩しく見つめるミナ。
いついかなる時もミナの味方で、優しくしてくれるマカ。
だからこそ、自分は闇の中から抜け出せたのに…。
きっと今夜行かなければ、明日からしつこく付きまとわれるだろう。
となれば、昔の自分の過ちもマカに…。
ミナは唇を噛んだ。
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