かくれんぼ

hosimure

文字の大きさ
上 下
2 / 4

2

しおりを挟む
きゃーっ!

うわああ!

「えっ?」

悲鳴に似た声に、体が固まります。

でも思い出しました。

先生の中には、生徒を驚かせて喜ぶ人がいることを。

きっとその先生が、見つけた生徒達を驚かせているのでしょう。

わたしも何度か驚かされたことがあるので、あんな声を出したことがあります。

ここには窓もないので、外の様子は分かりません。

けど腕時計を見ると、始まりから20分しか経っていませんでした。

先生が降参の声を出すのは、かくれんぼが始まって1時間後と決まっています。

1時間経ったら出てくること、かくれんぼのルールです。

ガッタン

ゴトゴトッ

「…ずいぶん騒いでいるのね」

わたしは響き渡る声や音を聞きながら、再びまぶたを閉じました。

そして目を覚ましていた時、何と1時間も寝ちゃっていました。

「ヤバッ! 怒られちゃう!」

慌てて引き戸を開けて、本棚を動かしました。

急いでいても、引き戸を閉めて、本棚を戻すことは忘れません。

見つからなければ、またここに隠れるつもりだからです。

隠れた痕跡を残さないことも、かくれんぼでは大事なことです。

物を動かしたので、洋服が少し汚れました。

服を叩いて、髪型も直します。

手鏡で大丈夫なことを確認して、わたしは物置部屋の扉に手をかけました。

扉を開けると、すでに夕日が窓から差し込んでいました。

廊下は真っ赤に染まっています。

「あちゃっ。みんな、もう帰っちゃったかな?」

それでも職員室に行けば、先生達がいるはずです。

一言謝りに行かないと、先生達はいつまでも探していることでしょう。

前にもあったことです。

1人の生徒が隠れている所でうっかり寝てしまい、先生達どころか、村の大人達まで探しに回ったのです。

…結局、体育倉庫のマットの間に寝ているところを発見され、大事にはならなかったのですが…。

それでも怒られていました。

なので全校生徒達は腕時計か、あるいは携帯電話を持つようになりました。

制限時間を確認する為に。

なのにわたしとしたことが…!

…ところが耳を澄ませて気付いたのですが、物音一つしません。

さっきまで、アレほど騒いでいたのに…。

わたしを呼ぶ声も聞こえません。

もしかして、全員外に行っちゃったんでしょうか?

わたしは慌てて廊下に飛び出しました。

そして…見てしまいました。

廊下に広がる赤は、夕日の色ではありませんでした。

真っ赤な、血の色。

「うぐっ…!」

むせ返るような血の匂いに気付き、頭の中がガンガン鳴り響きます。

「みっみんな…」

血の跡をたどり、わたしは一つの教室の前に来ました。

ゆっくりと扉を開くと…。

そこには重なり合った、生徒達と先生達の死体がありました。

「っ!?」

白目をむき、舌を出し、体からおびただしいほどの血を流し続ける彼等は、すでに人間ではありませんでした。

ただの、

死体、

です。

それを理解したところで、わたしは弾かれたように廊下を走り出しました!

「いっいやっ、いやぁああ!」

叫びながらも走ると、廊下にはまだまだ血が広がっていました。

先生に報告しようと、二階に上がります。

ところが二階にも血の跡や、見知った人達の死体があります。

「せっ先生!」

ガラッと職員室の引き戸を開けると、そこには…

死体が、

いっぱい、

ありました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒き手が…【マカシリーズ・4話】

hosimure
ホラー
マカの親友・ミナは中学時代の友達に誘われ、とある儀式を行います。 しかしそれは決して行ってはならないことで、その時マカは…。 【マカシリーズ】になります。

チェーンメール【マカシリーズ・8】

hosimure
ホラー
私の周囲の学生達は皆、チェーンメールに怯えています。 いつの頃か、学生限定で送られてくるメール。 他の人に送ると、自動的に消えるメール。 いつまでもケータイに残しておくと…。

光輪学院高等部・『オカルト研究部』

hosimure
ホラー
名門・光輪学院高等部には、選ばれし生徒しか入部できない部がある。 それが『オカルト研究部』。 彼等の部活動は、学院にまつわる封じられた話によるものだった。

扉の向こうは黒い影

小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。 夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。

変容

小紕 遥
ホラー
夢と現実の境界が溶ける夜、突然の来客。主人公は曖昧な世界で何を見るのか。

おいしいごはん

ういすきー
ホラー
ホラー短編集です。 おいしいごはん お母さんが食べていたお肉は人肉でした。 教育 私の話は真実だと思いますか?

春日あざみ
ホラー
「なあ、今お前どこにおるん?」 私は彼氏と、他愛ない会話を電話でしていたつもりだった。だけどそう思っていたのは、どうやら私だけだったらしい。

水難ノ相

砂詠 飛来
ホラー
「あんた、水難の相が出てる――3日後に死ぬよ」  予備校講師の赤井次晴は、水難の相が出ていると告げられる。  なんとか死を免れようと、生徒であり歳下の彼女である亜桜と見えないものに抗うが―― 専門学生時代に執筆したお話です。 誤字脱字のみをなおし、ほかはすべて当時のままの文章です。 いろいろとめちゃくちゃです。

処理中です...