神隠し

hosimure

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噂のオバケ屋敷で起こったこと

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でもとりあえず、何かお供えしたほうが良いのかもしれない。

屋敷の中では、仲間達が肝試しなんかしているし…。

…そう言えば町の中を歩いてて気付いたことだけど、この町には神社やお寺を見つけられなかった。

もしかしたら町外れにあるかもしれないけど、でも電柱や案内板があってもおかしくはないのに…。

不思議に思いながらも、カバンからお菓子をいくつか取り出した。

チョコ、クッキー、アメ、ポテチ…。

おっお供えになるのって、アメぐらい?

でもこのアメ、ジュース味だしなぁ。

本当はお饅頭や金平糖など、ちょっと昔の和菓子も持ってきていた。

けれど仲間達全員に配ってお終い。

手持ちは安っぽい洋菓子しか残っていない。

途方に暮れていたせいか、背後の気配に全く気付かなかった。

―ねぇ、お菓子くれない?

「えっ?」

慌てて振り返ると、2人の少年がいた。

まだ12歳ぐらいだろうか?

1人はニコニコしていて、1人はブスッとしている。

―おねーさん、屋敷にいる人達のお友達?

あっ、もしかしてこの町の子供かな?

ここへ入っていくアタシ達を見かけて、追いかけてきたとか…。

まあ大人達のように、咎めたりはされないだろう。

「えっええ…。どうしてもこのお屋敷で肝試しがしたいと言ってね。アタシはあんまり乗り気じゃないんだけど…」

―でも一緒にいるなら、同罪だ。

ぶすっとしている男の子に言われ、胸にグッサリ言葉の矢が刺さる。

「そっそうね。結局は同じよね…」

シュン…となると、ニコニコ顔の少年がアタシの頭を撫でた。

―ゴメンね。コイツ、口悪くてさ。

いや、キミも結構…。

そう思った時だった。

仲間の声が聞こえた。

どうやら1番目に行ったペアが戻って来たらしい。

「あっ、いっけない! そっそれじゃあお菓子、どれが良い?」

慌ててカバンの中を開けて見せるも、2人は仲間を見ている。

―ねぇ、おねーさん。他の人にも会わせてよ。

「えっ? 何で?」

―お菓子、もっと欲しいから!

…輝かんばかりの笑顔で言われても…。

「会わせるのは良いけど…くれるとは限らないわよ?」

正直言って、まだ精神的に幼い人達ばかりだ。

悪い人ではないのだけど…好奇心が強いと言うか…。

―良いから。早く行こうよ。

ぐいっと手を掴まれ、引かれた。

「わっ分かったわよ」

でも…その手はとても冷たかった。

渋々屋敷の入り口に戻ると、仲間は2人の対照的な少年を見て、きょとんとした。

そして案の定、どうしたのかと尋ねてきた。

なので苦笑しながら、お菓子が欲しいのだと説明すると、一気にイヤな顔をされた。

そして次の瞬間、口々に飛び出るのは文句ばかり。

なのでアタシは少年2人の腕を掴み、社の前に戻った。

「やっやっぱりダメだったね。ごっゴメン」

息も切れ切れに、両手を合わせて謝った。

―う~ん。まあ良いよ。ある程度、予想はついていたしね。

ニコニコ顔の少年も、さすがに苦笑している。

「おっお詫びと言ったらなんだけど、アタシの持っているので良かったら、好きなだけ持ってって良いから」

カバンを再び下ろして、中を開く。

―ホント? じゃあ、コレとコレと…

―コレも。あとコレだな。

さっきまで不機嫌だった男の子まで、カバンに手を突っ込んだ。

…おかげでほとんど無くなってしまった。

まっ、いっか。

駅付近には商店街があったし、帰りにそこで買えば。

「じゃっじゃあアタシは戻るわね。キミ達も暗くならないうちに、早く家に帰った方が良いわよ」

―うん。お菓子、ありがとね。おねーさん。

―じゃな。

「うん。じゃあね」

軽くなったカバンを持ち直し、アタシは駆け足で仲間の元へ向かった。

―…おねーさんだけは見逃してあげるよ。

―ああ。アンタだけは、な。

2人の少年の呟きが、風に乗って聞こえたけれど、アタシは振り返らず進んだ。

…この後起こることを知らずに。
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