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永久の夏
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立派な一人の青年に成長していた。
分かっていたことだけど…。
「寂しいもんだね…」
「何がだよ?」
黒い浴衣を着ている由月は、すっかり昔の面影は無かった。
最近の言葉で言うと、肉食系の野性味のある青年へ成長してしまったのだ。
「僕の可愛い由月が、こんなに立派になるのがだよ」
「だれが可愛かったんだよ! 相変わらず変なこと言うヤツだな」
ムキになりやすいところは変わっていない、と。
「雅貴はあんまり変わってないみたいだな」
「最後に会った時、僕はもう18歳だったからね。アレから少しぐらいしか成長していないよ」
身長ももう止まってしまったし、今では彼の方が高いだろう。
「まっ、今日からよろしく。約束通り、ちゃんと教師として赴任してきたから」
「ああ、本当に守ったんだな」
「言ったろう? 僕はキミを守れるぐらい強くなって、ここに戻って来るって」
「お前の可愛い由月じゃなくてもか?」
「外見は変わっても、中身は可愛いままだよ」
「お前…言うようになったな」
「多少、強くなっただけだよ。でも…」
僕はゆっくりと彼を抱き締めた。
「四年間の我慢はさすがにきつかったかな」
「…バカ。そんなのオレだって同じだ」
ぎゅっと抱き締められると、思わず苦笑する。
こういうところは変わっていない。
「そう言えば後継者問題、解決しそうなんだって?」
「ああ、二番目の姉貴が頑張ってるからな。親父もそろそろ疲れたんだろう」
「由月も頑張っただろう? 12年間も引きこもり続けたんだから」
「最初は意地だったんだけどな。いつの間にか、コレが当たり前になってた」
本人も驚いているらしい。
「まあ引きこもっていたおかげで、2人っきりでいられる時間が多かったわけだし? 僕にとってはラッキーだったんだけどね」
「言ってろ」
クスクス笑いながら、何度もキスをする。
僕の手が、浴衣の合わせ目から彼の肌を撫でる。
肌触りも変わっていない。
由月の手も、僕の着ているTシャツの下からもぐりこみ、背中を撫でる。
「相変わらず男とは思えない手触りだよな。妹だって、こんなにスベスベしていないぞ?」
「都会人だからね。でもこれからは分からないだろう?」
「雅貴は変わらない気がするけどな」
僕の背中を撫でる手が、ふと止まった。
「あっ、忘れてた。大事なことがあったんだ」
「んっ…?」
由月は僕を片手で抱き締めたまま、もう片方の手を伸ばし、机の上からファイルを取った。
「ちょっとコレ、見てくれよ」
「何? コレ」
僕は受け取り、ファイルを開いて見た。
内容はここら辺の土地のことだった。
昔、温泉や金が出たという歴史の一覧表もある。
「…コレ、由月が研究しているの?」
「ああ。昔の資料とか出してさ、まとめてみたんだ」
「ふぅん。分かりやすいし、良いと思うよ」
「そっか。それでオレ、温泉や金を探してみようかと思うんだ」
「へぇ…って、はい?」
思わぬ言葉に、思わず眼が丸くなる。
「探すって…温泉や金? でも取り尽してしまったんじゃ…」
「でもアレから何十年も経っているし、まだ探していない所も多いんだ。地質によっては、また金や温泉が出る所があるかもしれない」
「そうかもだけど…お金持ちになりたいの?」
後継者にはなりたくないことは知っている。
だから考えつくことなんて、それぐらいしかない。
「まあな。金があれば、雅貴を養えるだろう?」
「あっ」
五年前に由月が言っていたことか。
「でっでも本当に出るとは限らないんだろう?」
分かっていたことだけど…。
「寂しいもんだね…」
「何がだよ?」
黒い浴衣を着ている由月は、すっかり昔の面影は無かった。
最近の言葉で言うと、肉食系の野性味のある青年へ成長してしまったのだ。
「僕の可愛い由月が、こんなに立派になるのがだよ」
「だれが可愛かったんだよ! 相変わらず変なこと言うヤツだな」
ムキになりやすいところは変わっていない、と。
「雅貴はあんまり変わってないみたいだな」
「最後に会った時、僕はもう18歳だったからね。アレから少しぐらいしか成長していないよ」
身長ももう止まってしまったし、今では彼の方が高いだろう。
「まっ、今日からよろしく。約束通り、ちゃんと教師として赴任してきたから」
「ああ、本当に守ったんだな」
「言ったろう? 僕はキミを守れるぐらい強くなって、ここに戻って来るって」
「お前の可愛い由月じゃなくてもか?」
「外見は変わっても、中身は可愛いままだよ」
「お前…言うようになったな」
「多少、強くなっただけだよ。でも…」
僕はゆっくりと彼を抱き締めた。
「四年間の我慢はさすがにきつかったかな」
「…バカ。そんなのオレだって同じだ」
ぎゅっと抱き締められると、思わず苦笑する。
こういうところは変わっていない。
「そう言えば後継者問題、解決しそうなんだって?」
「ああ、二番目の姉貴が頑張ってるからな。親父もそろそろ疲れたんだろう」
「由月も頑張っただろう? 12年間も引きこもり続けたんだから」
「最初は意地だったんだけどな。いつの間にか、コレが当たり前になってた」
本人も驚いているらしい。
「まあ引きこもっていたおかげで、2人っきりでいられる時間が多かったわけだし? 僕にとってはラッキーだったんだけどね」
「言ってろ」
クスクス笑いながら、何度もキスをする。
僕の手が、浴衣の合わせ目から彼の肌を撫でる。
肌触りも変わっていない。
由月の手も、僕の着ているTシャツの下からもぐりこみ、背中を撫でる。
「相変わらず男とは思えない手触りだよな。妹だって、こんなにスベスベしていないぞ?」
「都会人だからね。でもこれからは分からないだろう?」
「雅貴は変わらない気がするけどな」
僕の背中を撫でる手が、ふと止まった。
「あっ、忘れてた。大事なことがあったんだ」
「んっ…?」
由月は僕を片手で抱き締めたまま、もう片方の手を伸ばし、机の上からファイルを取った。
「ちょっとコレ、見てくれよ」
「何? コレ」
僕は受け取り、ファイルを開いて見た。
内容はここら辺の土地のことだった。
昔、温泉や金が出たという歴史の一覧表もある。
「…コレ、由月が研究しているの?」
「ああ。昔の資料とか出してさ、まとめてみたんだ」
「ふぅん。分かりやすいし、良いと思うよ」
「そっか。それでオレ、温泉や金を探してみようかと思うんだ」
「へぇ…って、はい?」
思わぬ言葉に、思わず眼が丸くなる。
「探すって…温泉や金? でも取り尽してしまったんじゃ…」
「でもアレから何十年も経っているし、まだ探していない所も多いんだ。地質によっては、また金や温泉が出る所があるかもしれない」
「そうかもだけど…お金持ちになりたいの?」
後継者にはなりたくないことは知っている。
だから考えつくことなんて、それぐらいしかない。
「まあな。金があれば、雅貴を養えるだろう?」
「あっ」
五年前に由月が言っていたことか。
「でっでも本当に出るとは限らないんだろう?」
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