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再会の夏休み

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次の年の夏休みも、その次の夏休みも、僕は由月の元を訪れた。

母が伯父と和解したおかげで、毎年泊まりに行くことができた。

と言うより、父と伯父が仲良くなったおかげだろう。

三人の中で、父が一番楽しそうだった。

何でも伯父から教えてもらった川釣りや畑作りに強く興味を持ったらしく、家に帰ってからは家庭菜園を始めたぐらいだ。

僕も僕で、ほぼ毎日のように由月と連絡を取っていた。

他愛も無いメールや電話のやり取りを続けて、僕等の仲はより深くなった。

時々だけど、写メも送ってくれた。

畑で実った野菜や果物、それにキレイに咲いた花や木を撮ってくれた。

由月自身の写真はなかなかくれなかったけど、それでも彼の送ってくれた写真は大事に保存していた。

やがて月日は過ぎて、僕は高校1年、彼は中学1年になった。

お互い、春に新しい制服の写真を送りあった。

彼の通う地元の中学は黒の学ラン、僕は公立の高校でブレザーだった。

そうしてまた夏休みになり、僕は彼の元へ行った。 
「由月、久し振り。今年も来たよ」

「ああ、久し振り。雅貴」

最初はアンタ呼ばわりをしていた由月だけど、最近になって名前で呼んでくれるようになった。

相変わらず部屋からは出たがらず、僕が来てもみんなの前には出て来なかった。

だからいつも僕の方から由月の部屋へ行く。

まあこうした方が2人だけで静かにゆっくり話ができるから、僕にとってはいいんだけど。

「由月、また身長伸びた?」

「ん? そうかな? まだ雅貴の方が身長高いじゃん」

「まあまだ成長期だからね」

由月は手足が長くて、浴衣を着ていると細身に見えた。

相変わらず気難しい雰囲気はあるけど、大人っぽくなっていた。

「雅貴、あんまり焼けてないね」

彼の細い指が、僕の腕に触れた。

「あっああ、うん。あんまり外で遊ばないし、プールも屋内にあるから、陽に当たらないんだ」

「ふぅん。ウチは屋外プールだし、外に出たら陽があっついから、焼けやすいんだよな」

難しい顔をして、由月は自分の腕や足を見る。

確かにこの辺の人は、みんな夏になると真っ黒になる。

「あはは。まあ健康的でいいんじゃないかな? 僕はあんまり焼けない体質みたいだし」 

ここに来ると女性よりも肌が白いので、弱く見られているだろうな。

「逆にオレは焼けやすい。ちょっと陽の下に出ただけで、すぐ焼ける」

確かに彼はいつも焼けていた。

なのに引きこもっているのだから、体質なんだろう。

「あっ、そうだ。ねぇ、川釣りを教えてくれないかな?」

「川釣り? 良いケド、何でまた?」

「父さんと伯父さんがあんまりに楽しそうにやってるから。僕も川魚好きだし、自分で釣ってみたいと思ったから」

「いいよ。じゃあ明日の朝にでも行こうか」

「うん!」

…ごっ誤魔化せたかな?

彼の触れた腕の部分が、とても熱かった。

彼の体温は確かに高いけど、別の意味で熱い気がした。

会う度に胸が高鳴る。

一緒にいて、ときめく。

その気持ちに名前を付けるのは、躊躇われた。

だから僕は隠すことにした。

彼に会うのはとても嬉しいし楽しい。

でも同じぐらいの強さで、苦しくて辛くなってきているのを、感じていた。

それは年月を重ねるごとに、重く深くなっていった。

「そう言えばさ」

「うっうん」

「オレ、コクられたんだ」

「…えっ?」

由月は何でもないような顔をして、軽く言った。 


「隣の中学の女の子に。同い歳だったかな? 学校の交流会でオレを見て、一目惚れしたとかで」

「へっへぇ~」

田舎の子供とは言え、やっぱり女の子はやる時はやるんだな…。

僕には無い行動力が、少し羨ましい。

「でも断った」

「断ったの?」

「ああ。だって何だかうるさそうだったし。そういうのは身内で充分」

険しい表情で言うところを見ると、相変わらずお姉さん達との関係はよろしくないらしい。

「雅貴こそ、彼女できた?」

「えっ? いや、できないよ。オレみたいな草食系なんて、あんまり好かれないし」

「でも告白ぐらいは受けたこと、あるんじゃないの?」

彼はイタズラ心を出し、ニヤニヤしている。

「そっそれは…」

全く無い、とは言えない。

何故か年上に好かれやすいみたいで、先輩から何度か告白めいたことは言われたことはある。

だけど…そのたびに、由月の顔が浮かんでしまう。

勿体無いと友達に言われつつ、断ってきた。

「まっまあ彼女なんていないよ! 今は高校入学したてて忙しいし。由月だってそうだろ?」

「まあな。ちょっと勉強がヤバイかも。雅貴、後で教えてよ」 
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