ケータイ電話の都市伝説【マカシリーズ・1話】

hosimure

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「どっかで聞いたことのある話だね」
 女子高校生のお昼休みは、大抵噂話で盛り上がる。 
 3つめのパンを食べながら、マカはシラケた顔でそう言った。
「何よぉ。信じてないワケ?」
 対して、マカの向かいで紙パックのミルクティーをすすりながら話すミナは不満そうだ。
「ありがちな都市伝説だと言ったまでだよ。『ケータイに送られてくる呪いのメールを見たものは、呪われる』。マンガ、ゲーム、小説、映画、ドラマ、何にでも取り上げられる」
「そっそれはそうだけどぉ…。でも今回はマジだって! 実際、あたしの友達が…」
「ミナ、近しい友達じゃないなら、それは噂に過ぎない」
 そう言われ、ミナは言葉に詰まった。
 事実、今から言おうとしていたことは友達が友達から聞いた話しで…つまり出所の分からない話しなのだ。
「なっなら、こんな話しはどお? あたし逹、女子高校生の中に、オバケが紛れこんでいるっていう噂話」
 三つめのパンを食べ終えたマカは、ゴミを袋に入れた。
 興味の無さそうなその態度に、ミナはガックリうなだれた。
「ほぅ。それはどんな話しだ?」
 視線をこちらに向けないまま、マカがそう言ったので顔を上げて話し始めた。
「あっあのね」
 そのウワサはこうだった。


 女子高校生の中に、人成らざるものがまじっている。
 その存在は若い子の生気を吸って生きているらしい。
 吸われたものは、1日は寝込んだままになる。 


「…それはただ単に、学校を休みたい生徒が、口実にしているだけでは?」
「……かもね」
 言っているうちに、自分でもそう思えてきた。
「まあ都市伝説なんてそんなものだろう」
「でっでも、ケータイの方は本当だと思うよ」
「しかし【解放】って何?キレるって意味?」
「…かな?」
 自信無さげに答えると、マカはため息をついた。
「まっ、あんまり深入りするな。受験に必要無い話しなら尚更だ」
「分かっているわよぉ。いーじゃない、たまの息抜きぐらい」
「ミナは気が抜けている。もう少ししっかりしろ」
 そう言ってマカはゴミ捨てに立ち上がった。
 ミナは深く息を吐いた。
 すると近くにいた友人逹に声をかけられた。
「マカは相変わらずそっけないわね」
「ミナ、友達してて疲れない?」
「そっそんなことないよぉ。マカ、面倒見てくれるしあたしの話し、ちゃんと最後まで聞いてくれるもん」
 しかし友人逹は複雑な顔をするばかり。
 やがてマカが戻ってくるのと同時に教師も教室に来たので、話しは中断された。
 クラスメートの中で、二人はこういうイメージを持たれている。
 ミナは育ちの良い娘。基本的に人を強く憎むことがない。だがそれは優柔不断とも言える。可愛らしい容姿が、子供っぽさを出す。
 マカは常に冷静沈着。だが冷めているところがある。ミステリアスで美しい容姿から、近寄りがたい雰囲気がある。
 全く正反対の二人が、この後、今しがた話していたウワサに巻き込まれることを、誰も予想だにできなかった。

 ―そう。非現実は何時だって扉を開けて待っている。現実から逃げ出したいと言う、願いを持つものに―



 それから数日後。
 ミナはむくれた表情でケータイをいじっていた。
 別に見たいサイトがあるワケではないが、インターネットを適当に見回っていた。
 むくれている原因は、今日行われた三者面談。
 しかしミナのところは両親揃って来た。
 当人逹が行きたいと言うので、担任に無理を言って、来てもらったのだが…。
 結果は大失敗。
 一応、大学受験を希望していたが、緊張感が無いと3人から怒られた。
 いや、マカを含めると4人だ。 
 緊張感が無いワケじゃない。
 ただヤル気が無いだけなのだと言ったら、もっと怒られた。
 …いや、マカは呆れていた。
 マカは成績優秀者として、表彰されたこともある。
 なので担任と両親は彼女から勉強を教われと言った。
 マカからも教えてやるとは言われたものの、ヤル気が無いので、頼め無い。
 何にも出来ずに、ただ時間を過ごしてばかりではいけないとは感じている。
 しかしヤル気が全く無い。
 なのでふてくされて、ケータイをガチャガチャいじっていたのだ。
 しばらくして、友人からメールが届いた。
 中学時代の友人で、高校は別になったので今は滅多に会わない。
 そんな友人がくれたメールの内容を見て驚いた。

『ケータイの都市伝説、知ってる? そのサイト、見つけたんだ!』

 メール内容はその文章と、一件のHPアドレス。
 ミナは深呼吸して、アドレスを押した。



 それから一ヶ月後。
 ミナは変わった。
 自ら勉強をするようになり積極的になった。
 そのおかげか、成績は上がり、周囲の評判もよくなった。
 マカに迫るほどの成績の上がり具合に、マカが難色を表した。
「ミナ、自分自身に何をした?」
 ある昼休み。マカはいつになく厳しい顔をしていた。 
「ふぇっ?!」
 あまりにまとを得た質問に、思わず声がひっくり返った。
「多少の成績の上げ下げはまあ良い。精神的なものが絡んでいるからな。しかし上がりっぱなしと言うのはいただけない」
 そう言って、2つめの弁当に手を付ける。
「特にお前みたいな優柔不断タイプには、あり得ないことだ」
「…はっきり言ってくれるわね?」
「事実をのべたまでさ。ーで? 何をしたんだ?」
「例のサイトを見つけたの」
 ミナはあっさり言った。
「中学時代の友達に教えてもらったんだ。ヤッパ本当だった!」
「ほぅ。それでお前は【解放】したのか?」
「したように見えない? あたし変わったよ?」
 マカは弁当を半分食べたところで、ペットボトルのお茶を飲んだ。
「今のミナはサイトの力を借りて、自信がついただけに過ぎない。実力で得てないものはいずれ消え去る。その後も今のミナが保てるなら、変わったことを認めよう」
「借りてって…。いずれは消え去るって…」
「あり得ないことではなかろう? 突然得たのだから突然消えてもおかしくない」
 濁りの無いマカの眼に見つめられ、ミナは思わずその場から走り去った。 
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