上 下
5 / 5

5

しおりを挟む
「…やっぱり寂しいよ、マカ」

言葉は白い息となり、暗闇に消えていく。

まるで自分の姿のようで、気持ちが重くなる。

「…何泣きそうな顔をしているんだ? ハズミ」

「えっ?」

顔を上げると、目の前にはマカがいた。

大きな紙袋を持って、険しい顔をしている、いつものマカが。

「せっかく生まれなおしたというのに、その顔は何だ? パーティー好きなんだろう? なら、喜ぶべきだろう?」

そう言いつつ紙袋をあさり、ハズミの元へ近寄ってくる。

「お前の為のクリスマスパーティーだろう? なら、少しは気を使え」

目の前で立ち止まったマカは、ふわっ…とハズミの首に、オレンジ色のマフラーをかけた。

「えっ? コレって…」

「ソウマの店で扱っている毛糸で、私が編んだものだ。わりと上手くできただろう?」

笑顔でそう言いつつ、マフラーを巻く。

「マカの手編み?」

「ああ、編み物は趣味なんだ。ストレスが溜まった時とか、よく編むぞ」

ハズミは震える手で、マフラーに触れた。

「あったかい…」

「そりゃマフラーだしな。ソウマの店の毛糸だし、特別製だ。大事にしろよ」

「うん…。うん!」

ハズミな何度も頷き、そしてマカに抱きついた。

「マカっ…! マカ!」

「ああ、何だ? 私はここにいるだろう?」

「うん! マカ、ここにいる!」

ぎゅうっと抱きしめると、マカのあたたかな『気』を感じる。

顔を上げると、笑顔のマカが見える。

「…さ、店に入ろう? みんな、心配しているぞ?」

「うん!」

ハズミはマカの手を引き、店に戻った。

マカの突然の出現に、みな、目を丸くした。

けれどすぐに歓迎した。

「ああ、そうだ。マミヤ、キシ、アオイ。ちょっとそこへ並べ」

「ああ」

「はい」

「分かりました」

三人がマカの目の前に並ぶ。

するとマカは、マミヤに黒い手袋、キシに青のボウシ、アオイに生成り色のセーターを渡した。

「クリスマスプレゼントだ」

「えっ? あっありがとう」

「嬉しいですよ。ステキなものを、ありがとうございます」

「マカさん、器用なんですね。手編みでしょう?」

「まあな。今年は良い毛糸を買ったおかげか、上手く編めて…」

楽しそうに話すマカ達の姿を見て、ハズミはギョッとした。

「あれっ!? オレだけじゃないの?」

「そんなワケあるか!」

しょげるハズミに、マミヤとキシ、そしてアオイが慰めの言葉をかける。

怒鳴ったマカには、ルカが耳打ちをする。

「でも一番丁寧に編んだの、ハズミのよね?」

「っ!? うるっさい!」

マカは顔をしかめ、小声で叫んだ。

その顔は、少し赤かった。



―END―
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

誘いの動画【マカシリーズ・22】

hosimure
ホラー
ケータイにまつわる都市伝説は数多い。 オレの周囲でも最近、ケータイの都市伝説がウワサになって、流行っている。 とあるサイトからダウンロードできる動画がある。 しかしその動画には、不思議な魅力があり、魅入られた人間は…。 【マカシリーズ】になります。

擬態【マカシリーズ・2話】

hosimure
ホラー
マカの周囲で最近、おかしなウワサが広がっている。 それはすでに死んだ人が、よみがえるというウワサ。 ありえない噂話ながらも、心当たりをソウマと共に探り出す。 しかし二人は同属の闇深くを覗き込んでしまうことに…。 【マカシリーズ】になります。

さまざまな結婚式【マカシリーズ・15】

hosimure
ホラー
読者の皆様、はじめまして。 わたくし、結婚アドバイザーのルミと申します。 いつもは普通の結婚式も担当いたしますが、わたしにだけ扱える、結婚式というものがございます。 その仕事内容、ご覧になってみますか?

黒き手が…【マカシリーズ・4話】

hosimure
ホラー
マカの親友・ミナは中学時代の友達に誘われ、とある儀式を行います。 しかしそれは決して行ってはならないことで、その時マカは…。 【マカシリーズ】になります。

オマジナイ【マカシリーズ・9】

hosimure
ホラー
オマジナイは「御呪い」。 その意味は、神仏その他不可思議なものの威力を借りて、災いや病気などを起こしたり、また除いたりする術。 毒にも薬にもなる呪法こそが、オマジナイ。

支配者【マカシリーズ・7】

hosimure
ホラー
わたしは今、小学5年生。 名前をルナって言います♪ 自分ではフツーの女の子だと思っているんだけど、みんなには「にぶい」ってよく言われる。 確かに、自分のクラスの支配者を気付いていなかったのは、わたしだけだったみたい! でも…本当に支配しているのは、誰かしら?

柘榴【マカシリーズ・5話】

hosimure
ホラー
殺された人間が、肉料理になるという事件が起きた。 専門学生のヒミカはマカに依頼され、事件を解決しようとする。 ヒミカは自分の恋人を疑っており、はたして真相は…。

地下鉄【マカシリーズ・3話】

hosimure
ホラー
あなたはご存知ですか?  この世には降りてはならない地下鉄への階段があることを…。 マカの従姉・女子大生のルカは地下鉄でバイトをしています。 それはちょっと特殊な仕事です。 【マカシリーズ】になります。

処理中です...