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小学生(柚季-ゆずき-)×芸術家(美園-みその-)
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「ねぇ、柚季くん。ボクらとサッカーしない?」
クラスメートの男子生徒三人組が、サッカーボールを持ちながらオレに声をかける。
「―悪い。あんまサッカー好きじゃないんだ」
「そっそっか」
「じゃあまた明日ね」
「ああ」
三人は肩を落としたが、そのまま教室を出て行った。
「はあ…」
教室に残っているクラスメート達の視線が煩わしくて、オレはランドセルを背負うと足早に教室を出た。
この街に引っ越してきて二週間が経った。
父親が転勤族で、物心ついた時には全国をあっちこっち移動していた。
けれど三ヶ月前、海外へ出張することが決まった。
期間は三年、しかし海外へオレを連れて行くことを躊躇った親父は、実家の両親-オレにとっては父方の祖父母の家に預けることにした。
祖父母は元気で、とてもオレのことを可愛がってくれる。
この街も田舎と言えばそうだが、住み心地は良かった。
住宅地の側には森林公園や山があり、空気のキレイな所は景色もキレイなんだと、オレは改めて実感した。
…けれどオレの方に問題があった。
幼い頃から転校ばかり繰り返してきたせいか、友達の作り方を忘れてしまった。
いつも仲良くなった友達ができても、すぐに引っ越しで離ればなれになってしまう。
だから適度な人付き合いしかしてこなかった。
けれど今回ばかりは話が違う。
3年後、両親は海外から帰ってきたら、この街に腰を下ろすことを決めた。
幸いにも街中に親父の勤めている会社の支社があり、その申し出を会社は受け入れたらしい。
なのでここでは友達を作った方が良いんだろうが…。
「…何かガキっぽいのばっかなんだよな」
いや、オレもガキなのは分かっていた。
今だって黒いTシャツに、黒のハーフパンツを着て、黒いランドセルを背負っている。
どっからどう見たって、小学生の子供だ。
まあもっとも、来年には中学生になるんだが…。
「だから余計にこの歳で友達ゼロはマズイよなぁ」
環境のせいか、歳の割に冷めた考えの持ち主になってしまっていたのだ。
家に帰れば祖父母が学校のことを尋ねてくる。
友達を作るキッカケは、やっぱり一緒に過ごすことだろう。
遊びでも勉強でも良い。
何かを一緒にやれば、心を開けるかもしれない…のに。
オレは足を止め、家に帰るのとは逆方向を見た。
そっちは山に続く道。
うっそうと生えた木々が、先の道を隠してしまっている。
オレは周囲を見回し、誰もいないことを確認してから、そっちの道へと駆けた。
本当は禁止されていた。
こっちの道を歩くことは。
理由はあった。
この道の先には、山の中に一軒、家があるのだ。
家と言っても古びた洋館で、子供達の間ではオバケ邸と言われている。
けれど大人達の間では、あまり良くない評判の住人が住んでいるという。
クラスメートの男子生徒三人組が、サッカーボールを持ちながらオレに声をかける。
「―悪い。あんまサッカー好きじゃないんだ」
「そっそっか」
「じゃあまた明日ね」
「ああ」
三人は肩を落としたが、そのまま教室を出て行った。
「はあ…」
教室に残っているクラスメート達の視線が煩わしくて、オレはランドセルを背負うと足早に教室を出た。
この街に引っ越してきて二週間が経った。
父親が転勤族で、物心ついた時には全国をあっちこっち移動していた。
けれど三ヶ月前、海外へ出張することが決まった。
期間は三年、しかし海外へオレを連れて行くことを躊躇った親父は、実家の両親-オレにとっては父方の祖父母の家に預けることにした。
祖父母は元気で、とてもオレのことを可愛がってくれる。
この街も田舎と言えばそうだが、住み心地は良かった。
住宅地の側には森林公園や山があり、空気のキレイな所は景色もキレイなんだと、オレは改めて実感した。
…けれどオレの方に問題があった。
幼い頃から転校ばかり繰り返してきたせいか、友達の作り方を忘れてしまった。
いつも仲良くなった友達ができても、すぐに引っ越しで離ればなれになってしまう。
だから適度な人付き合いしかしてこなかった。
けれど今回ばかりは話が違う。
3年後、両親は海外から帰ってきたら、この街に腰を下ろすことを決めた。
幸いにも街中に親父の勤めている会社の支社があり、その申し出を会社は受け入れたらしい。
なのでここでは友達を作った方が良いんだろうが…。
「…何かガキっぽいのばっかなんだよな」
いや、オレもガキなのは分かっていた。
今だって黒いTシャツに、黒のハーフパンツを着て、黒いランドセルを背負っている。
どっからどう見たって、小学生の子供だ。
まあもっとも、来年には中学生になるんだが…。
「だから余計にこの歳で友達ゼロはマズイよなぁ」
環境のせいか、歳の割に冷めた考えの持ち主になってしまっていたのだ。
家に帰れば祖父母が学校のことを尋ねてくる。
友達を作るキッカケは、やっぱり一緒に過ごすことだろう。
遊びでも勉強でも良い。
何かを一緒にやれば、心を開けるかもしれない…のに。
オレは足を止め、家に帰るのとは逆方向を見た。
そっちは山に続く道。
うっそうと生えた木々が、先の道を隠してしまっている。
オレは周囲を見回し、誰もいないことを確認してから、そっちの道へと駆けた。
本当は禁止されていた。
こっちの道を歩くことは。
理由はあった。
この道の先には、山の中に一軒、家があるのだ。
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