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昼顔 ロカ

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2章 少年と王国騎士団員

第6話 少年の相方

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    ここはカルラの新居。そのリビングでカルラ、マコト、ヴァリは集まって話していた。
「と、いう訳でヴァリもこの家で暮らすから」
「よろしく~」
「……大丈夫なの?こいつメンヘラって言ってなかった?」
「うーん…まぁ俺は死なないしいっかなって☆」
「こーゆー優しさを持つから私みたいのが寄るって自覚ないみたいよ。貴方も気をつけなさい」
「き、肝に命じとくわ」
    こうしてヴァリについて話し終えた後、誰がこの家の掃除をするかという話になった。この家はしばらく住民が居なかったからか大分汚れていて、誰もやりたがらなかったのだ。
「私は女の子よ?こんな汚い家の掃除なんかさせるの?」
「僕は騎士団長だ!」
「ゑ~…権力乱用とかやめろよ…ま、俺はこの食人ウサギの相手しなきゃいけないから」
    カルラがそう言いながらハングリーラビットに指をあげているとヴァリから質問された。
「その子名前どーすんの?」
「あー…俺の指食べるからフィンガー」
「話題を変えるな!そしてフィンガーの相手と掃除は釣り合わん!」
「ホントにフィンガーなんだ…」
「いーから決めるぞ!」
「私は女の子なんだよって!」
「あーもーうるさいなー!」
    カルラ達が言い争っているといきなり玄関のドアが開いて声が掛かった。
「カルラさん。カルラさんは居ますかー?」
「ん?はい、俺ですが」
「私は案内係をしている騎士団員です。この周辺で大型魔獣が発生しました。担当に当たって下さい」
「……じゃ、掃除やっとけよ☆」
「「待てコラーー!」」

    カルラはカルラの家から200タル離れたところにやってきた。
「で、あの平原で暴れてる中型魔獣の……『ニードル・クロコダイル』だっけ?を市街地に行く前にぶっ殺せばいいんだな?」
「はい。ニードル・クロコダイルは全身に棘の生えたワニ型の魔獣で、大きさは172タルです。防御力だけなら災害レベルの魔獣にも劣りません」
「なるなる。じゃ、いってきま~す」
    カルラはそう言い残すとニードル・クロコダイルへと走り去って行った。が、
「ちょっと待って下さい。今回はペアでの任務です。国王が貴方はいまいち攻撃力に欠けると仰っていたのでこちらの方との共闘をしてもらいます」
「ゑ?」
    カルラの理解が追いつくより早くその相手が来た。
「なんで!私が!こんな!庶民と!共闘なんかしなきゃいけないのよー!」
    現れたのは豪華なドレスで着飾り、全身からワガママオーラを放った変な少女だった。その少女を見てからのカルラの第一声は…
「あー…また濃い味の奴が来たなー……」
    だった……
「何よその言い方!お前私が誰かも知らないの?」
「……どっかの貴族?」
「大不正解!バッカじゃないの?!私はね…」
    変な少女は少し溜めるとこう言い放った。

、エステル=アケ=ディアラよ!」

    と宣言した。
「ふーん、じゃああの爺の孫か?でもそうだとすると第一王女はこいつの母親では?」
「両親はもう他界してるから私が第一王女なのよ…」
「なんか……悪かったな」
「いいのよもう。それよりあんたはおじいちゃんのお気に入りのカルラ=ラウラでいいのよね?確か絶対死なない『導具アイテム』を持ってるっていう」
「そうだ。それよりあのワニは放っといていいの?駄目だよな?明らかに市街地に近づいてるよ?」
「安心しなさい!私はランクXの『導具アイテム』を持ってるのよ?」
「ランクXの残り一人ってお前だったのか。で、どんな能力?」
「それは秘密よ。庶民なんかに話せる訳ないじゃない」
「どう連携しろと?!」
    カルラが嘆くと横から救援があった。
「エステル様の『導具アイテム』は『奇跡の絵本ミラクル・ブック』といって童話に出てくる物や人物を本から呼び出し使役する、というものです」
「にゃるほど」
(そーいやこの世界って童話とか神話とか以外と共通点多いんだよな~)
「勝手に言うな。解雇にされたいのか?」
「ヒッ」
「まーまー落ち着いて。取り敢えずあのワニ潰そうぜ?」
「この私と共闘できること、感謝するがいいわ!」
    二人はそう言いながらニードル・クロコダイルへと歩き始めた。向こうもこちらに気づいたようで、二人へと走り始めた。
「で、童話でどう戦うんだ?」
「庶民は黙って見てなさい」
    エステルは続いて甲高い声で『奇跡の絵本ミラクル・ブック』に向かってこう呟いた。

『優しい優しい魔女のお婆さん、舞踏会まで走るカボチャの馬車を下さいな。邪魔する者を容赦なく潰して進むカボチャの馬車を』

    次の瞬間、開いた『奇跡の絵本ミラクル・ブック』からカボチャの馬車が飛び出して、ニードル・クロコダイルを潰しながらどこかへと走り去って行った。
「グルルラアアアアァァァ」
「何アレ…」
「カボチャの馬車よ?そんなことも知らないの?じゃ、二発目いくわよー?」

『可愛い可愛い兄妹よ、その火を貸して下さいな。お菓子の家を使って子供をおびき寄せる卑劣な魔女も焼き殺す灼熱の業火を』

    すると今度は炎が飛び出してワニを焼き殺した。
「なあ、今回俺が来た意味ある?」
「ニードル・クロコダイルはここからがめんどくさいんです。姫様もね」
    案内係の騎士がそう言うと…

    

「何アレ何アレ何アレーー!一回りでかくなってんじゃねえかよ?!」
「言ったでしょう。ここからがめんどくさいんですって。ニードル・クロコダイルは死にそうになると直前で脱皮して皮を身代わりにするんです。ま、一週間に一回しか使えないのでもう一回殺せばいいんですがね。それよりエステル様をどうにかしなくては」
「あのお姫様がどうかしたん?」
    カルラがエステルの方を向くとエステルは茫然自失としてブツブツ言っていた。
「なんで…なんで生きてるの?だって今のは私の最強の技よ?生きてるわけないのに。私、ここで死ぬの?嫌よ、でも、きっと私じゃ倒せない。なんで…なんでなの」
    エステルがぼーっとしているとニードル・クロコダイルがエステルを潰そうとしてきた。
「まずい、姫様!」
    案内係の騎士が駆け込むより速く、カルラが滑り込んだ。
「チッ、こーゆーことかメンドクセェ!」
(自分に自信があるからとどめをさせなかったらショックで動けなくなるのか…クソめんどくさい性格だな…)
「ハッ、なんの洒落?本物のお姫様をお姫様抱っことか」
    エステルはそうやって元気であるように振る舞ったが、すぐに崩れた。
「無理よ…あいつは倒せない。だって私が倒せなかったのよ?あなたじゃ無理よ」
「黙れよクソうぜえ。お前なんかより強い奴なんかいっくらでもいんだよ!」
「そんな奴いないわよ!」
「いいやここにいる。俺だ!お前はここでガクガク震えながら見てやがれ!お前が諦めたアイツを俺がぶっ殺してやる!」
    カルラはそう宣言してエステルを投げ捨てるとニードル・クロコダイルへと歩き始めた。
「へぶっ!扱いには気をつけなさいよー!」
    そんな声は無視してカルラは思考の沼にハマっていく。
(さて、どうするか。やっぱポイズンドラゴンのときみたいに行くしかないよな…ハァー、これなら掃除の方がマシだったな~)
    そしてニードル・クロコダイルの前まで来たカルラはいつものようにこう言い放った。
「覚悟しやがれワニ公!うちの国の姫様殺しか」「けたんだ。罰として負け確な俺との泥沼試合だ」
    ……途中で途切れたのは言葉の途中で一回潰されたからだ…

___三時間後___

「まだ、死なねぇの?」
    カルラは未だニードル・クロコダイルと戦っていた。ちなみにエステルは…
「頑張ってね~」
    途中から正気に戻り、思いっきり観戦モードになっていた。
「て、つ、だ、え、や~~!!」
「ハイハイ、じゃあいくわよ~」
「え、待て、まだ俺いるんだが?!」
    エステルはカルラを無視してこう言った。

『ひどいひどい狼さん、罪を償うチャンスを与えます。あの悪い魔獣を呑み込んで下さいな。そのお婆さんも赤ずきんちゃんも呑み込む大きなお口で』

    すると、今度は狼が飛び出し、ニードル・クロコダイルを丸呑みしてしまった。
「ハァ、もう何でもありだな…」
    カルラがあまりにも酷い理不尽に対して呆然としているとエステルから声が掛かった。
「さて、カルラだったかしら?」
「おう、どうした?」
「貴方は今日、私のことを助けてくた。もし貴方がいなかったら私は死んでいたでしょうね」
「何だ急に?何か褒美でもくれるってか?」
「ええ」
「そりゃいい。何をくれるんだ?」
「私よ」
「ゑ?」
   カルラは聞き間違いかと思ったが…
「貴方には私と結婚できる権利を与えるわ」
「ハァァァァアアア?!」
    そうではなかったようだ……
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