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1章 少年が手に入れた力
第1話 ある少年の16回目の誕生日
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本日は12月31日。カルラの誕生日だ。つまり、それは、重度の引きこもりであるカルラに引きこもらないでわざわざ遠い首都まで『導具』をもらうためだけに固い椅子(カルラの数少ない友人談)に座って何時間も揺られる地獄を味わうということ。普通の人なら歓喜して行くところだがカルラは家にいることができればそんなもんいらないのである。カルラがなんとか行かないで済む方法を考えていると
「カルラさん、カルラさーん。お迎えにあがりましたー。早く馬車に乗ってくださーい」
玄関から男の声がかかってきた。
(来やがった!どうすれば逃げられる……やっぱあれしかねーか)
するとカルラは…
「ねえ、風邪ひいたんで行かなくていい?」
一切躊躇うことなく仮病を使った…
「えぇ~。困りますよ~」
「こっちが困っゴホッ、てるんだよ」
「でも『導具』は要らないんですか?」
「欲しいけど仕方ないじゃん」
「ちょっと待っててください」
そう言うと迎えに来た男はどこかへ行ってしまった。カルラはというと…
(っしゃあぁ!なんか分からんけど帰ってくれたー!良かったー!でもどこ行ったんだ?ま、いいか)
カルラは考えるのをやめると奥の部屋へと戻って行った。
5分後…
「カルラさん、カルラさーん。今確認したんですが風邪位なら来ても大丈夫とのことです。良かったですね。馬車に乗ってくださーい」
(マジかよ!やべえこれ詰んだんじゃね?今更もっと重い病気ですとか言ったら嘘だとバレる!この場での最善は…)
「ごめんさっきの嘘。『導具』要らねーから引きこもらせてくれよー」
「そういう訳にはいかないです。大人しく馬車に乗ってください」
カルラは諦めて大人しく何故か馬が一頭しかいない馬車へと乗り、こう言った。
「全速力でお願いします。早く帰りたいんで」
…どうやらとっとと行って終わらせて帰るつもりらしい。
「分かりました。では飛ばしますよ」
そう言うと馬車は音速で動き出した。
「ハハハ、凄いでしょう。これ私の『導具』で「音速の蹄」っていうんですよ。まあ一頭分しかないんですが。効果は付けた馬が音速で走れるっていう能力で…ってカルラさん大丈夫ですか」
「大丈夫な訳あるか…いきなり音速とか死ぬぞ?!てかなんで馬車壊れないの?」
「それは大丈夫です。この馬車は特別製なので」
恐らく何かしらの『導具』で強化しているんだろう。ホントに馬車は一切壊れることなく首都シユウドに着いた。
「それでは『導具』を手に入れたらここに戻って来てください」
「了解…」
帰りもあれに乗るのか…とカルラは憂鬱な気分でパンドラが保管されている王城に足を踏み入れた。
(流石王城だな…あちこち高価な物だらけで落ち着けねえ…)
カルラがそんなことを思っていると
「君がカルラ君か?」
老人が話しかけてきた。
「そうだけど?」
「おお良かった良かった。風邪は大丈夫か?」
いきなり痛いところを突かれたカルラは
「あ…えと……薬飲んだら治った」
という苦し紛れの嘘をついた。だが老人は
「そうかそうか。それは良かった。じゃあこっちにおいで。パンドラはこっちじゃよ」
(え…信じんの今の?てか今更だけどこの人誰?)
「そうか。ありがとう……てかあんた誰?」
「あぁ、儂はカハヤ=アケ=ディアラ。この国の国王じゃ」
「………は?」
ふざけているのかと思ったが周りの人達の反応で事実だと分かった。
「何故国王自らが案内なんかしてんの?」
「こんなことは下々の者にやらせればいいと?」
「少なくとも俺はそうする」
「ハハハハ、確かに普通ならそうするじゃろうな。じゃが儂は国民にとって身近な存在として生きていきたいんじゃよ」
そう言うと国王はある部屋の前に立ち止まり、扉を開け放った。そこには真っ赤に輝く宝箱が置いてあった。
「見なさい。あれがパンドラじゃ」
「あれが…」
パンドラは16歳になるまで当然見ることはできなく、聞いたことはあっても実際に見てみるとイメージと違っていることが多い。その理由としては…
「なんか…凄いシンプルな形だな。もっと個性のある形かと思ってた。というか何故パンドラの奥に魔獣が入った檻が?」
そう、あまりにもシンプル過ぎるのだ。皆は『導具』が出てくるのだからさぞ凄いのだろうと考え、ここで驚く。「『導具』を貰う時に驚くことトップ3」の第三位だ。
「そんなことに拘泥するな。早く『導具』を受け取りなさい」
「了解。パンドラを開ければいいんだよな?」
「そうそう。そうすれば『導具』が飛び出すからちゃんとキャッチするんじゃぞ」
「飛び出すの?」
「うん」
マジか…とカルラはちょっと引きながらパンドラへ歩いて行った。
「じゃあ開けるぞー」
「あぁ、よろしく」
カルラは一切の躊躇なくパンドラを開け放った。すると
「うわ!ホントに飛ぶのかよ!」
「そう言ったじゃろ」
(あれ?でもまてよ?これ落ちてから拾えばよくね?うわ俺天才!)
カルラはそう考えると『導具』が落ちてくるまで待つことにした。そして17秒後…
「あ、落ちた落ちた」
「え、キャッチしないの?」
「めんどいじゃん」
カルラは適当に答えるとチョーカー型の『導具』を拾い上げた。そして拾い上げた瞬間、カルラの頭の中に今まで無かったはずの知識が今までもあったかのように存在していた。
「なるほど。こんな感じで使い方が分かるのか。なんか変な感じだな」
「誰でもそうじゃ。では、次に魔獣と戦ってもらうぞ」
「………ゑ?」
(何言ってんのこのジジイ)
「『導具』のランクを測るにはうちが飼育している小型魔獣、中型魔獣、大型魔獣と戦ってもらうのが一番手っ取り早いんじゃよ。なーに安心せい。殺さないように教育してるし」
「そういう問題じゃねえ!」
……これが「『導具』を貰う時に驚くことトップ3」の第二位である。
「それじゃ、まずは小型魔獣から。頑張るんじゃぞ」
そう言うと目の前の檻から小型魔獣が出てきた。ちなみに国王はいつの間にかいなくなっていた。
「あんのクソジジイがああああああ」
___今回出てきた『導具』___
「音速の蹄」
つけた馬が音速で走れるようになる。たが、そのため操縦者には高い技術が必要で、さらに馬車は強化する必要がある。もちろん戦闘には向いていないのでランクD。
「カルラさん、カルラさーん。お迎えにあがりましたー。早く馬車に乗ってくださーい」
玄関から男の声がかかってきた。
(来やがった!どうすれば逃げられる……やっぱあれしかねーか)
するとカルラは…
「ねえ、風邪ひいたんで行かなくていい?」
一切躊躇うことなく仮病を使った…
「えぇ~。困りますよ~」
「こっちが困っゴホッ、てるんだよ」
「でも『導具』は要らないんですか?」
「欲しいけど仕方ないじゃん」
「ちょっと待っててください」
そう言うと迎えに来た男はどこかへ行ってしまった。カルラはというと…
(っしゃあぁ!なんか分からんけど帰ってくれたー!良かったー!でもどこ行ったんだ?ま、いいか)
カルラは考えるのをやめると奥の部屋へと戻って行った。
5分後…
「カルラさん、カルラさーん。今確認したんですが風邪位なら来ても大丈夫とのことです。良かったですね。馬車に乗ってくださーい」
(マジかよ!やべえこれ詰んだんじゃね?今更もっと重い病気ですとか言ったら嘘だとバレる!この場での最善は…)
「ごめんさっきの嘘。『導具』要らねーから引きこもらせてくれよー」
「そういう訳にはいかないです。大人しく馬車に乗ってください」
カルラは諦めて大人しく何故か馬が一頭しかいない馬車へと乗り、こう言った。
「全速力でお願いします。早く帰りたいんで」
…どうやらとっとと行って終わらせて帰るつもりらしい。
「分かりました。では飛ばしますよ」
そう言うと馬車は音速で動き出した。
「ハハハ、凄いでしょう。これ私の『導具』で「音速の蹄」っていうんですよ。まあ一頭分しかないんですが。効果は付けた馬が音速で走れるっていう能力で…ってカルラさん大丈夫ですか」
「大丈夫な訳あるか…いきなり音速とか死ぬぞ?!てかなんで馬車壊れないの?」
「それは大丈夫です。この馬車は特別製なので」
恐らく何かしらの『導具』で強化しているんだろう。ホントに馬車は一切壊れることなく首都シユウドに着いた。
「それでは『導具』を手に入れたらここに戻って来てください」
「了解…」
帰りもあれに乗るのか…とカルラは憂鬱な気分でパンドラが保管されている王城に足を踏み入れた。
(流石王城だな…あちこち高価な物だらけで落ち着けねえ…)
カルラがそんなことを思っていると
「君がカルラ君か?」
老人が話しかけてきた。
「そうだけど?」
「おお良かった良かった。風邪は大丈夫か?」
いきなり痛いところを突かれたカルラは
「あ…えと……薬飲んだら治った」
という苦し紛れの嘘をついた。だが老人は
「そうかそうか。それは良かった。じゃあこっちにおいで。パンドラはこっちじゃよ」
(え…信じんの今の?てか今更だけどこの人誰?)
「そうか。ありがとう……てかあんた誰?」
「あぁ、儂はカハヤ=アケ=ディアラ。この国の国王じゃ」
「………は?」
ふざけているのかと思ったが周りの人達の反応で事実だと分かった。
「何故国王自らが案内なんかしてんの?」
「こんなことは下々の者にやらせればいいと?」
「少なくとも俺はそうする」
「ハハハハ、確かに普通ならそうするじゃろうな。じゃが儂は国民にとって身近な存在として生きていきたいんじゃよ」
そう言うと国王はある部屋の前に立ち止まり、扉を開け放った。そこには真っ赤に輝く宝箱が置いてあった。
「見なさい。あれがパンドラじゃ」
「あれが…」
パンドラは16歳になるまで当然見ることはできなく、聞いたことはあっても実際に見てみるとイメージと違っていることが多い。その理由としては…
「なんか…凄いシンプルな形だな。もっと個性のある形かと思ってた。というか何故パンドラの奥に魔獣が入った檻が?」
そう、あまりにもシンプル過ぎるのだ。皆は『導具』が出てくるのだからさぞ凄いのだろうと考え、ここで驚く。「『導具』を貰う時に驚くことトップ3」の第三位だ。
「そんなことに拘泥するな。早く『導具』を受け取りなさい」
「了解。パンドラを開ければいいんだよな?」
「そうそう。そうすれば『導具』が飛び出すからちゃんとキャッチするんじゃぞ」
「飛び出すの?」
「うん」
マジか…とカルラはちょっと引きながらパンドラへ歩いて行った。
「じゃあ開けるぞー」
「あぁ、よろしく」
カルラは一切の躊躇なくパンドラを開け放った。すると
「うわ!ホントに飛ぶのかよ!」
「そう言ったじゃろ」
(あれ?でもまてよ?これ落ちてから拾えばよくね?うわ俺天才!)
カルラはそう考えると『導具』が落ちてくるまで待つことにした。そして17秒後…
「あ、落ちた落ちた」
「え、キャッチしないの?」
「めんどいじゃん」
カルラは適当に答えるとチョーカー型の『導具』を拾い上げた。そして拾い上げた瞬間、カルラの頭の中に今まで無かったはずの知識が今までもあったかのように存在していた。
「なるほど。こんな感じで使い方が分かるのか。なんか変な感じだな」
「誰でもそうじゃ。では、次に魔獣と戦ってもらうぞ」
「………ゑ?」
(何言ってんのこのジジイ)
「『導具』のランクを測るにはうちが飼育している小型魔獣、中型魔獣、大型魔獣と戦ってもらうのが一番手っ取り早いんじゃよ。なーに安心せい。殺さないように教育してるし」
「そういう問題じゃねえ!」
……これが「『導具』を貰う時に驚くことトップ3」の第二位である。
「それじゃ、まずは小型魔獣から。頑張るんじゃぞ」
そう言うと目の前の檻から小型魔獣が出てきた。ちなみに国王はいつの間にかいなくなっていた。
「あんのクソジジイがああああああ」
___今回出てきた『導具』___
「音速の蹄」
つけた馬が音速で走れるようになる。たが、そのため操縦者には高い技術が必要で、さらに馬車は強化する必要がある。もちろん戦闘には向いていないのでランクD。
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