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異世界転移をした彼女は女性の意識改革(服装改革)を行うことにした
10言い争いの中心となった彼女
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「宰相様、こんにちは。先日はうちの侍女のカナデがご迷惑をおかけしました。私から謝罪申し上げます」
「いえ、ソフィア様が謝ることはありません。ただ、私が部屋を出た後に、そいつが窓から飛び降りたと聞きまして、あなたの方がそいつの迷惑を被っているのではないかと心配です」
「ご心配なく。そいつとは、カナデのことですか?何度も言いますが、彼女は私の侍女です。彼女を悪く言うのは、私に対しての悪口と捉えますけど。それに、窓から飛び降りたのは、宰相のせいだとカナデからは伺っていますけど」
会って早々、ソフィアと宰相は互いをけん制するかのように、先日カナデが窓から飛び降りた話題を取り上げた。
「あ、あのソフィアお嬢様。私は大丈夫ですよ。ほら、特に大きな怪我もなかったことですし、その辺にしておいた方がよろしいかと」
二人が睨みつけ合いながら、自分の話題で口論になっているのを見ていられず、カナデがソフィアに声をかける。しかし、ソフィアの言葉が止まることはない。
「いえ、宰相様には日ごろからお伝えしたいことがあったの。カナデには悪いけど、この機会に言っておくことにするわ。だから、カナデは少し黙っていてくれるかしら?」
そういえばと、カナデはソフィアの性格を思い出す。最近のソフィアは、カナデに対してかなり辛辣な言葉をぶつけてきた。見た目は完全に清楚な聖女様なのに、中身はかなり男前だった。ここは素直にソフィアの言葉に従った方がいいと判断したカナデは、静かに様子を見ることにした。
「私は別にソフィアさんの悪口を言っているわけではありませんよ。どうして、そこまでそいつをかばうのか私には理解できません。仮にも聖女ですよね。聖フローラ共和国に所属していたあなたがなぜ?」
「だからこそ、です。私があそこで体験したことは、とてもこの場で言えるようなことではない。いえ、宰相様が好きそうな体験ではありますので、聞きたいとあれば話してもいいので」
「ダメです!」
「ダメだ!」
静かに見守ると決めた矢先のソフィアの発言に、思わずカナデは叫んでしまった。ソフィアの壮絶な過去をカナデは彼女自身から聞いていた。それなのに、宰相のようなくそ人間に話してもいいと言っている。ソフィアを止めなければと思っての発言だったが、カナデと同じ考えの人間が他にもいたようだ。
「ダメだぞ、ソフィア。お前の話は公共の面前に話してよい内容ではない。それこそ、カナデの力を借りて、少しずつ公にしていくべき案件だ!」
カナデと同じ思いだったのは、宰相とともに騎士団の詰め所を訪れたエリザベスだった。どうやら、ソフィアの事情を知っている一人らしい。
「そ、そうだ!宰相様、私、宰相様に見ていただきたいものがあったんでした!少し、お待ちくださいね。それと、私の主にひどいことをこれ以上いったら、あなたの身に何が起こるかわかりませんよ」
これ以上、二人に話をさせていたら、精神が不安定になり、自分が何を言い出すのか自信がなくなったカナデは、騎士団に来た目的を果たそうとある提案をした。
「騎士団の男性物の服を一着、私に貸していただけませんか?」
とりあえず、カナデは宰相にはその場で静かにしてもらうことにした。幸い、今回はエリザベスもいるし、ソフィアも他に騎士団のメンバーもそろっている。直接カナデに危害を加えるようなこともないだろうと判断してのことだ。
「予備の騎士団の服が一式ありますので、倉庫から持ってきます」
カナデの言葉に、近くにいたレオナがすぐに動き出した。その場から走り出して、予備の男性用の騎士団の制服を持ってくるためにその場を離れていく。
「いったい、男性の騎士団の制服なんて借りて、何をするつもりだ。ハッ、もしや、侍女をやめて、騎士団にでも入団するつもりか?まあ、その容姿なら男性の制服を着ても問題なく働けるだろうが。だが、そんなこと、この私が許すと思うか?この穢れた男女(おとこおんな)め!」
「宰相様、先ほどから申しておりますが、私の侍女に向かってそのような口を利くことは許しませんよ」
「これは失礼いたしました。しかし、ソフィア様、これは私からの忠告になるのですが、このままこのカナデとかいう下賤な輩を、あなたのような高貴なものが抱えているのは危険です。ソフィア様の高貴なる存在に泥を塗るようなものです。私はあなた様のことを考えて、理解していただけるように、何度もこのような汚い言葉を使っているのです」
カナデの制止は宰相には意味をなさなかった。レオナの帰りを待つ間にも、二人の口論は止まらなかった。言い争いを止めたのは、争いの火種となっているカナデではなかった。
「フリードリヒ!それ以上カナデを侮辱するな。いくらお前であろうと、われはお前を許さないぞ!」
カナデは宰相の言葉を聞き流すことに決めていた。すでに、彼に何を言っても無駄なことは、窓から飛び降りた際に気付いていた。確かに、自分は彼女たちとは釣り合わない存在だと理解している。ソフィアやエリザベス、それに城に住む人々とでは、次元が違うのだ。
とはいえ、聞き流すとしても、宰相の話し方は、どこぞのくそ勇者と同じ感じで、ねっとりとしたいやらしい。外見はイケメンだが、それが余計に宰相の言葉を気味悪くしていた。
二人の会話を中断させた声の主を確認すると、エリザベスだった。さらには、他の女性陣もカナデをバカにされることに怒りを覚えているようで、エリザベスの援護をするかのように彼女たちが発言していく。
「宰相、いくらあなたが偉い人だとしても、カナデを侮辱するような発言は許せません!カナデは確かに、女としてはどうかと思いますけど、私たちには必要な存在です!」
「カナデは私たちと約束してくれました。女性の味方なんです。そんなことを言ってくれる人は今までいなかった!」
「カナデを侍女から外すことはありません。そこまでカナデを気に入らないというのなら、私はカナデとともに、この城を去ります。カナデだけを置いては行けません。主人として当然の行動です」
エリザベスだけでなく、レオナやイザベラ、ソフィアまでもがカナデの味方になるとの発言に、宰相は驚いていた。目を見開き、唇をわなわなと震わせていた。宰相にとって、この展開は予想していなかったらしい。しかし、ここであきらめないのが宰相の根が腐っている証拠であり、彼は自分の理想を主張する。
「エリザベス様や騎士団に所属するあなたたちまで。いったい、その下賤の民のどこがいいのですか?あなたたちは選ばれし国民であり、この国の誇りです!それがどうして……」
ぶつぶつと自分の意見をつぶやく宰相は、最終的な考えに至ったようで、女性陣一人一人に視線を向ける。そして一度目をつむり、深呼吸する。目を開けたときには、宰相の瞳はひどく濁り、何をしでかすからわからない危うい雰囲気が醸し出される。
「こうなったら、あなた方を惑わす下賤の民は、強制的に今ここで排除すべきですね」
宰相はカナデに向けて両手をつきだし、何かの呪文を唱え始めた。宰相の両手の間からは何やら、光が集まり始めた。
「いえ、ソフィア様が謝ることはありません。ただ、私が部屋を出た後に、そいつが窓から飛び降りたと聞きまして、あなたの方がそいつの迷惑を被っているのではないかと心配です」
「ご心配なく。そいつとは、カナデのことですか?何度も言いますが、彼女は私の侍女です。彼女を悪く言うのは、私に対しての悪口と捉えますけど。それに、窓から飛び降りたのは、宰相のせいだとカナデからは伺っていますけど」
会って早々、ソフィアと宰相は互いをけん制するかのように、先日カナデが窓から飛び降りた話題を取り上げた。
「あ、あのソフィアお嬢様。私は大丈夫ですよ。ほら、特に大きな怪我もなかったことですし、その辺にしておいた方がよろしいかと」
二人が睨みつけ合いながら、自分の話題で口論になっているのを見ていられず、カナデがソフィアに声をかける。しかし、ソフィアの言葉が止まることはない。
「いえ、宰相様には日ごろからお伝えしたいことがあったの。カナデには悪いけど、この機会に言っておくことにするわ。だから、カナデは少し黙っていてくれるかしら?」
そういえばと、カナデはソフィアの性格を思い出す。最近のソフィアは、カナデに対してかなり辛辣な言葉をぶつけてきた。見た目は完全に清楚な聖女様なのに、中身はかなり男前だった。ここは素直にソフィアの言葉に従った方がいいと判断したカナデは、静かに様子を見ることにした。
「私は別にソフィアさんの悪口を言っているわけではありませんよ。どうして、そこまでそいつをかばうのか私には理解できません。仮にも聖女ですよね。聖フローラ共和国に所属していたあなたがなぜ?」
「だからこそ、です。私があそこで体験したことは、とてもこの場で言えるようなことではない。いえ、宰相様が好きそうな体験ではありますので、聞きたいとあれば話してもいいので」
「ダメです!」
「ダメだ!」
静かに見守ると決めた矢先のソフィアの発言に、思わずカナデは叫んでしまった。ソフィアの壮絶な過去をカナデは彼女自身から聞いていた。それなのに、宰相のようなくそ人間に話してもいいと言っている。ソフィアを止めなければと思っての発言だったが、カナデと同じ考えの人間が他にもいたようだ。
「ダメだぞ、ソフィア。お前の話は公共の面前に話してよい内容ではない。それこそ、カナデの力を借りて、少しずつ公にしていくべき案件だ!」
カナデと同じ思いだったのは、宰相とともに騎士団の詰め所を訪れたエリザベスだった。どうやら、ソフィアの事情を知っている一人らしい。
「そ、そうだ!宰相様、私、宰相様に見ていただきたいものがあったんでした!少し、お待ちくださいね。それと、私の主にひどいことをこれ以上いったら、あなたの身に何が起こるかわかりませんよ」
これ以上、二人に話をさせていたら、精神が不安定になり、自分が何を言い出すのか自信がなくなったカナデは、騎士団に来た目的を果たそうとある提案をした。
「騎士団の男性物の服を一着、私に貸していただけませんか?」
とりあえず、カナデは宰相にはその場で静かにしてもらうことにした。幸い、今回はエリザベスもいるし、ソフィアも他に騎士団のメンバーもそろっている。直接カナデに危害を加えるようなこともないだろうと判断してのことだ。
「予備の騎士団の服が一式ありますので、倉庫から持ってきます」
カナデの言葉に、近くにいたレオナがすぐに動き出した。その場から走り出して、予備の男性用の騎士団の制服を持ってくるためにその場を離れていく。
「いったい、男性の騎士団の制服なんて借りて、何をするつもりだ。ハッ、もしや、侍女をやめて、騎士団にでも入団するつもりか?まあ、その容姿なら男性の制服を着ても問題なく働けるだろうが。だが、そんなこと、この私が許すと思うか?この穢れた男女(おとこおんな)め!」
「宰相様、先ほどから申しておりますが、私の侍女に向かってそのような口を利くことは許しませんよ」
「これは失礼いたしました。しかし、ソフィア様、これは私からの忠告になるのですが、このままこのカナデとかいう下賤な輩を、あなたのような高貴なものが抱えているのは危険です。ソフィア様の高貴なる存在に泥を塗るようなものです。私はあなた様のことを考えて、理解していただけるように、何度もこのような汚い言葉を使っているのです」
カナデの制止は宰相には意味をなさなかった。レオナの帰りを待つ間にも、二人の口論は止まらなかった。言い争いを止めたのは、争いの火種となっているカナデではなかった。
「フリードリヒ!それ以上カナデを侮辱するな。いくらお前であろうと、われはお前を許さないぞ!」
カナデは宰相の言葉を聞き流すことに決めていた。すでに、彼に何を言っても無駄なことは、窓から飛び降りた際に気付いていた。確かに、自分は彼女たちとは釣り合わない存在だと理解している。ソフィアやエリザベス、それに城に住む人々とでは、次元が違うのだ。
とはいえ、聞き流すとしても、宰相の話し方は、どこぞのくそ勇者と同じ感じで、ねっとりとしたいやらしい。外見はイケメンだが、それが余計に宰相の言葉を気味悪くしていた。
二人の会話を中断させた声の主を確認すると、エリザベスだった。さらには、他の女性陣もカナデをバカにされることに怒りを覚えているようで、エリザベスの援護をするかのように彼女たちが発言していく。
「宰相、いくらあなたが偉い人だとしても、カナデを侮辱するような発言は許せません!カナデは確かに、女としてはどうかと思いますけど、私たちには必要な存在です!」
「カナデは私たちと約束してくれました。女性の味方なんです。そんなことを言ってくれる人は今までいなかった!」
「カナデを侍女から外すことはありません。そこまでカナデを気に入らないというのなら、私はカナデとともに、この城を去ります。カナデだけを置いては行けません。主人として当然の行動です」
エリザベスだけでなく、レオナやイザベラ、ソフィアまでもがカナデの味方になるとの発言に、宰相は驚いていた。目を見開き、唇をわなわなと震わせていた。宰相にとって、この展開は予想していなかったらしい。しかし、ここであきらめないのが宰相の根が腐っている証拠であり、彼は自分の理想を主張する。
「エリザベス様や騎士団に所属するあなたたちまで。いったい、その下賤の民のどこがいいのですか?あなたたちは選ばれし国民であり、この国の誇りです!それがどうして……」
ぶつぶつと自分の意見をつぶやく宰相は、最終的な考えに至ったようで、女性陣一人一人に視線を向ける。そして一度目をつむり、深呼吸する。目を開けたときには、宰相の瞳はひどく濁り、何をしでかすからわからない危うい雰囲気が醸し出される。
「こうなったら、あなた方を惑わす下賤の民は、強制的に今ここで排除すべきですね」
宰相はカナデに向けて両手をつきだし、何かの呪文を唱え始めた。宰相の両手の間からは何やら、光が集まり始めた。
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