37 / 57
異世界転移をした彼女は女性の意識改革(服装改革)を行うことにした
4既視感を覚える嫌な視線でした
しおりを挟む
「これは、女王自らのお出迎えとは」
「な、お前は!」
エリザベスたちの前に現れたのは、イケメンの男性だった。第三者の登場にさすがにカナデもソフィアも暴走を止めた。カナデにとっては、初めて会う人物だった。カナデの視線に気づいたのか、男性はカナデに自己紹介を始めた。
「おや、あなたが噂の女性ですか。初めまして、私、この国の宰相を務めさせていただいておりますフリードリヒです」
「は、初めましてカナデと申します」
フリードリヒは、異世界転生・転移物によくいるイケメンそのままの容姿をしていた。キラキラと輝く銀の髪を背中まで伸ばし、軽く一つに縛っていた。瞳の色は紫のアメジストのように神秘的な色をしていた。長身で細身のスタイルの良い身体。ただし、その瞳から感じるねっとりとした視線がカナデの神経を逆なでしていた。
フリードリヒが握手のために差し出した手をカナデは握ることをためらってしまった。この嫌な視線には覚えがあった。
「すいません、あなたのようなイケメンに、私ごとき庶民が手を握ってよいのかと思いまして」
「イケメンと言っていただき光栄です」
そう言ったフリードリヒは、あっさりとカナデのために差し出した手を引っ込めて、にこりと微笑んだ。カナデが握手することを拒否してくれて助かったという印象を受けた。
「フリードリヒ!どうしてお前がここに居る」
「どうしてと言いましても、公務を抜け出してこのような場所にいる女王がいけないのです」
「ふん、あんな爺どもの会議につき合っていられるか。それで、わざわざわれを呼び戻すために来たのか?」
「フリードリヒ様、お、お久しぶりです。レオナです」
「ああ、久しぶり。ソフィア君もいたんだね」
ねっとりと視線は変わらず、フリードリヒはソフィアとレオナにも挨拶する。カナデはその視線の意味を考えることを拒否した。その代わり、別の質問で彼の考えを読み取ることにした。
「フリードリヒ様、初対面の私から、一つ質問があるのですが、お許しいただけますか?」
「何かな。私もそこまで暇ではないんだが。手短に頼むよ」
「ありがとうございます。お手間は取らせませんので」
ここで、カナデは大きく息を吸い込んで目をつむる。彼の視線の意味を考えれば、答えはおおよそ見当がつくが、こんなイケメンがそんなことを考えているとは思いたくはなかった。
「この世界の女性の服装をどうお思いですか?」
「どうって、可笑しな質問だね。しかも、この世界の服装って。普通だと思いますよ。可愛らしくて、私はとても良いと思っています。かわいいというのは、仕事の意欲にもつながりますし、それがどうかしましたか?」
「いえ、ただ聞いてみたかったのです」
「では、戻りましょう。女王」
「うむ、仕方あるまい。カナデ、お主の話は興奮しすぎで何を言いたいのか、いまいちわからんかった。後でまた詳しい話を聞きたい。われにもわかるように説明頼むぞ」
話は終わったとばかりに、エリザベスと宰相は部屋から出て行った。部屋にはしばらく沈黙が訪れた。
「かっこいいですよね。フリードリヒ様。あの熱い視線を受けると、胸がドキドキしてこれは恋でしょうか」
「うわ、出たよ。あれ、ということは」
「カナデさん、さすが鋭いですね」
カナデはレオナの恍惚とした表情に既視感を覚えた。このような光景を見たことがあった。あれは確か。カナデの言おうとした言葉はソフィアに言われてしまった。
「あの男もおそらく、カナデさんが出会ったくそ勇者と同じ考えの持ち主だと思いますよ」
「ソフィアさんは詳しいんですね」
「ああ、それは」
「思い出さなくてもいいですよ。ソフィアさんが詳しいのは、男に対する警戒心からだと思いますから」
カナデの思い違いにソフィアは胸をなでおろす。ソフィアがカナデと同じ、もといた世界を知っているということを知られなくて済んだ。知られると面倒なことになりそうなので、このまま黙っていることに決めた。
「私もそろそろ勤務に戻らなくては。カナデ様、ソフィア様、失礼いたします」
レオナも、自分の仕事を思い出したのだろう。二人を残して、仕事に戻ってしまった。部屋に取り残された二人は、目を合わせると苦笑した。
「私もここで働いていますが、立ち位置としては客人みたいなものですので、このままもう少し、カナデさんとお話しする時間はありますよ」
「えっと、では、もう少し、私とお話ししていただけると嬉しいです。今、私が置かれている状況をもっと詳しく知りたいので」
「かしこまりました」
「ぐううううう」
ソフィアの有り難い申し出に返事をしたカナデだが、目覚めて興奮して腹が減ったのだろう。盛大な腹の音が部屋に響き渡った。
「ふふふふ」
「なんか、すいません」
申し訳なくて謝ると、ソフィアは笑っていた。口元を押さえて笑う姿はやはり、理想の聖女そのものだ。ぼうっとその様子を眺めていると、視線に気づいたソフィアが問いかける。
「何か、食べるものを用意いたしますか?夕食までまだ時間がありますので、お菓子と紅茶をお持ちいたしますよ。ああ、でも、カナデさんにはぜひ、食べていただきたいものがありますので、そちらをお持ちいたしますね」
「ぜひ、お願いします」
部屋を出てしばらくして、ワゴンを押してソフィアは戻ってきた。ワゴンの上には、カナデがもといた世界でよく見たものが並んでいた。
「あの、これって、もしや」
「ご存じでしたよね。カナデさんが以前、この都市を知っていた感じから、このメニューがいいかなと思いまして。お口に会えばいいのですが」
ワゴンに乗っていたのは、カナデがもといた世界での朝食メニューだった。朝食のメニューとして、カフェなどに行けば食べられる、定番が並べられていた。
「小倉トーストに、コーヒーにゆで卵……。完全に名古屋のモーニングですよね」
「いえ、首都「ネームオールドハウス」の名物NOH(ノーフ)飯」と呼ばれるものの一つになっていますよ」
「さようですか。ああ、でも懐かしい感じがする」
カナデは空腹に耐えきれず、小倉トーストにかぶりつく。それから、ゆっくりとコーヒーの香りを楽しみながら、ソフィアから出された朝食メニューをすべて平らげた。
「そういえば、今何時なのかわかる?これが朝食メニューらしいのはわかるけど、今って午前ってことでいいの?」
今更ながらにカナデは現在時刻をソフィアに確認する。
「そうですねえ。午前11時くらいですね。ちょうど、朝食と昼食が一緒の感じですかね」
「ごちそうさまでした」
「よい食べっぷりで、健康状態に問題がなさそうで何よりです。それで、お腹がいっぱいなところ申し訳ないのですが」
『本当によく食べる』
『見ていて、気持ちがいいがのう』
カナデが食べ終わるのを見計って、ソフィアがカナデに差し迫った問題を提示する。女神と悪魔の二匹の猫はいつの間にか、ソフィアのひざの上でくつろいでいた。
「な、お前は!」
エリザベスたちの前に現れたのは、イケメンの男性だった。第三者の登場にさすがにカナデもソフィアも暴走を止めた。カナデにとっては、初めて会う人物だった。カナデの視線に気づいたのか、男性はカナデに自己紹介を始めた。
「おや、あなたが噂の女性ですか。初めまして、私、この国の宰相を務めさせていただいておりますフリードリヒです」
「は、初めましてカナデと申します」
フリードリヒは、異世界転生・転移物によくいるイケメンそのままの容姿をしていた。キラキラと輝く銀の髪を背中まで伸ばし、軽く一つに縛っていた。瞳の色は紫のアメジストのように神秘的な色をしていた。長身で細身のスタイルの良い身体。ただし、その瞳から感じるねっとりとした視線がカナデの神経を逆なでしていた。
フリードリヒが握手のために差し出した手をカナデは握ることをためらってしまった。この嫌な視線には覚えがあった。
「すいません、あなたのようなイケメンに、私ごとき庶民が手を握ってよいのかと思いまして」
「イケメンと言っていただき光栄です」
そう言ったフリードリヒは、あっさりとカナデのために差し出した手を引っ込めて、にこりと微笑んだ。カナデが握手することを拒否してくれて助かったという印象を受けた。
「フリードリヒ!どうしてお前がここに居る」
「どうしてと言いましても、公務を抜け出してこのような場所にいる女王がいけないのです」
「ふん、あんな爺どもの会議につき合っていられるか。それで、わざわざわれを呼び戻すために来たのか?」
「フリードリヒ様、お、お久しぶりです。レオナです」
「ああ、久しぶり。ソフィア君もいたんだね」
ねっとりと視線は変わらず、フリードリヒはソフィアとレオナにも挨拶する。カナデはその視線の意味を考えることを拒否した。その代わり、別の質問で彼の考えを読み取ることにした。
「フリードリヒ様、初対面の私から、一つ質問があるのですが、お許しいただけますか?」
「何かな。私もそこまで暇ではないんだが。手短に頼むよ」
「ありがとうございます。お手間は取らせませんので」
ここで、カナデは大きく息を吸い込んで目をつむる。彼の視線の意味を考えれば、答えはおおよそ見当がつくが、こんなイケメンがそんなことを考えているとは思いたくはなかった。
「この世界の女性の服装をどうお思いですか?」
「どうって、可笑しな質問だね。しかも、この世界の服装って。普通だと思いますよ。可愛らしくて、私はとても良いと思っています。かわいいというのは、仕事の意欲にもつながりますし、それがどうかしましたか?」
「いえ、ただ聞いてみたかったのです」
「では、戻りましょう。女王」
「うむ、仕方あるまい。カナデ、お主の話は興奮しすぎで何を言いたいのか、いまいちわからんかった。後でまた詳しい話を聞きたい。われにもわかるように説明頼むぞ」
話は終わったとばかりに、エリザベスと宰相は部屋から出て行った。部屋にはしばらく沈黙が訪れた。
「かっこいいですよね。フリードリヒ様。あの熱い視線を受けると、胸がドキドキしてこれは恋でしょうか」
「うわ、出たよ。あれ、ということは」
「カナデさん、さすが鋭いですね」
カナデはレオナの恍惚とした表情に既視感を覚えた。このような光景を見たことがあった。あれは確か。カナデの言おうとした言葉はソフィアに言われてしまった。
「あの男もおそらく、カナデさんが出会ったくそ勇者と同じ考えの持ち主だと思いますよ」
「ソフィアさんは詳しいんですね」
「ああ、それは」
「思い出さなくてもいいですよ。ソフィアさんが詳しいのは、男に対する警戒心からだと思いますから」
カナデの思い違いにソフィアは胸をなでおろす。ソフィアがカナデと同じ、もといた世界を知っているということを知られなくて済んだ。知られると面倒なことになりそうなので、このまま黙っていることに決めた。
「私もそろそろ勤務に戻らなくては。カナデ様、ソフィア様、失礼いたします」
レオナも、自分の仕事を思い出したのだろう。二人を残して、仕事に戻ってしまった。部屋に取り残された二人は、目を合わせると苦笑した。
「私もここで働いていますが、立ち位置としては客人みたいなものですので、このままもう少し、カナデさんとお話しする時間はありますよ」
「えっと、では、もう少し、私とお話ししていただけると嬉しいです。今、私が置かれている状況をもっと詳しく知りたいので」
「かしこまりました」
「ぐううううう」
ソフィアの有り難い申し出に返事をしたカナデだが、目覚めて興奮して腹が減ったのだろう。盛大な腹の音が部屋に響き渡った。
「ふふふふ」
「なんか、すいません」
申し訳なくて謝ると、ソフィアは笑っていた。口元を押さえて笑う姿はやはり、理想の聖女そのものだ。ぼうっとその様子を眺めていると、視線に気づいたソフィアが問いかける。
「何か、食べるものを用意いたしますか?夕食までまだ時間がありますので、お菓子と紅茶をお持ちいたしますよ。ああ、でも、カナデさんにはぜひ、食べていただきたいものがありますので、そちらをお持ちいたしますね」
「ぜひ、お願いします」
部屋を出てしばらくして、ワゴンを押してソフィアは戻ってきた。ワゴンの上には、カナデがもといた世界でよく見たものが並んでいた。
「あの、これって、もしや」
「ご存じでしたよね。カナデさんが以前、この都市を知っていた感じから、このメニューがいいかなと思いまして。お口に会えばいいのですが」
ワゴンに乗っていたのは、カナデがもといた世界での朝食メニューだった。朝食のメニューとして、カフェなどに行けば食べられる、定番が並べられていた。
「小倉トーストに、コーヒーにゆで卵……。完全に名古屋のモーニングですよね」
「いえ、首都「ネームオールドハウス」の名物NOH(ノーフ)飯」と呼ばれるものの一つになっていますよ」
「さようですか。ああ、でも懐かしい感じがする」
カナデは空腹に耐えきれず、小倉トーストにかぶりつく。それから、ゆっくりとコーヒーの香りを楽しみながら、ソフィアから出された朝食メニューをすべて平らげた。
「そういえば、今何時なのかわかる?これが朝食メニューらしいのはわかるけど、今って午前ってことでいいの?」
今更ながらにカナデは現在時刻をソフィアに確認する。
「そうですねえ。午前11時くらいですね。ちょうど、朝食と昼食が一緒の感じですかね」
「ごちそうさまでした」
「よい食べっぷりで、健康状態に問題がなさそうで何よりです。それで、お腹がいっぱいなところ申し訳ないのですが」
『本当によく食べる』
『見ていて、気持ちがいいがのう』
カナデが食べ終わるのを見計って、ソフィアがカナデに差し迫った問題を提示する。女神と悪魔の二匹の猫はいつの間にか、ソフィアのひざの上でくつろいでいた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる