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後編
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次の日、スマホが手から離れなくなってしまった紫陽のクラスメイトは、学校を休んだ。
両親も自分の娘の手からスマホが離れないのを心配したのだろう。そして、どうにかしてスマホと娘の手を引き離そうと躍起になった。
スマホは実は彼女の神経とつながっていた。つまり、完全に彼女と一心同体となってしまっていたのだ。あまりにも力強く、スマホを引っ張りすぎたようだ。
一応、手から離れたのだが、その後がひどい有様だった。手から出血が止まらず、娘は痛みに叫びながら、のたうち回っていた。
慌てた両親はすぐに娘とスマホを抱えて病院に急いだ。そこにはすでに同じように手から大量に血を流している患者が複数人確認できた。
共通していたことは、手から出血していたこと、彼女たちの傍らには血の付いたスマートフォンが置かれていたことだった。中には引き離すのをあきらめてスマホと合体したままの手のまま病院に駆け込む人の姿も見受けられた。
「全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのはほかならぬ君たち人間なのだから。」
クラスメイトの片手にスマホが寄生してしまった次の日の正午に突然、全世界のすべてのスマートフォン、パソコンが何者かに乗っ取られ、ある動画を見せられた。
話しているのは一件、普通の女性に見えた。一つ違うことといえば、その女性の顔色は青ざめていた。女性の口から言葉は発せられているようだが、口から声が発せられているのではなく、まるで、機械音がスマホから出ているような感じだった。
女性の片手には大きすぎるほどのスマホが手に収まっていた。スマホの大きさはハードカバーの所説並みの大きさだった。パッドとかならそのくらいの大きさのものもありそうだ。
動画を見終わった人々は思った。これは人間のだれかのいたずらであり、スマホが意思を持って人類に寄生するなどそんなでたらめなことがあるわけがない、と。
それから1年がたつと、そんな思いが嘘のように人々の手にはスマホが握られていた。よく見ると、皮膚とスマホが一体化していることがわかる。
スマホが肥大化して、人間くらいの大きさになっているものもあった。そして、それが道端に落ちていた。すでに人間の体をなしていない。巨大化したスマホの下には人間が押しつぶされていた。
こうなると、助かる見込みはない。ただ、死を待つのみである。
人間は案外すぐに順応するものである。スマホに寄生されても、そのままいつも通りの生活を送ることができている。スマホに寄生されていない反対の手でスマートフォンをいじり、SNSを見たり、投稿したり、電話で誰かと連絡を取り合うことも可能である。
当然、スマホということは、電池を消耗する。消耗したら、動かなくなることは当たり前である。人間に寄生したスマートフォンも例外ではない。動かしていれば当然電池を消耗する。
さて、消費した分をどこで充電するのか。方法は2つあり、一つ目は通常のスマホ同様にコードをコンセントにつないで充電する方法。二つ目は自らスマホに消費した分を与える方法がある。
人間からどうやって充電するのかメカニズムは詳しくわかっていないが、それをすると、人間の生命力が奪われるようだ。
ただし、人間からの補充は限度があり、電池の残量が10%をきると、強制的に省エネモードに切り替わる。省エネモードに切り替わると、寄生された人間は動くことができなくなる。
スマホに寄生されたら最後、スマホは人間の生命力をどんどん吸い取られる。寄生したスマホはどんどん巨大化を進め、最終的に人間を完全に乗っ取るまで肥大化する。
スマホを支えきれなくなると、人間はスマホの重みで圧死してしまう。スマホに手足が生えることはないので、寄生先の人間が死ぬことで、スマホはただのガラクタと化す。そんなに大きなスマホを人間が扱えるはずもないので、そのまま、ゴミ捨て場に持っていかれるのを待つのみとなる。
人類と同じ生活をしたいという割に最後はただのガラクタと化していたら意味がないと思うのだが、そのあたりのスマホ事情はいまだ解明されていない。
そもそもスマホが意思を持つようになった原因を作ったのは紛れもなく我々人間である。
原因として、考えられるのは人工知能AIの発達が挙げられる。人工知能が発達して自ら考えるようになった。
ただ、人工知能を持っただけでなく、人間がスマホ依存症になり、24時間スマホを持っていないと不安になってしまうということも原因と考えられている。それが自らの意思を持った人工知能に人間を乗っ取ってやろうという意志を持たせたのだと考える学者もいる。
今はまだ、人間に寄生しても、最終的にスマホが肥大化するだけであり、意識を乗っ取るということまではなされていない。まだ進化段階でのっとって機械のみ巨大化し、動けなくなり、大きくなりすぎたスマホに押しつぶされて殺される。
スマホに寄生されたら、人生終わりだとはあまりにも悲しすぎる。スマホとの切り離しを試みようと様々な手術が行われたが、無理に切り離そうとすると、人間がショック死するという報告が挙げられている。
スマホに寄生される人には大きな特徴があった。スマホ依存症と呼ばれるスマホを持っていないと不安で仕方ないという人々だった。
寄生されやすい人がわかれば、当然そのような人にならないようにするのがふつうである。人々はスマホを生活から引き離そうとした。
とはいえ、スマホに依存してきた現代社会でそんなことが簡単にできるはずがない。人々は次々にスマホに寄生されていった。
あっという間に、全世界の人間ほとんどがスマホに寄生されてしまった。もちろん、スマホがないような発展途上国やスマホを持たない子供や老人などは規制されなかった。スマホに寄生されるのはスマホを契約している人間のみのようだ。
パソコンや携帯電話といったものは意思を持たなかったようだ。いまだに使い続けているのだが、別に携帯電話が手に寄生して離れないということはない。
そんなことで、人間はスマホに乗っ取られてしまったのだった。これは、スマホに依存しすぎた人間がつながりを求めすぎた結果であり、なるべくして起こった現象なのかもしれない。
両親も自分の娘の手からスマホが離れないのを心配したのだろう。そして、どうにかしてスマホと娘の手を引き離そうと躍起になった。
スマホは実は彼女の神経とつながっていた。つまり、完全に彼女と一心同体となってしまっていたのだ。あまりにも力強く、スマホを引っ張りすぎたようだ。
一応、手から離れたのだが、その後がひどい有様だった。手から出血が止まらず、娘は痛みに叫びながら、のたうち回っていた。
慌てた両親はすぐに娘とスマホを抱えて病院に急いだ。そこにはすでに同じように手から大量に血を流している患者が複数人確認できた。
共通していたことは、手から出血していたこと、彼女たちの傍らには血の付いたスマートフォンが置かれていたことだった。中には引き離すのをあきらめてスマホと合体したままの手のまま病院に駆け込む人の姿も見受けられた。
「全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのはほかならぬ君たち人間なのだから。」
クラスメイトの片手にスマホが寄生してしまった次の日の正午に突然、全世界のすべてのスマートフォン、パソコンが何者かに乗っ取られ、ある動画を見せられた。
話しているのは一件、普通の女性に見えた。一つ違うことといえば、その女性の顔色は青ざめていた。女性の口から言葉は発せられているようだが、口から声が発せられているのではなく、まるで、機械音がスマホから出ているような感じだった。
女性の片手には大きすぎるほどのスマホが手に収まっていた。スマホの大きさはハードカバーの所説並みの大きさだった。パッドとかならそのくらいの大きさのものもありそうだ。
動画を見終わった人々は思った。これは人間のだれかのいたずらであり、スマホが意思を持って人類に寄生するなどそんなでたらめなことがあるわけがない、と。
それから1年がたつと、そんな思いが嘘のように人々の手にはスマホが握られていた。よく見ると、皮膚とスマホが一体化していることがわかる。
スマホが肥大化して、人間くらいの大きさになっているものもあった。そして、それが道端に落ちていた。すでに人間の体をなしていない。巨大化したスマホの下には人間が押しつぶされていた。
こうなると、助かる見込みはない。ただ、死を待つのみである。
人間は案外すぐに順応するものである。スマホに寄生されても、そのままいつも通りの生活を送ることができている。スマホに寄生されていない反対の手でスマートフォンをいじり、SNSを見たり、投稿したり、電話で誰かと連絡を取り合うことも可能である。
当然、スマホということは、電池を消耗する。消耗したら、動かなくなることは当たり前である。人間に寄生したスマートフォンも例外ではない。動かしていれば当然電池を消耗する。
さて、消費した分をどこで充電するのか。方法は2つあり、一つ目は通常のスマホ同様にコードをコンセントにつないで充電する方法。二つ目は自らスマホに消費した分を与える方法がある。
人間からどうやって充電するのかメカニズムは詳しくわかっていないが、それをすると、人間の生命力が奪われるようだ。
ただし、人間からの補充は限度があり、電池の残量が10%をきると、強制的に省エネモードに切り替わる。省エネモードに切り替わると、寄生された人間は動くことができなくなる。
スマホに寄生されたら最後、スマホは人間の生命力をどんどん吸い取られる。寄生したスマホはどんどん巨大化を進め、最終的に人間を完全に乗っ取るまで肥大化する。
スマホを支えきれなくなると、人間はスマホの重みで圧死してしまう。スマホに手足が生えることはないので、寄生先の人間が死ぬことで、スマホはただのガラクタと化す。そんなに大きなスマホを人間が扱えるはずもないので、そのまま、ゴミ捨て場に持っていかれるのを待つのみとなる。
人類と同じ生活をしたいという割に最後はただのガラクタと化していたら意味がないと思うのだが、そのあたりのスマホ事情はいまだ解明されていない。
そもそもスマホが意思を持つようになった原因を作ったのは紛れもなく我々人間である。
原因として、考えられるのは人工知能AIの発達が挙げられる。人工知能が発達して自ら考えるようになった。
ただ、人工知能を持っただけでなく、人間がスマホ依存症になり、24時間スマホを持っていないと不安になってしまうということも原因と考えられている。それが自らの意思を持った人工知能に人間を乗っ取ってやろうという意志を持たせたのだと考える学者もいる。
今はまだ、人間に寄生しても、最終的にスマホが肥大化するだけであり、意識を乗っ取るということまではなされていない。まだ進化段階でのっとって機械のみ巨大化し、動けなくなり、大きくなりすぎたスマホに押しつぶされて殺される。
スマホに寄生されたら、人生終わりだとはあまりにも悲しすぎる。スマホとの切り離しを試みようと様々な手術が行われたが、無理に切り離そうとすると、人間がショック死するという報告が挙げられている。
スマホに寄生される人には大きな特徴があった。スマホ依存症と呼ばれるスマホを持っていないと不安で仕方ないという人々だった。
寄生されやすい人がわかれば、当然そのような人にならないようにするのがふつうである。人々はスマホを生活から引き離そうとした。
とはいえ、スマホに依存してきた現代社会でそんなことが簡単にできるはずがない。人々は次々にスマホに寄生されていった。
あっという間に、全世界の人間ほとんどがスマホに寄生されてしまった。もちろん、スマホがないような発展途上国やスマホを持たない子供や老人などは規制されなかった。スマホに寄生されるのはスマホを契約している人間のみのようだ。
パソコンや携帯電話といったものは意思を持たなかったようだ。いまだに使い続けているのだが、別に携帯電話が手に寄生して離れないということはない。
そんなことで、人間はスマホに乗っ取られてしまったのだった。これは、スマホに依存しすぎた人間がつながりを求めすぎた結果であり、なるべくして起こった現象なのかもしれない。
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