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入学式のその後
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ガイダンスが終わり、学生たちが教室を出始めたので私も今度こそ波に乗って移動しようとした。今回は邪魔が入らなかった。西園寺さんとイケメンは、私に「また明日」と声をかけると、先ほどまでの私の興味はどこへ行ったのかというほど、あっさり教室を出ていった。
解放してくれるのはありがたいが、それはそれで気味が悪い。しかし、ここはありがたく帰るとしよう。今日はなんだか疲れた。
今日はこれで終わりなので早く家に帰って休むことにしよう。休んだらやるべきことはたくさんある。今日は金曜日で、授業が始まるのは月曜日からだ。履修内容が書かれたシラバスなるものをしっかり見て、時間割を決めなくてはいけない。アルバイトも早く決めてお金を稼ぎたい。とりあえず家に帰ったら、すぐにでも休みたい。
電車に乗って帰る途中、電車内に奇妙な格好をした子供がいるのに気が付いた。お尻まで隠れる丈の長いパーカーでフードを目深にかぶった小学生ぐらいの男の子である。なんとなしに眺めていたら、その子は私の視線に気づいたのか、顔を上げた。
その子の目は真っ赤だった。そして、顔を上げた拍子にフートが取れて男の顔をはっきりと見ることができた。彼の頭にはなんと、犬のような耳が生えていた。よく見ると、お尻のあたりが不自然に盛り上がっている。私は今見たものが信じられなくて、もう一度彼を凝視した。しかし、そこに男の子の姿はなかった。
今見たものは何だったのだろうか。考えているうちに最寄り駅についてしまったので慌てて電車を降りた。
私が家に向かって帰っていた頃、西園寺さんと雨水君はまだ大学内に残っていた。
「面白いわね、あの子。私から本気で逃げ出そうとするなんて。ねえ、興味湧いてきたでしょ、静流。」
「まあ、確かに少しは興味があるが。それ以上にあいつは……。桜華もあれに興味をひかれたんだろう。」
何やら二人は私に大層興味を持っていて、まだまだ関わってきそうである。しかし、私は気付かずにいたのだった。
家に帰って、その日はそのまま何もせず寝てしまった。入学式でただでさえ緊張していたのに、余計に疲れる出会いがあったのでなおさら疲れている。今日はもう何も考えたくなかったのでまあいいだろう。
夢を見た。ぐっすり眠れるかと思いきや、そうはいかなかったらしい。夢の中で私は西園寺さんと共にいた。執事服である黒い服をまとい、白い手袋をして西園寺さんをエスコートしていた。西園寺さんは、中世の貴族が来ているようなドレスを身にまとっていた。
目が覚めたのは明け方だった。それまで私は西園寺さんと一緒にコスプレしている夢を見ていたのだろうか。早めに寝て、睡眠時間はばっちりとれていたと思うが、夢見が悪かったせいで全然疲れが取れた気がしない。
解放してくれるのはありがたいが、それはそれで気味が悪い。しかし、ここはありがたく帰るとしよう。今日はなんだか疲れた。
今日はこれで終わりなので早く家に帰って休むことにしよう。休んだらやるべきことはたくさんある。今日は金曜日で、授業が始まるのは月曜日からだ。履修内容が書かれたシラバスなるものをしっかり見て、時間割を決めなくてはいけない。アルバイトも早く決めてお金を稼ぎたい。とりあえず家に帰ったら、すぐにでも休みたい。
電車に乗って帰る途中、電車内に奇妙な格好をした子供がいるのに気が付いた。お尻まで隠れる丈の長いパーカーでフードを目深にかぶった小学生ぐらいの男の子である。なんとなしに眺めていたら、その子は私の視線に気づいたのか、顔を上げた。
その子の目は真っ赤だった。そして、顔を上げた拍子にフートが取れて男の顔をはっきりと見ることができた。彼の頭にはなんと、犬のような耳が生えていた。よく見ると、お尻のあたりが不自然に盛り上がっている。私は今見たものが信じられなくて、もう一度彼を凝視した。しかし、そこに男の子の姿はなかった。
今見たものは何だったのだろうか。考えているうちに最寄り駅についてしまったので慌てて電車を降りた。
私が家に向かって帰っていた頃、西園寺さんと雨水君はまだ大学内に残っていた。
「面白いわね、あの子。私から本気で逃げ出そうとするなんて。ねえ、興味湧いてきたでしょ、静流。」
「まあ、確かに少しは興味があるが。それ以上にあいつは……。桜華もあれに興味をひかれたんだろう。」
何やら二人は私に大層興味を持っていて、まだまだ関わってきそうである。しかし、私は気付かずにいたのだった。
家に帰って、その日はそのまま何もせず寝てしまった。入学式でただでさえ緊張していたのに、余計に疲れる出会いがあったのでなおさら疲れている。今日はもう何も考えたくなかったのでまあいいだろう。
夢を見た。ぐっすり眠れるかと思いきや、そうはいかなかったらしい。夢の中で私は西園寺さんと共にいた。執事服である黒い服をまとい、白い手袋をして西園寺さんをエスコートしていた。西園寺さんは、中世の貴族が来ているようなドレスを身にまとっていた。
目が覚めたのは明け方だった。それまで私は西園寺さんと一緒にコスプレしている夢を見ていたのだろうか。早めに寝て、睡眠時間はばっちりとれていたと思うが、夢見が悪かったせいで全然疲れが取れた気がしない。
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