上 下
47 / 49

衝撃の事実と結末

しおりを挟む
『西園寺桜華は京都ではなく、この近くの大学にこの春から通いだした。京都にいる西園寺桜華は偽物だ。理由をお前に話す必要はない。彼女には能力者に能力を奪わせる仕事をさせている。能力者が最近、暴れているので、その能力者の力を奪い、これ以上、能力者が事件を起こさないようにするのが目的だと、仕事内容を説明しておく。お前はそのまま事件を起こした能力者を殺していけばいい。我は彼女に犯人についての情報を時折伝える。そのうちに彼女は犯人がお前だと気づくだろう。お前は彼女が接触してくるまで能力者を殺し、子供の幽霊を作り続けることができる。良い話だとは思わないか。』

 
 もし、この話が本当に実現できたとして、どうしてこうも回りくどいことをして西園寺桜華という人物を殺そうとするのだろうか。瀧は能力を使い、少年がどのような能力を持っているのか確認した。しかし、なぜか少年からは何も読み取ることができない。

 今まで能力を使って相手の力が何であるか読み取れなかったことはない。いったい、この少年は何者なのだろうか。もしや、自分はとんでもない相手と約束をして力を与えられたのではないだろうか。そんな不安が押し寄せてきた。しかし、それすらも少年にはお見通しのようだった。



『お主の言いたいことはわかるが、我の正体は決して怪しいものではない。お主が我の能力を読めないのは当たり前だ。我は人間ではないのだからな。それ以外のことはここでは言えない。ただ、西園寺桜華を殺してくれた暁には話してやってもいいがな。』

 瀧はもう後戻りできないところまで来てしまったと考え、少年の言う通りに殺人を繰り返した。少年の依頼通り、西園寺さんが接触してきたときにはためらわずに殺した。そして、今までしてきたように子供の幽霊にしてしまった。

 

 少年は時たま、瀧の前に姿を現し、計画がどんな風に進んでいるか確認していた。西園寺さんを殺した後にも彼は瀧の前に姿を現した。



『瀧といったか。お前のお蔭でようやくこれで契約が終わりを告げた。一応、感謝の意を表しておこう。これでやっと我は自由の身だ。人間の生は短いとはいえ、こう何代もにわたって縛り付けられていれば、長くも感じるものか。』

 


 それを最後に、それ以降は瀧の目の前に姿を見せなくなった。しかし、瀧はその後も殺人を辞めることはなかった。そして、これまで通り、子供の幽霊を作り出そうとしたが、それがかなうことはなかった。
 
 どうやら少年との契約は、西園寺桜華という人物を殺すまでというものだったようだ。西園寺さんを殺してからというもの、能力者を殺しても魂を取り出すことはできなかった。力が失われたとわかった瀧は、急に自分が犯した罪を自覚した。そして、警察に自首しようとしたが、警察署の前まで来ては引き返した。






 話を終えると、突然瀧は苦しみだした。そして、血を吐いて倒れてしまった。慌てて駆け寄ると瀧はすでに死んでいた。あまりにもあっけない最期である。警察に突き出し、罪を叱り償ってもらおうと思っていたのに死んでしまってはどうしようもない。

 しかし、瀧の死は突然すぎる。私からの質問に答え、全部話し終えてからの死。誰かが、瀧の死をコントロールしたということか。おそらく、瀧に力を与えた人物が関係しているのだろう。なんとなくだが、そう思った。ということは、この近くに瀧に殺しを依頼した人物はいるということか。







「死んでしまったのか。この男は。死んでしまったのは仕方ない。ところでお主、いますぐこの部屋から出た方がよいぞ。」

 私が呆然とその場に立ち尽くしていると、その場に九尾が現れた。そして、この寺を燃やすと言い出した。九尾が言うには、この寺には幽霊たちのせいで良くない気がたまっていて、このままだとこの町全体に影響を及ぼすほどの邪気になってしまうとのこと。私はよく理解できないまま、九尾の言う通り、地下室からでて、寺の外に逃げ出した。
 




 九尾がしつこく寺の外に私を逃がそうとするので、地下室に瀧を置いてきてしまった。

 私が寺の外を出るのと同時に九尾は炎を寺に向かって放った。寺は青白い炎を上げて燃え上がり、火がおさまるころにはそこには寺は跡形もなくなっていた。瀧の遺体もそのまま炎に焼かれて消失してしまった。





 寺の外には雨水君と佐藤さんと翼君と狼貴君がいた。みんな無事に寺の外に逃げていたようだ。なんだかよくわからないまま、今回の事件は幕を閉じたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

朔夜蒼紗の大学生活④~別れを惜しむ狼は鬼と対峙する~

折原さゆみ
キャラ文芸
朔夜蒼紗(さくやあおさ)はこの春、大学2年生となった。今年こそは、平和な日常を過ごしたいと意気込むが、彼女にそんな日常は訪れることはない。 「蒼紗さん、私のサークルに新しい子が入りました!」 「鬼崎美瑠(おにざきみる)です」 「蒼紗さん、僕も大学に入学することになりました、七尾(ななお)です!」 大学2年生となり、新入生が入学するのは当然だ。しかし、個性豊かな面々が蒼紗の周りに集まってくる。彼女と一緒に居る綾崎の所属するサークルに入った謎の新入生。蒼紗に興味を持っているようで。 さらには、春休みに出会った、九尾(きゅうび)の元眷属のケモミミ少年もなぜか、大学に通うことになっていた。 「紅犬史(くれないけんし)です。よろしくお願いします」 蒼紗がアルバイトをしている塾にも新しい生徒が入ってきた。この塾にも今年も興味深い生徒が入学してきて。 さらには、彼女の家に居候している狼貴(こうき)君と翼(つばさ)君を狙う輩も現れて。アルバイト先の上司、死神の車坂(くるまざか)の様子もおかしいようだ。 大学2年生になっても、彼女の日常は平穏とは言い難いが、今回はどのような騒動に巻き込まれるのだろうか。 朔夜蒼紗の大学生活4作目になります。引き続き、朔夜蒼紗たちをよろしくお願いします。

朔夜蒼紗の大学生活③~気まぐれ狐は人々を翻弄する~

折原さゆみ
キャラ文芸
朔夜蒼紗(さくやあおさ)は、今日も平穏な大学生活を望んでいた。しかし、彼女のもとに平穏な生活が訪れることはない。 「私、この度、彼氏ができました!」ジャスミンの唐突な彼氏宣言。 「先生は、サンタを信じている?」 「受験の悪魔がいるんだって」塾での怪しい噂。 塾に来た新しい生徒に、西園寺家次期当主を名乗る、謎の人物。怪しい人物だらけで、朔夜蒼紗の周りは今日もとてもにぎやかだ。 「まったく、お主は面白いのう」 朔夜蒼紗は今回、どのような騒動に巻き込まれるのだろうか。始まりは狐。狐は人々を今日も翻弄していく。 ※朔夜蒼紗の大学生活シリーズ三作目となります。  朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~ https://www.alphapolis.co.jp/novel/16490205/842219471  朔夜蒼紗の大学生活②~死神は退屈を持て余す~ https://www.alphapolis.co.jp/novel/16490205/579224814  三作目もどうぞよろしくお願いします。 

朔夜蒼紗の大学生活⑥

折原さゆみ
キャラ文芸
大学二年の夏休みが終わり、後期が始まった。後期最初のイベントいえば文化祭。そこにある特別ゲストが参加するらしい。彼の名前は【西炎(さいえん)】。二年目の後期も波乱に満ちたものになりそうだ。 朔夜蒼紗の大学生活シリーズ第6作目になります。サブタイトルは決まり次第、付け加えます。 初見の方は、ぜひ1作目から目を通していただけると嬉しいです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

処理中です...