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雨男は生きていました②
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私は雨水君に今まで見てきたことを話した。日曜日にたまたま寺の近くに寄ったら、人の声が聞こえて近づいてみると、瀧と佐藤さんがいたこと。とっさに物陰に身を隠して様子をうかがうと、その後西園寺さんと雨水君が来たこと。そして、西園寺さんが雨水君と一緒に寺の地下に入り、その後部屋から出てきたのは西園寺さん一人だったことを簡潔に説明した。
翼君や狼貴君の話はしなかった。とりあえず、雨水君が瀧のことをどこまで知っているかを先に聞く必要がある。
私の話を聞き、しばらく考え込む雨水君。今度は私が質問する番である。聞きたいことがたくさんあって一気に質問してしまった。
「雨水君はどうやって地下から逃げてきたのですか。そして、あの地下には何があったのでしょうか。瀧の目的は何だったのか。」
「一度にたくさん質問してくれるな。だが、ひとつずつ答えていこう。まずはどうやって地下からにげることができたかだが………。」
雨水君はあのときの地下での出来事を語ってくれた。
「まず、俺は雨を降らせる能力を持っていると思われがちだが、本来は水を操る能力だ。たまに自分の能力がコントロールできずに暴走して、自分の周囲に雨を降らせてしまうことがあるが。水を操ることができるほかに、氷をつくりだすこともできる。地下に案内された俺たちはある部屋にたどりついた。そこには病院の診察台みたいものが1台置いてあった。その寝台は赤い何かで汚れていた。俺はそれが人間の血に間違いないと考えた。桜華も同じように考えたようだ。瀧にこの寝台が何に使っているのか尋ねた。」
その寝台の上で捕まえた能力者を殺していったのだろう。私の夢に間違いがなければの話だが。
「すると、瀧は答えた。『あなたたちの人生最後の場所ですよ。』と。不気味な笑顔でそう答えた瀧の様子に警戒していると、突然、瀧がポケットから注射器のようなものを取り出した。そのまま勢いをつけてそれを桜華めがけて突き刺した。あっという間の出来事だった。まさか、ここにきてまだ反撃に出るとは思っていなかったから、対処が遅れた。そのせいで桜華は………。」
刺された西園寺さんを助けようとしたが、間に合わなかった。気を失った西園寺さんを目の前の寝台に寝かせた瀧は、部屋の隅に置いてあった日本刀のようなもので西園寺さんの心臓を一突きした。雨水君は、水を操る力で氷の刃を作り出し、瀧めがけて攻撃したが、それは瀧に当たる前に溶けてなくなる。まるで瀧の前に炎の壁があるみたいに氷の刃は溶かされていったようだ。心臓を一突きされて西園寺さんは殺された。
その後のことはよく覚えていないという。自分の攻撃を全く受けない瀧に、これ以上の攻撃は無駄だと判断した雨水君は攻撃するのをやめた。そして、瀧のもとから逃げ出した。しかし、逃げる彼を瀧は追ってこなかった。不審に思ったが、そんなことを考える余裕はなかったので、ひたすら瀧から遠ざかるまで逃げ続けた。数日逃げ続けて、気が付いたら蒼紗の家の前にいたという。
私と雨水君、どちらもこの前の寺での出来事について話し終えたので、今日はもう寝ることにした。雨水君には私の部屋を使ってもらい、私は両親の寝室を借りることにした。今日も両親は帰ってこなかった。
よほど疲れていたのか、目が覚めたらすでに朝だった。今日も大学はあるのだが、私と雨水君は自主休講をすることにした。一刻も早く瀧を捕まえなければ、さらに犠牲者は増える可能性がある。リビングに行くと、すでに雨水君と九尾が起きていて話し合いをしていた。どうやら先に今後どうするか話し合っていたらしい。
「おはよう、朔夜。昨日は本当に助かった。感謝する。」
「おはよう、蒼紗。しっかり寝ておったのう。今日から忙しくなりそうだから、寝だめというところかのう。」
二人が挨拶してきたので私も挨拶を返し、朝ご飯の準備をする。とはいっても、最近忙しくて家に帰ってもすぐに寝てしまっていたので、食料は残念ながらない。冷蔵庫の中は空っぽだ。二人にそのことを告げると、じゃあ、近くのファミレスにでも行って、朝食を食べながら話そうということになった。
「行ってきます。」
私は今日も誰もいない家に向かって挨拶をしてから家を出る。雨水君が不思議そうな目で見ていたが、特に何も言うことはなかった。
翼君や狼貴君の話はしなかった。とりあえず、雨水君が瀧のことをどこまで知っているかを先に聞く必要がある。
私の話を聞き、しばらく考え込む雨水君。今度は私が質問する番である。聞きたいことがたくさんあって一気に質問してしまった。
「雨水君はどうやって地下から逃げてきたのですか。そして、あの地下には何があったのでしょうか。瀧の目的は何だったのか。」
「一度にたくさん質問してくれるな。だが、ひとつずつ答えていこう。まずはどうやって地下からにげることができたかだが………。」
雨水君はあのときの地下での出来事を語ってくれた。
「まず、俺は雨を降らせる能力を持っていると思われがちだが、本来は水を操る能力だ。たまに自分の能力がコントロールできずに暴走して、自分の周囲に雨を降らせてしまうことがあるが。水を操ることができるほかに、氷をつくりだすこともできる。地下に案内された俺たちはある部屋にたどりついた。そこには病院の診察台みたいものが1台置いてあった。その寝台は赤い何かで汚れていた。俺はそれが人間の血に間違いないと考えた。桜華も同じように考えたようだ。瀧にこの寝台が何に使っているのか尋ねた。」
その寝台の上で捕まえた能力者を殺していったのだろう。私の夢に間違いがなければの話だが。
「すると、瀧は答えた。『あなたたちの人生最後の場所ですよ。』と。不気味な笑顔でそう答えた瀧の様子に警戒していると、突然、瀧がポケットから注射器のようなものを取り出した。そのまま勢いをつけてそれを桜華めがけて突き刺した。あっという間の出来事だった。まさか、ここにきてまだ反撃に出るとは思っていなかったから、対処が遅れた。そのせいで桜華は………。」
刺された西園寺さんを助けようとしたが、間に合わなかった。気を失った西園寺さんを目の前の寝台に寝かせた瀧は、部屋の隅に置いてあった日本刀のようなもので西園寺さんの心臓を一突きした。雨水君は、水を操る力で氷の刃を作り出し、瀧めがけて攻撃したが、それは瀧に当たる前に溶けてなくなる。まるで瀧の前に炎の壁があるみたいに氷の刃は溶かされていったようだ。心臓を一突きされて西園寺さんは殺された。
その後のことはよく覚えていないという。自分の攻撃を全く受けない瀧に、これ以上の攻撃は無駄だと判断した雨水君は攻撃するのをやめた。そして、瀧のもとから逃げ出した。しかし、逃げる彼を瀧は追ってこなかった。不審に思ったが、そんなことを考える余裕はなかったので、ひたすら瀧から遠ざかるまで逃げ続けた。数日逃げ続けて、気が付いたら蒼紗の家の前にいたという。
私と雨水君、どちらもこの前の寺での出来事について話し終えたので、今日はもう寝ることにした。雨水君には私の部屋を使ってもらい、私は両親の寝室を借りることにした。今日も両親は帰ってこなかった。
よほど疲れていたのか、目が覚めたらすでに朝だった。今日も大学はあるのだが、私と雨水君は自主休講をすることにした。一刻も早く瀧を捕まえなければ、さらに犠牲者は増える可能性がある。リビングに行くと、すでに雨水君と九尾が起きていて話し合いをしていた。どうやら先に今後どうするか話し合っていたらしい。
「おはよう、朔夜。昨日は本当に助かった。感謝する。」
「おはよう、蒼紗。しっかり寝ておったのう。今日から忙しくなりそうだから、寝だめというところかのう。」
二人が挨拶してきたので私も挨拶を返し、朝ご飯の準備をする。とはいっても、最近忙しくて家に帰ってもすぐに寝てしまっていたので、食料は残念ながらない。冷蔵庫の中は空っぽだ。二人にそのことを告げると、じゃあ、近くのファミレスにでも行って、朝食を食べながら話そうということになった。
「行ってきます。」
私は今日も誰もいない家に向かって挨拶をしてから家を出る。雨水君が不思議そうな目で見ていたが、特に何も言うことはなかった。
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