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連れていかれたときの状況①
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「さて、何から話していきましょうか。」
沈黙が流れる。私としては、もう少し詳しく佐藤さんが瀧さんに捕まった経緯を知りたいのだが、この話を直球で聞くのはためらわれる。しかし、私の聞きたかった話は佐藤さん自ら話してくれた。
「蒼紗が何か聞きたそうだけど、何を聞きたいのかなんとなくわかるわ。私がさらわれた時のことが聞きたいのよね。友達がされられかけたのだから、心配して当然ね。さらわれた時の状況を知りたいと思うことは当然のことよね。」
話し方がなんとなく西園寺さんに似ているのは気のせいか。誤解されている部分もあるが、話を聞きたいのは本当なので、そのままうなずき、続きを促す。
「じゃあ、その話から始めましょう。」
こうして、佐藤さんの話が始まった。
事件が起こったあの日、私たちと別れた佐藤さんは、いつも通りの道で家に帰ろうとした。公園の前を通りかかったとき、知らない男に急に声をかけられたという。突然話しかけられた。
「怪しいものではありません、あなたと少し話がしたいだけです。」
「あなたの能力について興味があるので、ぜひお願いします。実は私も能力者でして、近くに能力者がいないので、能力者に出会うと、ついつい話を聞きたくて声をかけてしまうのです。」
佐藤さんは能力者という言葉に反応した。自分が能力者だということは、他人には知られていないはずで、どうして初対面の男にばれているのか気になってしまった。このままこの男についていくのは危険な気がするが、自分の能力をもってすれば、たいがいの危険は回避できる。彼女は自分の能力を過信していた。
そして、彼女は男の言われるまま、私が佐藤さんを見つけた寺に向かうのだった。
寺に着いた男と佐藤さんは、お互いの能力について語り合った。そうしているうちに日が暮れて、佐藤さんはそろそろ家に帰ろうかと思ったらしい。話を中断し、帰りたい旨を伝えると、男は提案してきた。
「今日はここに泊まっていかないか。」
もちろん、佐藤さんは断った。しかし、男もあきらめが悪かったようだ。口論になり、らちが明かないと判断した佐藤さんは能力を使おうした。ところが、男に能力は聞かなかった。そのまま、注射器のようなものをつきさされ、気を失ってしまった。
次に目を覚ました時には、どこかの地下室にいたという。部屋には窓がなく、湿っぽいじめじめした部屋で、明かりがついていても薄暗い様子から判断したようだ。診察台のようなものに寝かされていて、両手、両足を鎖でつながれていて、身動きができなかった。そこに男が近づいてきた。
「気分はどうですか。」
男に問いかけられたが、目覚めたらどこかもわからない部屋に、両手両足を拘束されて寝かされていて、気分が良いものはいない。佐藤さんは今度こそ、能力を使い、男から逃げ出そうとした。しかし、またもや能力を使うことができなかった。
「また会いましょう。」
そう言って、男は何かを佐藤さんに振りかざそうとした。金属のようなものが風を切る音が聞こえたらしい。
彼女はとっさに目を閉じた。そして死を覚悟した。能力も発動できない以上、この拘束から逃げ出すことはできない。
「瀧先生、どこにいますかあ。いたら返事してください。新しくこの寺に来た子が先生をよんでいますよお。」
タイミングよく、外から声が聞こえた。とっさに声を出して助けを呼ぼうとした。しかし、男に口をふさがれて声がうまく出せない。彼女は口をふさいでいる手にかみついた。口に血の味が広がったが、なりふり構ってはいられない。
突然の行動に男は驚いたようだ。そして、外からの声が気になるのか、外をしきりに気にしている。外と彼女を交互に見比べたのち、外に行くことに決めたようだ。
そのまま、何も言わずに男は彼女をその場に残したまま、部屋から出ていった。その場に残された彼女は、ひとまず殺されなかったことにほっとしたが、このままここにいてはいずれ殺されてしまう。どうにかこの拘束から抜け出せないものか。考えているうちに拳を強く握りしめていた。手から血が流れ、その血が手首を伝い、拘束具にまで流れていく。
すると、金属が焦げたようなにおいがし、数分後には彼女の拘束具は溶けてなくなっていた。彼女は自分の体質にこの時ほど感謝したことはない。両手の拘束が溶けてなくなり、自由になった。目隠しを外し、そのまま両足の拘束にも自分の血を垂らして溶かしていく。
拘束具から抜け出した彼女は部屋から抜け出した。そして、外に出たところを男に見つかったというわけだ。そして、また男に注射器のようなものをつきさされて気を失ったが、目覚めたら私がいたというわけだ。
佐藤さんがさらわれてからどのように過ごしていたのかが理解できた。
沈黙が流れる。私としては、もう少し詳しく佐藤さんが瀧さんに捕まった経緯を知りたいのだが、この話を直球で聞くのはためらわれる。しかし、私の聞きたかった話は佐藤さん自ら話してくれた。
「蒼紗が何か聞きたそうだけど、何を聞きたいのかなんとなくわかるわ。私がさらわれた時のことが聞きたいのよね。友達がされられかけたのだから、心配して当然ね。さらわれた時の状況を知りたいと思うことは当然のことよね。」
話し方がなんとなく西園寺さんに似ているのは気のせいか。誤解されている部分もあるが、話を聞きたいのは本当なので、そのままうなずき、続きを促す。
「じゃあ、その話から始めましょう。」
こうして、佐藤さんの話が始まった。
事件が起こったあの日、私たちと別れた佐藤さんは、いつも通りの道で家に帰ろうとした。公園の前を通りかかったとき、知らない男に急に声をかけられたという。突然話しかけられた。
「怪しいものではありません、あなたと少し話がしたいだけです。」
「あなたの能力について興味があるので、ぜひお願いします。実は私も能力者でして、近くに能力者がいないので、能力者に出会うと、ついつい話を聞きたくて声をかけてしまうのです。」
佐藤さんは能力者という言葉に反応した。自分が能力者だということは、他人には知られていないはずで、どうして初対面の男にばれているのか気になってしまった。このままこの男についていくのは危険な気がするが、自分の能力をもってすれば、たいがいの危険は回避できる。彼女は自分の能力を過信していた。
そして、彼女は男の言われるまま、私が佐藤さんを見つけた寺に向かうのだった。
寺に着いた男と佐藤さんは、お互いの能力について語り合った。そうしているうちに日が暮れて、佐藤さんはそろそろ家に帰ろうかと思ったらしい。話を中断し、帰りたい旨を伝えると、男は提案してきた。
「今日はここに泊まっていかないか。」
もちろん、佐藤さんは断った。しかし、男もあきらめが悪かったようだ。口論になり、らちが明かないと判断した佐藤さんは能力を使おうした。ところが、男に能力は聞かなかった。そのまま、注射器のようなものをつきさされ、気を失ってしまった。
次に目を覚ました時には、どこかの地下室にいたという。部屋には窓がなく、湿っぽいじめじめした部屋で、明かりがついていても薄暗い様子から判断したようだ。診察台のようなものに寝かされていて、両手、両足を鎖でつながれていて、身動きができなかった。そこに男が近づいてきた。
「気分はどうですか。」
男に問いかけられたが、目覚めたらどこかもわからない部屋に、両手両足を拘束されて寝かされていて、気分が良いものはいない。佐藤さんは今度こそ、能力を使い、男から逃げ出そうとした。しかし、またもや能力を使うことができなかった。
「また会いましょう。」
そう言って、男は何かを佐藤さんに振りかざそうとした。金属のようなものが風を切る音が聞こえたらしい。
彼女はとっさに目を閉じた。そして死を覚悟した。能力も発動できない以上、この拘束から逃げ出すことはできない。
「瀧先生、どこにいますかあ。いたら返事してください。新しくこの寺に来た子が先生をよんでいますよお。」
タイミングよく、外から声が聞こえた。とっさに声を出して助けを呼ぼうとした。しかし、男に口をふさがれて声がうまく出せない。彼女は口をふさいでいる手にかみついた。口に血の味が広がったが、なりふり構ってはいられない。
突然の行動に男は驚いたようだ。そして、外からの声が気になるのか、外をしきりに気にしている。外と彼女を交互に見比べたのち、外に行くことに決めたようだ。
そのまま、何も言わずに男は彼女をその場に残したまま、部屋から出ていった。その場に残された彼女は、ひとまず殺されなかったことにほっとしたが、このままここにいてはいずれ殺されてしまう。どうにかこの拘束から抜け出せないものか。考えているうちに拳を強く握りしめていた。手から血が流れ、その血が手首を伝い、拘束具にまで流れていく。
すると、金属が焦げたようなにおいがし、数分後には彼女の拘束具は溶けてなくなっていた。彼女は自分の体質にこの時ほど感謝したことはない。両手の拘束が溶けてなくなり、自由になった。目隠しを外し、そのまま両足の拘束にも自分の血を垂らして溶かしていく。
拘束具から抜け出した彼女は部屋から抜け出した。そして、外に出たところを男に見つかったというわけだ。そして、また男に注射器のようなものをつきさされて気を失ったが、目覚めたら私がいたというわけだ。
佐藤さんがさらわれてからどのように過ごしていたのかが理解できた。
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