2 / 49
衝撃的な出会い②
しおりを挟む
ガイダンスが行われる教室が講堂から割と遠い場所にあったため、開始時刻には間に合わなかったが、教授たちはまだ集まっていなかった。
「先生方がまだいらっしゃらなくてよかったわ。ねえ、朔夜さん。」
教室ではほかの学生に話しかけるだろう。これで私のことを放っておいてくれると思い、席を西園寺さんから離して座ろうとしたのだが、相手はまだ私に用があるらしい。いい加減、面倒くさくなったので無視することにした。そして、教室をぐるりと見まわし、これから4年間を共にする仲間を観察する。
同じ学科とはいえ、すでにグループがいくつかに分かれていた。茶色などの明るい髪の色に染めた化粧の派手なグループ。黒髪で地味目な服装の真面目でおとなしそうなグループ。その中間のグループ。私は中間のグループに入りたいなあ。可もなく不可もなく、平穏に過ごしたい。
「遅いぞ、桜華。何やってたんだ。」
突然、男子学生が目の前に現れた。これまたイケメンだ。身長が高く、こちらは真っ黒の髪に真っ黒の瞳。瞳は切れ長で鼻筋はすっと通っている。服装は大学の入学式にふさわしい黒のスーツをピッタリと着こなしている。この男性もスタイルがいい。足が長いし、スーツの上から見ても筋肉が程よくついていそうなことがわかる。西園寺さんと知り合いなのだろう。美男美女が並ぶとやはり絵になる。
彼女たちの容姿に見惚れて、逃げるのが遅れてしまった。
「ああ、ごめんごめん。この子のことが気に入っちゃってね、いろいろ話していたから遅れてしまったの。静流も朔夜のこと気に入ると思うよ。」
なんてことを言うのだろう。まるで私と話していて遅れてしまったと言っているようなものだ。話しかけてきたのはそっちで、しかも一方的に話していただけで、私は一言しか話していない。
「……。」
静流と呼ばれたイケメン学生が、私をじっと見つめてくる。ただでさえ、美男美女に囲まれて居心地が悪いのに、こうもじっと見つめられるとさらに悪い。加えて周囲の視線も針のように刺さっている。とりあえず何か話してみなくては。
「ええと。これから4年間同じ学科同士よろしくお願いします。それにしても西園寺さんもあなたも美男美女で何ともうらやましい……。性格は別として。」
思ったことを口に出してしまった。だがしかし、仕方のないことだ。人間、とっさに口から出る言葉は大抵の場合、心の声だと思う。おそらく今回もそういうことだろう。
「ふうん。確かになかなか面白そうな子ではあるが、そこまで気に入るほどか。」
イケメンにおもしろそうな子と言われてしまった。そして、私のことを値踏みするようにさらに見つめてくる。居心地悪くて仕方ない。だが、イケメンのいうことは間違っている。これでも私は周囲からおもしろみのない子として通っているのだ。それはそれでよいことではないが、おもしろい子認定されるのも嫌だ。
「おもしろくはありません。だいたい、あなたと西園寺さんの関係はなんですか。私はあなたたちと初対面のはずですが。」
大事なことを言ってやった。そもそも、初対面の相手に気に入る、おもしろいという発言はいささかおかしいと思う。すると突然、西園寺さんが私の発言を無視してまたもとんでも発言をかましだした。
「よく見るとあなた、可愛い顔よね。決めた、これは運命の出会い。今日から私と一緒に行動しなさい。」
「はあ……。」
意味不明だ。私が返事をする間も無く、勝手に彼女の中で話は自己完結してしまったらしい。うんうんと満足げに頷き、隣のイケメンに同意を促している。再度言おう。全くもって意味不明だ。何か言わなくてはと思い、口を開けかけたのだが。
「桜華、お前いい加減にしろよ。可愛い女見つけてはおもちゃにしやがって、これで何人目だよ。全くこりないな、バカだろ。」
私のほかにも同じような目にあった少女がいるのか。この残念系美人の餌食になった少女が何人も存在するとは。いままでの行動から鑑みれば、イケメンが言っていることはあながち嘘ではないのかもしれない。想像が容易にできてしまうところが恐ろしい。
「おもちゃとは失礼な。おもちゃよりよっぽど楽しいわよ。可愛い声で泣くし、言うこと聞いてくれるし、イヌネコのペットの類より役に立つし。」
なんとまあ、人間がおもちゃやペットと同類とは恐れ入った。イケメンの言うとおりだったとは。自分は神か何かと勘違いしているのか、それとも頭がいかれているのか。どちらにしろ、やはり関わるとろくなことがなさそうだ。
「そのようなことはほかの誰かにしてください。私は平穏な大学生活を送りたいのです。では、これ以上は話しかけないでもらいたい。そして私に関わらないで頂きたい。」
訣別の言葉を述べ、颯爽と席を離れようと席を立ったちょうどその時、教授陣が教室に現れ、席を離れることは許されなかった。
「君、席を立ってどこに行くつもりかね。」
入学式早々、教授に目をつけられてしまった。平穏な大学生活はどこに行った。もう少しで逃げることができたのに。しぶしぶ席に座りなおした。
「せっかく私が話しかけているのに無視して逃げようとした挙句に、関わりたくないとは最低ね。今まで私が話しかけてきた女の子は一人としてそんな風に私から逃げようなんて子いなかったのに。でも、そんなところもかわいくて私は好きよ。それにさっきから気になっていたけれど、その敬語での話し方も素敵だわ。」
私に聞こえるぐらいの小声で西園寺さんは話しかけてきた。
「まだ大学は始まったばかりだし。気長にいきましょう。朔夜さん。」
最後にぼそっとこうつぶやかれた。面倒くさい大学生活の幕開けであった。
「先生方がまだいらっしゃらなくてよかったわ。ねえ、朔夜さん。」
教室ではほかの学生に話しかけるだろう。これで私のことを放っておいてくれると思い、席を西園寺さんから離して座ろうとしたのだが、相手はまだ私に用があるらしい。いい加減、面倒くさくなったので無視することにした。そして、教室をぐるりと見まわし、これから4年間を共にする仲間を観察する。
同じ学科とはいえ、すでにグループがいくつかに分かれていた。茶色などの明るい髪の色に染めた化粧の派手なグループ。黒髪で地味目な服装の真面目でおとなしそうなグループ。その中間のグループ。私は中間のグループに入りたいなあ。可もなく不可もなく、平穏に過ごしたい。
「遅いぞ、桜華。何やってたんだ。」
突然、男子学生が目の前に現れた。これまたイケメンだ。身長が高く、こちらは真っ黒の髪に真っ黒の瞳。瞳は切れ長で鼻筋はすっと通っている。服装は大学の入学式にふさわしい黒のスーツをピッタリと着こなしている。この男性もスタイルがいい。足が長いし、スーツの上から見ても筋肉が程よくついていそうなことがわかる。西園寺さんと知り合いなのだろう。美男美女が並ぶとやはり絵になる。
彼女たちの容姿に見惚れて、逃げるのが遅れてしまった。
「ああ、ごめんごめん。この子のことが気に入っちゃってね、いろいろ話していたから遅れてしまったの。静流も朔夜のこと気に入ると思うよ。」
なんてことを言うのだろう。まるで私と話していて遅れてしまったと言っているようなものだ。話しかけてきたのはそっちで、しかも一方的に話していただけで、私は一言しか話していない。
「……。」
静流と呼ばれたイケメン学生が、私をじっと見つめてくる。ただでさえ、美男美女に囲まれて居心地が悪いのに、こうもじっと見つめられるとさらに悪い。加えて周囲の視線も針のように刺さっている。とりあえず何か話してみなくては。
「ええと。これから4年間同じ学科同士よろしくお願いします。それにしても西園寺さんもあなたも美男美女で何ともうらやましい……。性格は別として。」
思ったことを口に出してしまった。だがしかし、仕方のないことだ。人間、とっさに口から出る言葉は大抵の場合、心の声だと思う。おそらく今回もそういうことだろう。
「ふうん。確かになかなか面白そうな子ではあるが、そこまで気に入るほどか。」
イケメンにおもしろそうな子と言われてしまった。そして、私のことを値踏みするようにさらに見つめてくる。居心地悪くて仕方ない。だが、イケメンのいうことは間違っている。これでも私は周囲からおもしろみのない子として通っているのだ。それはそれでよいことではないが、おもしろい子認定されるのも嫌だ。
「おもしろくはありません。だいたい、あなたと西園寺さんの関係はなんですか。私はあなたたちと初対面のはずですが。」
大事なことを言ってやった。そもそも、初対面の相手に気に入る、おもしろいという発言はいささかおかしいと思う。すると突然、西園寺さんが私の発言を無視してまたもとんでも発言をかましだした。
「よく見るとあなた、可愛い顔よね。決めた、これは運命の出会い。今日から私と一緒に行動しなさい。」
「はあ……。」
意味不明だ。私が返事をする間も無く、勝手に彼女の中で話は自己完結してしまったらしい。うんうんと満足げに頷き、隣のイケメンに同意を促している。再度言おう。全くもって意味不明だ。何か言わなくてはと思い、口を開けかけたのだが。
「桜華、お前いい加減にしろよ。可愛い女見つけてはおもちゃにしやがって、これで何人目だよ。全くこりないな、バカだろ。」
私のほかにも同じような目にあった少女がいるのか。この残念系美人の餌食になった少女が何人も存在するとは。いままでの行動から鑑みれば、イケメンが言っていることはあながち嘘ではないのかもしれない。想像が容易にできてしまうところが恐ろしい。
「おもちゃとは失礼な。おもちゃよりよっぽど楽しいわよ。可愛い声で泣くし、言うこと聞いてくれるし、イヌネコのペットの類より役に立つし。」
なんとまあ、人間がおもちゃやペットと同類とは恐れ入った。イケメンの言うとおりだったとは。自分は神か何かと勘違いしているのか、それとも頭がいかれているのか。どちらにしろ、やはり関わるとろくなことがなさそうだ。
「そのようなことはほかの誰かにしてください。私は平穏な大学生活を送りたいのです。では、これ以上は話しかけないでもらいたい。そして私に関わらないで頂きたい。」
訣別の言葉を述べ、颯爽と席を離れようと席を立ったちょうどその時、教授陣が教室に現れ、席を離れることは許されなかった。
「君、席を立ってどこに行くつもりかね。」
入学式早々、教授に目をつけられてしまった。平穏な大学生活はどこに行った。もう少しで逃げることができたのに。しぶしぶ席に座りなおした。
「せっかく私が話しかけているのに無視して逃げようとした挙句に、関わりたくないとは最低ね。今まで私が話しかけてきた女の子は一人としてそんな風に私から逃げようなんて子いなかったのに。でも、そんなところもかわいくて私は好きよ。それにさっきから気になっていたけれど、その敬語での話し方も素敵だわ。」
私に聞こえるぐらいの小声で西園寺さんは話しかけてきた。
「まだ大学は始まったばかりだし。気長にいきましょう。朔夜さん。」
最後にぼそっとこうつぶやかれた。面倒くさい大学生活の幕開けであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
朔夜蒼紗の大学生活④~別れを惜しむ狼は鬼と対峙する~
折原さゆみ
キャラ文芸
朔夜蒼紗(さくやあおさ)はこの春、大学2年生となった。今年こそは、平和な日常を過ごしたいと意気込むが、彼女にそんな日常は訪れることはない。
「蒼紗さん、私のサークルに新しい子が入りました!」
「鬼崎美瑠(おにざきみる)です」
「蒼紗さん、僕も大学に入学することになりました、七尾(ななお)です!」
大学2年生となり、新入生が入学するのは当然だ。しかし、個性豊かな面々が蒼紗の周りに集まってくる。彼女と一緒に居る綾崎の所属するサークルに入った謎の新入生。蒼紗に興味を持っているようで。
さらには、春休みに出会った、九尾(きゅうび)の元眷属のケモミミ少年もなぜか、大学に通うことになっていた。
「紅犬史(くれないけんし)です。よろしくお願いします」
蒼紗がアルバイトをしている塾にも新しい生徒が入ってきた。この塾にも今年も興味深い生徒が入学してきて。
さらには、彼女の家に居候している狼貴(こうき)君と翼(つばさ)君を狙う輩も現れて。アルバイト先の上司、死神の車坂(くるまざか)の様子もおかしいようだ。
大学2年生になっても、彼女の日常は平穏とは言い難いが、今回はどのような騒動に巻き込まれるのだろうか。
朔夜蒼紗の大学生活4作目になります。引き続き、朔夜蒼紗たちをよろしくお願いします。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
朔夜蒼紗の大学生活⑤~幼馴染は彼女の幸せを願う~
折原さゆみ
キャラ文芸
朔夜蒼紗(さくやあおさ)は、大学で自分の知り合いによく似た女性を見かけた。しかし、自分の知り合いが大学にいるわけがない。他人の空似だと思っていたら、その女性が蒼紗のアルバイト先の塾にやってくる。どうやら、蒼紗と同じように塾講師のアルバイトとして採用されたようだ。
「向井陽菜(むかいひな)です。よろしくお願いします」
当然、知り合いの名前とは違ったが、見れば見るほど、知り合いに似ていた。いったい蒼紗の知り合い、「荒川結女(あらかわゆめ)に似たこの女性は何者なのだろうか。
塾のアルバイトをしていた蒼紗だが、雨水に新たなバイトをしてみないかと誘われる。どうやら、この町に能力者たちが加入する組合なるものがあるらしい。そこで一緒に働かないかということで、蒼紗は組合のもとに足を運ぶ。そこで待ち受けていたのは……。
「この写真の女性って、もしかして」
組合でのアルバイト面接で見事採用された蒼紗は、さっそく仕事を任される。人探しをするという内容だったが、探すことになったのはまさかの人物だった。
大学二年生になっても、朔夜蒼紗に平穏な大学生活は訪れないようだ。
※朔夜蒼紗の大学生活シリーズ第5作目となります。
ぜひ、1作目から呼んでいただけると嬉しいです。
※シリーズ6作目の投稿を始めました。続編もぜひ、お楽しみください。
朔夜蒼紗の大学生活⓺(サブタイトル、あらすじ考案中)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/16490205/439843413
Halloween Corps! -ハロウィンコープス-
詩月 七夜
キャラ文芸
この世とあの世の狭間にあるという異世界…「幽世(かくりょ)」
そこは、人間を餌とする怪物達が棲む世界
その「幽世」から這い出し「掟」に背き、人に仇成す怪物達を人知れず退治する集団があった
その名を『Halloween Corps(ハロウィンコープス)』!
人狼、フランケンシュタインの怪物、吸血鬼、魔女…個性的かつ実力派の怪物娘が多数登場!
闇を討つのは闇
魔を狩るのは魔
さりとて、人の世を守る義理はなし
ただ「掟」を守るが使命
今宵も“夜の住人(ナイトストーカー)”達の爪牙が、深い闇夜を切り裂く…!
■表紙イラスト作成:魔人様(SKIMAにて依頼:https://skima.jp/profile?id=10298)
朔夜蒼紗の大学生活③~気まぐれ狐は人々を翻弄する~
折原さゆみ
キャラ文芸
朔夜蒼紗(さくやあおさ)は、今日も平穏な大学生活を望んでいた。しかし、彼女のもとに平穏な生活が訪れることはない。
「私、この度、彼氏ができました!」ジャスミンの唐突な彼氏宣言。
「先生は、サンタを信じている?」
「受験の悪魔がいるんだって」塾での怪しい噂。
塾に来た新しい生徒に、西園寺家次期当主を名乗る、謎の人物。怪しい人物だらけで、朔夜蒼紗の周りは今日もとてもにぎやかだ。
「まったく、お主は面白いのう」
朔夜蒼紗は今回、どのような騒動に巻き込まれるのだろうか。始まりは狐。狐は人々を今日も翻弄していく。
※朔夜蒼紗の大学生活シリーズ三作目となります。
朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/16490205/842219471
朔夜蒼紗の大学生活②~死神は退屈を持て余す~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/16490205/579224814
三作目もどうぞよろしくお願いします。
天使のスプライン
ひなこ
キャラ文芸
少女モネは自分が何者かは知らない。だが時間を超越して、どの年代のどの時刻にも出入り可能だ。
様々な人々の一生を、部屋にあるファイルから把握できる。
モネの使命は、不遇な人生を終えた人物の元へ出向き運命を変えることだ。モネの武器である、スプライン(運命曲線)によって。相棒はオウム姿のカノン。口は悪いが、モネを叱咤する指南役でもある。
ーでも私はタイムマシンのような、局所的に未来を変えるやり方では救わない。
ここではどんな時間も本の一ページのようにいつでもどの順でも取り出せる。
根本的な原因が起きた時刻、あなた方の運命を変えうる時間の結び目がある。
そこに心身ともに戻り、別の道を歩んで下さい。
将来を左右する大きな決定を無事乗り越えて、今後を良いものにできるようー
モネは持ち前のコミュ力、行動力でより良い未来へと引っ張ろうと頑張る。
そしてなぜ、自分はこんなことをしているのか?
モネが会いに行く人々には、隠れたある共通点があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる