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第3章 いじめの代償~クラスメイトの無視~

1(21)バイオレット③

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 常々面倒だと思っていた日直の仕事を転校生に押し付けてみた。彼女は疑問に思っていたようだが、特に何も言わなかった。日直の仕事をこなすため、学級日誌を職員室に取りに行った。

 日直の仕事は、基本的に男女一人ずつの二人で行うものだ。私の日直の相方はたまたまクラスの中でも人気の高い男子だった。彼は誰に対しても優しく、面倒見がよいからだろう。
                   
 そんな彼でも私の行動に関しては何も文句を言ってこない。聞くところによると、彼の家は妹が一人いるらしく、病弱で入退院を繰り返しているようだ。さらには父親を過労死で亡くしている。そのため、母親が一人で二人の子供を養っている状態と聞いている。

 彼はきっと私のうわさを聞いて、自分や家族に被害が及ぶことを恐れたのかもしれない。懸命な判断である。今までいじめてきた人間は、最終的に不登校になっている。
いじめを止めようとして私の行動に文句を言ってきた偽善者気取りの奴らには、父親に報告して、裏で手を回してもらった。本人に対して報復したが、それ以外にも彼らの両親の仕事を奪ったり、兄妹にも悪い噂を広めたりしていた。


 人間なんて強者と弱者、喰うものと喰われるもの、加害者と被害者、支配するものとされるものなど、二者択一の世界で、そのどちらかに必ず存在すると私は考えている。だからこそ、いじめを止めようとする人々の気持ちを私は理解できない。どう考えても私に勝てる見込みがないのに、下手をすれば自分が被害を受けるというのに、わざわざ弱いものを助けようと行動を起こす。

 私はそれを正義ではなく、本人の自己満足だと考えている。いわゆる偽善者を気取っているのだろう。そのためだけに自ら弱者に成り下がろうとしている。

「私、ぼくは弱いものを救おうとしている。いじめようとする奴らが悪であり、それを止めようとする自分はかっこいい。」

 想像はできるが、そんなことをするのはただのお人好しで、それこそ偽善者だ。実際に私に歯向かってきた人間は、自分の行動を後悔していることだろう。そういう無謀で阿呆な行動をしている奴を見ると、ついこてんぱんにしてやりたくなってしまい、やりすぎてしまう。




 話を戻そう。本来の日直であった私の相方はその人気の男子だった。初めはその男子にそのまま日直の仕事をしてもらおうと思っていたが、よくよく考えてみると、それではダメだということに気付いた。

 もし、私が転校性に仕事を押し付けていることがばれても、それ自体に問題はない。彼は私に逆らうことはないからだ。彼は私がいないところでは偽善者ぶりを発揮している。私が興味なく、放置していたいじめ対象者の面倒を見ているようだ。私以外がいじめをしていると、必死で止めようしているらしい。

 今回の日直の件で、彼をそのままにしてしまったら、彼はその偽善者ぶりを発揮して転校生を助けるだろう。悪いことに転校生は男受けしそうな容姿と性格をしていた。性格は猫を被っているのか、本当なのかわからないが、容姿と相まって、か弱い女子児童を演出している。

 そんな彼女を助け、彼女がはにかみながらお礼を言った日には、彼はすぐに彼女になびくだろう。女の勘が彼を日直にさせてはいけないと警告している。

 日直には要領が悪そうな男子をあてがうことにした。もし彼女になびいたとしても、大して影響がなさそうな人選だ。

 日直に関しては、転校生は何事もなく仕事を終えた。大してダメージを食らわせることはできなかったようだ。
 
 それならば、今度はクラスメイトに彼女を無視するように伝えた。彼女には精神的苦痛を味わってもらうことにしよう。

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