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第1章 いじめの代償~季節外れの転校生~
4(21)バイオレット①
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私の親は偉い人らしい。誰もかれもが父親に対してへっこらしている。私に対しても腫れものを扱うような対応をされる。それが嫌だった私は、そのストレスを発散させようとクラスの中にターゲットを決めてそいつで憂さを晴らすことにした。
私に逆らうクラスメイトはいなかった。いたとしても表面だって反論するほど愚か者はいない。私が一言父親に相談すれば、すぐにその子供は私に謝ってくる。そして私に従うようになる。それでも私に反抗する奴は私の前からいなくなる。突然転校するものや事故に遭って入院してしまう。そんなこんなで幼稚園、小学校と今まで自由にわがままし放題に遊んできた。
クラスメイトが私のことを陰でバイオレットと呼んでいるのは知っている。しかし、そのまま放っておいている。面と向かって言う勇気のない彼らのことなどさして興味がわかないのだ。
私は現状に退屈を感じている。私の言うことに逆らうものはいない、わがままし放題のこの状況で張り合いがない。しかし、だからといってこの日常が終わってほしいとは思わない。退屈だが、別に不満に思うことはない。
小学4年生の担任は典型的なくずだった。私の父親は先生にも影響を及ぼすことができるようで、今までの先生も私に対して特別扱いをしていた。とはいえ、建前上は私が悪いことをしたら、叱るふりをしていた。
普通、悪いことをした児童には説教をするのは当たり前だ。しかし、彼はそれをしなかった。さらには私がいじめた児童に対して、その子の両親がいじめだと訴えても我関せずといった態度を崩さなかった。いじめておきながら思うのも変なことだが、この担任はどうかしている。それ故に私は自由にストレスを発散することができたのだから別に良いのだが。
今までの担任は私がいじめをしていたら、ふりだけでも止めようとしていた。両親から訴えられたらとりあえずいじめを止めるよう働きかけますといったことを嘘でも話していた。
「いじめがあるか調べてみます。」
「いじめがなくなるよう対策を考えていきます。」
「クラスでいじめについて話し合っていきたいと思います。」
彼はそのような期待を持たせるようなことを一切言わなかった。
小学校5年生になった。今年の担任も去年と同じだった。
その担任が転校生を教室に連れてきたのはGW明けの月曜日だった。先週までは何も言っていなかったはずなのに、突然に朝のHRで転校生が来ましたと話し出した。
クラスはとても驚いた。そもそも私たちが住んでいる場所は田舎で人の出入りが少なく、そのため転校生というのは珍しい。そろそろ新しいストレス発散が欲しかったところなので、転校生がちょうどよいストレス発散相手であったなら、これ以上楽しいことはない。
他のクラスメイト同様、楽しみに待っていると、転校生が教室に入ってきた。転校生は水無月といった。小学生にしてはとても大人びているというのが第一印象で感じたことだ。すでに小学校を卒業していて、中学も高校も卒業して成人していそうな雰囲気だった。背丈は小学校5年生の平均くらいしかなく、どこからどう見ても小学生にしか見えないが、その体から醸し出す雰囲気は大人そのものだ。アンバランスな原因は何だろうかともっとよく観察する。
理由が判明した。彼女の瞳が、小学生がもつ純粋無垢な瞳とは正反対の暗く世間の汚いところを見てきた暗く、濁った瞳をしていた。きっとその瞳のせいで大人びて見えるのだ。いったい今までどんな人生を歩んできたのだろう。私は転校生に興味を持った。いじめるのは簡単だ。私がクラスメイトに指示すれば、簡単に実行される。しかし、すぐに壊してしまうのはもったいないと思った。まずはじっくり転校生の中身を調べていこう。それからいじめても遅くはない。
とはいえ、小学校に入ってから何人を不登校送りにしてきたことか。
わかっているのだ。私だって他人にそんなことをされたら、学校に行けなくなることは十分承知である。それでも私は私なりに人生を楽しく過ごしていきたいのだ。誰もが幸せに生きられることなんてありえない。私が父親によって周囲から腫れもの扱いされているのも、私がいじめて不登校になる児童がいることも、それぞれが考えて行動した結果だ。
さて、この転校生は何をクラスに運んでくれるのだろうか。もしかしたら、この転校生は私たちのクラスを破滅に導く悪魔かもしれない。それともこのクラスの天使で、誰もが楽しく過ごせるようなクラスに変えてくれるかもしれない。
そう思いながら、休み時間に彼女に殺到して質問しているクラスメイトを見ていた。彼女は気づいていないかもしれないが、転校前のことを思い出すと悲しいと言いながら、その実悲しいと思っていないことはバレバレだった。
「面白いおもちゃが手に入りそう。さて、これからどんな風に遊んでいけばより楽しく遊べるか考える必要があるわね。」
この転校生は過去に面白そうな経験をしていそうだ。これは話を聞いてみる必要がある。これからの学校生活が楽しみだ。
私に逆らうクラスメイトはいなかった。いたとしても表面だって反論するほど愚か者はいない。私が一言父親に相談すれば、すぐにその子供は私に謝ってくる。そして私に従うようになる。それでも私に反抗する奴は私の前からいなくなる。突然転校するものや事故に遭って入院してしまう。そんなこんなで幼稚園、小学校と今まで自由にわがままし放題に遊んできた。
クラスメイトが私のことを陰でバイオレットと呼んでいるのは知っている。しかし、そのまま放っておいている。面と向かって言う勇気のない彼らのことなどさして興味がわかないのだ。
私は現状に退屈を感じている。私の言うことに逆らうものはいない、わがままし放題のこの状況で張り合いがない。しかし、だからといってこの日常が終わってほしいとは思わない。退屈だが、別に不満に思うことはない。
小学4年生の担任は典型的なくずだった。私の父親は先生にも影響を及ぼすことができるようで、今までの先生も私に対して特別扱いをしていた。とはいえ、建前上は私が悪いことをしたら、叱るふりをしていた。
普通、悪いことをした児童には説教をするのは当たり前だ。しかし、彼はそれをしなかった。さらには私がいじめた児童に対して、その子の両親がいじめだと訴えても我関せずといった態度を崩さなかった。いじめておきながら思うのも変なことだが、この担任はどうかしている。それ故に私は自由にストレスを発散することができたのだから別に良いのだが。
今までの担任は私がいじめをしていたら、ふりだけでも止めようとしていた。両親から訴えられたらとりあえずいじめを止めるよう働きかけますといったことを嘘でも話していた。
「いじめがあるか調べてみます。」
「いじめがなくなるよう対策を考えていきます。」
「クラスでいじめについて話し合っていきたいと思います。」
彼はそのような期待を持たせるようなことを一切言わなかった。
小学校5年生になった。今年の担任も去年と同じだった。
その担任が転校生を教室に連れてきたのはGW明けの月曜日だった。先週までは何も言っていなかったはずなのに、突然に朝のHRで転校生が来ましたと話し出した。
クラスはとても驚いた。そもそも私たちが住んでいる場所は田舎で人の出入りが少なく、そのため転校生というのは珍しい。そろそろ新しいストレス発散が欲しかったところなので、転校生がちょうどよいストレス発散相手であったなら、これ以上楽しいことはない。
他のクラスメイト同様、楽しみに待っていると、転校生が教室に入ってきた。転校生は水無月といった。小学生にしてはとても大人びているというのが第一印象で感じたことだ。すでに小学校を卒業していて、中学も高校も卒業して成人していそうな雰囲気だった。背丈は小学校5年生の平均くらいしかなく、どこからどう見ても小学生にしか見えないが、その体から醸し出す雰囲気は大人そのものだ。アンバランスな原因は何だろうかともっとよく観察する。
理由が判明した。彼女の瞳が、小学生がもつ純粋無垢な瞳とは正反対の暗く世間の汚いところを見てきた暗く、濁った瞳をしていた。きっとその瞳のせいで大人びて見えるのだ。いったい今までどんな人生を歩んできたのだろう。私は転校生に興味を持った。いじめるのは簡単だ。私がクラスメイトに指示すれば、簡単に実行される。しかし、すぐに壊してしまうのはもったいないと思った。まずはじっくり転校生の中身を調べていこう。それからいじめても遅くはない。
とはいえ、小学校に入ってから何人を不登校送りにしてきたことか。
わかっているのだ。私だって他人にそんなことをされたら、学校に行けなくなることは十分承知である。それでも私は私なりに人生を楽しく過ごしていきたいのだ。誰もが幸せに生きられることなんてありえない。私が父親によって周囲から腫れもの扱いされているのも、私がいじめて不登校になる児童がいることも、それぞれが考えて行動した結果だ。
さて、この転校生は何をクラスに運んでくれるのだろうか。もしかしたら、この転校生は私たちのクラスを破滅に導く悪魔かもしれない。それともこのクラスの天使で、誰もが楽しく過ごせるようなクラスに変えてくれるかもしれない。
そう思いながら、休み時間に彼女に殺到して質問しているクラスメイトを見ていた。彼女は気づいていないかもしれないが、転校前のことを思い出すと悲しいと言いながら、その実悲しいと思っていないことはバレバレだった。
「面白いおもちゃが手に入りそう。さて、これからどんな風に遊んでいけばより楽しく遊べるか考える必要があるわね。」
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