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第一章 入学式

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「この子は、シラコというの。私たちの仕事を手伝ってくれる、パートナーみたいな存在よ」

『ふん、恋華や太志にあまり似ていないな』

 初めてシラコと引き合わされた時は、さすがに驚いた。家族三人で食事をしたり、団らんをしたりしているときに、家族以外の視線や気配を感じることがあった。美彩はてっきり幽霊が紛れ込んでいるのかと思っていた。その正体がまさか、白い大きなヘビだったとは思わなかった。

美彩は除霊師の娘として、仕事を手伝うようになった。

 高校生活の休日はほとんどが仕事の手伝いに費やされてしまった。両親の仕事を手伝うようになって、生活は一変した。


「でも、両親のせいで高橋とかに目をつけられたんだった」

 高校生活を振り返ると、苦い思い出がよみがえる。仕事柄、他人には見えない霊を払っているため、つい、クラスで霊に取り付かれていて不幸に見舞われている人を見ると、声をかけたくなってしまった。たまたま、高橋にも悪霊がとりついていた。それを取り除こうと、親切心から声をかけたのが失敗だった。

 自分に見えないのに、他人から、「あなたには悪霊がとりついているから祓ってあげます」と言われて、信じられる人はいないだろう。そのことに気づけなかったのは、美彩の人生経験の少なさだった。

 高橋は美彩の言葉を気味悪がり、クラスメイトに彼女の悪口を吹聴して回った。悪霊はさらに高橋の身に不幸を振りまいていく。

 自分が悪口を言われても、彼が不幸に見舞われ、最終的に悪霊に殺されてしまうのを防ぐため、除霊を行い、悪霊を浄化した。

 悪霊は、昔高橋が飼っていた犬が新たに犬を飼ったことで恨みを持ち、不幸を起こしていた。人間の場合は、降霊術を使って自らの身体に霊を乗っ取らせて未練を果たさせて成仏させるが、動物などの場合は除霊を行い、その後は浄化してしまうことが多い。

 結果として、美彩のクラスでの評判は最悪となった。それからというもの、美彩はなるべく、他人と目を合わせないようにすることにした。そして、人の背後を見ることもしないようにして生活した。

 高橋が男性だったこともあり、大学に入った今でも、男性を見るだけで鳥肌が立ってしまう。


 そこまで思い出し、気分が悪くなった美彩は、夕食まで時間があることを思い出し、ひと眠りすることにした。

 男性が苦手なのに、なぜか須見久瑠羽を見ても鳥肌が立たず、むしろ好意的に思えたのはなぜかと考えることはなかった。

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