53 / 59
11人類とスマホの共生のために
3
しおりを挟む
そうと分かれば、実験するのみ。池谷たちの研究班は考えた。しかし、人間の手にスマホを組み込むなど、正気の沙汰ではない。サイボーグ手術でもするつもりかと彼女の研究班の中に反対する者も現れた。
「では、自分にスマホを組み込んでみればいい。そして、自分が試してよかったら、他の人間も賛同して、研究はさらに発展するだろうと考えたわけだ」
『思えば、あの時にやめておけば、こんな事態にはならなかった』
「でも、実験はしてしまって成功したということですか?」
あやのが過去形で池谷という女性の過去を語っている。それに対して、池谷という女性も頷いている。ということは、過去に自分にスマホを組み込む手術をしてしまったということだ。紫陽は思わず、二人に問いかけてしまう。すみれは黙って話をじっと聞いていた。
「実験は成功した。手の神経とスマホの回路をつなげて、彼女とスマホは一体となった。その時はまだ、彼女だけの問題で、彼女だけがスマホに寄生されている状態だった」
スマホの寄生が今のように世界に広まることはなかった。一人だけ、池谷だけがスマホに寄生された状態だったわけである。それなのに、どうしてスマホの寄生がここまで世界中に広まってしまったのだろうか。一つのスマホだけで、世界中に寄生をするようなスマホが急速に広まるようには思えない。
「簡単な話だ。スマホと人間をつなげることができる特殊な人工知能を彼女が開発し、量産してしまったからだ」
疑問が顔に出ている紫陽だが、口に出すのははばかられた。それに気付いたあやのが説明を補足する。にわかには信じがたい内容の話に頭が混乱してしまう。
「自分がスマホとともに生活することができたのならば、問題はない。これを世界に広めることができたのなら、片手は使えなくなるが、それ以上のメリットが大きいと思った彼女は。すぐに研究班と協力して、人工知能が搭載されたスマホを開発することになり、成功した。そして、それは世界中で売られることになった」
『まあ、何事も副作用、デメリットがあることを私は失念していました』
「そう、それが我々の肥大化。および、人間の寿命を縮めるという、致命的な欠陥だった」
話はどんどん不穏な雰囲気を増していく。そして、どんどん、現在の状況まで戻りつつある。目の前の彼女のせいで、大勢の人間がスマホに寄生され、亡くなった。
「でも、そんな危険なスマホを売り出したのに、私たちがそれを知らずに買ってしまったのはどうしてですか?」
今まで黙って話を聞いていたすみれが口を開いた。紫陽も同じ疑問が頭に浮かび、質問しようか迷っていた。人間の手に寄生するかもしれない危険なスマホであるにもかかわらず、それを宣伝しなかったのはおかしい。自社の商品の性能をきちんと説明しないのは法律にも違反するのではないか。
「それに、そのスマホを買った人は当然として、それ以外の人もスマホに寄生される理由がわかりません」
「なるほど、その疑問は当然出てくると思っていた。本人から説明をさせた方がいいかもしれないな。どういうことなんだろうな、創造主様?」
すみれの質問の回答は池谷が対応することになった。
「では、自分にスマホを組み込んでみればいい。そして、自分が試してよかったら、他の人間も賛同して、研究はさらに発展するだろうと考えたわけだ」
『思えば、あの時にやめておけば、こんな事態にはならなかった』
「でも、実験はしてしまって成功したということですか?」
あやのが過去形で池谷という女性の過去を語っている。それに対して、池谷という女性も頷いている。ということは、過去に自分にスマホを組み込む手術をしてしまったということだ。紫陽は思わず、二人に問いかけてしまう。すみれは黙って話をじっと聞いていた。
「実験は成功した。手の神経とスマホの回路をつなげて、彼女とスマホは一体となった。その時はまだ、彼女だけの問題で、彼女だけがスマホに寄生されている状態だった」
スマホの寄生が今のように世界に広まることはなかった。一人だけ、池谷だけがスマホに寄生された状態だったわけである。それなのに、どうしてスマホの寄生がここまで世界中に広まってしまったのだろうか。一つのスマホだけで、世界中に寄生をするようなスマホが急速に広まるようには思えない。
「簡単な話だ。スマホと人間をつなげることができる特殊な人工知能を彼女が開発し、量産してしまったからだ」
疑問が顔に出ている紫陽だが、口に出すのははばかられた。それに気付いたあやのが説明を補足する。にわかには信じがたい内容の話に頭が混乱してしまう。
「自分がスマホとともに生活することができたのならば、問題はない。これを世界に広めることができたのなら、片手は使えなくなるが、それ以上のメリットが大きいと思った彼女は。すぐに研究班と協力して、人工知能が搭載されたスマホを開発することになり、成功した。そして、それは世界中で売られることになった」
『まあ、何事も副作用、デメリットがあることを私は失念していました』
「そう、それが我々の肥大化。および、人間の寿命を縮めるという、致命的な欠陥だった」
話はどんどん不穏な雰囲気を増していく。そして、どんどん、現在の状況まで戻りつつある。目の前の彼女のせいで、大勢の人間がスマホに寄生され、亡くなった。
「でも、そんな危険なスマホを売り出したのに、私たちがそれを知らずに買ってしまったのはどうしてですか?」
今まで黙って話を聞いていたすみれが口を開いた。紫陽も同じ疑問が頭に浮かび、質問しようか迷っていた。人間の手に寄生するかもしれない危険なスマホであるにもかかわらず、それを宣伝しなかったのはおかしい。自社の商品の性能をきちんと説明しないのは法律にも違反するのではないか。
「それに、そのスマホを買った人は当然として、それ以外の人もスマホに寄生される理由がわかりません」
「なるほど、その疑問は当然出てくると思っていた。本人から説明をさせた方がいいかもしれないな。どういうことなんだろうな、創造主様?」
すみれの質問の回答は池谷が対応することになった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

[完結]フレミングの法則 ~ 踊る赤髪の落ちこぼれ撃墜王 Dancing Maroon of the Scheduled Ace ~
勅使河原 俊盛
SF
「私の名前はフレミング、航空士官学校の3号学生よ。愛機はマルーンの最新鋭戦闘機AMF-75A。私の赤髪をモチーフに、おやっさんにキャンディ塗装仕上げにしてもらったの。お気に入りポイントはキルヒーのパーソナルカラー「アンティークゴールド」をアクセントに入れてるところ。AMF-75A(この子)はとってもいい子よ。機動制限装置(マヌーヴァリミッタ)を解除(オフ)しちゃえば、コブラだってクルピットだって自由自在。さっすが、推力偏向(スラスタードベクトル)ノズル付の大推力エンジンね。AMF-75A(この子)が『ピーキー』だとか『じゃじゃ馬(ウェイウォード』だなんて言う人もいるらしいけど、私に言わせればそんなことはないわ。だってAMF-75A(この子)は私が飛ばしてるんだから。そうそう、私達の第18小隊は『落ちこぼれ(スケジュールド)小隊』なんて呼ばれてるけど、いつか絶対『トップ小隊』に勝ってみせるわ。ね、キルヒー?」
輪廻転生AIー裏外山腐敗研(第一話 腐敗によって死にゆく人の研究・第二話 死んでいく力と生まれる力に対する第六感の作用)
Kazu Nagasawa
SF
人工知能AIが飛躍的な進歩をみせるなか、先々は人間の能力と差が無いようになるという見方があります。でも、人間には第六感という不思議な力があります。また霊魂や輪廻転生による蘇りが言い伝えられています。もしAIに第六感がそなわって人間がAIと一体化して蘇るとしたらどうなるのでしょう?! そんなことをテーマにして書いてみました。
おそらくAIは近い将来、コンピューターのレベルを超え、未知の生命体のような位置づけになると思います。つまり現在の能力に、動物のような運動機能とコミュニケーション能力が加われば長寿命型の生き物のようになるのでしょう。その存在を人間が脅威に感じるか否かは人間側にかかっているように思います。たぶん今のままでは悪いことに使われ、かなり危険ではないかと思っているのではないでしょうか。
一方、もう一つのテーマとしてこの作品でとりあげた人間の蘇生というテクノロジーはAI以上に危険だと言えます。たとえばスプーン一杯で何十万人もの致死量があると言われるボツリヌス細菌やキノコなどの神経毒は危険すぎて軍事用にも使うことが出来ません。もしこれをAIが代わりに行うと大変なことになります。わたしたちは先端技術の裏につねにリスクがあることを忘れてはならないのです。そして、このAIやバイオテクノロジーなどの共通点は開発したごく一部の人にしか本当の脅威が分らないということです。もし、この二つの脅威が融合することとなったとき、人間はいったいどうなるのでしょう・・・?
超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!
阿弥陀乃トンマージ
SF
若くして広大な銀河にその名を轟かす、超一流のヴィランの青年、ジンライ。
漆黒のパワードスーツに身を包み、幾つもの堅固な宇宙要塞を陥落させ、数多の屈強な種族を倒してきた、そのヴィランに課せられた新たな任務の目的地は、太陽系第三番惑星、地球。
広い銀河においては単なる辺境の惑星に過ぎないと思われた星を訪れた時、青年の数奇な運命が動き出す……。
一癖も二癖もある、常識外れのニューヒーロー、ここに誕生!

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
初恋フィギュアドール ~ 哀しみのドールたち
小原ききょう
SF
「人嫌いの僕は、通販で買った等身大AIフィギュアドールと、年上の女性に恋をした」 主人公の井村実は通販で等身大AIフィギュアドールを買った。 フィギュアドール作成時、自分の理想の思念を伝達する際、 もう一人の別の人間の思念がフィギュアドールに紛れ込んでしまう。 そして、フィギュアドールには二つの思念が混在してしまい、切ないストーリーが始まります。
主な登場人物
井村実(みのる)・・・30歳、サラリーマン
島本由美子 ・ ・・41歳 独身
フィギュアドール・・・イズミ
植村コウイチ ・・・主人公の友人
植村ルミ子・・・・ 母親ドール
サツキ ・・・・ ・ 国産B型ドール
エレナ・・・・・・ 国産A型ドール
ローズ ・・・・・ ・国産A型ドール
如月カオリ ・・・・ 新型A型ドール
ある日、5億を渡された。
ザクロ
キャラ文芸
ある日、5億を渡されたら、あなたならどうしますか?
ビンボー青年、矢崎進(やざきすすむ)は、働きづくめの毎日を変えたいと思っていた。そんなとき突然現れたのは、バイト先の社長、影山明(かげやまあかり)だった。
明は5億円の入ったスマホを渡しながら、好きに使っていいという。進は疑いながらも、そのスマホを受け取ることになる。
突然5億手に入れたことで変わる生活。変わる人間関係。そして明から次々と渡されてくる「明の仕事」
人生を変えるための物語は、唐突に始まった!?
小説家になろう、ノベルバでも更新中です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる