人類はスマホに寄生されました

折原さゆみ

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 数分後、紫陽たち兄妹はそろって頭を悩ませていた。すみれの相談内容が思ったより複雑で、紫陽は何もアドバイスできそうになかった。妹の相談内容は友達についてだった。

 彼女の友達がスマホに寄生されたようだ。しかし、それはこの世界で起こっている日常であり、手を切断する手術を受けるか、そのままスマホの成長に身を任せ、死を早めるかの二択である。本人は悩むだろうが、友達でしかないすみれにはどうすることもできない。相談内容はそのことではなく、友達に起きたその後の出来事についてだった。

「お前と手を合わせたら、スマホの成長が止まったというのは本当か?」

 にわかには信じがたい情報を聞いて、改めて妹に事実かどうか問い返す。

「たぶん、本当だと思う。もしかしたら、私の見間違いかもしれない。でも、私と手を合わせた友達のスマホは成長が止まっている。同じくらいの時期にスマホに寄生された他のクラスメイトのスマホは、だいぶ大きくなっている」

 同時期のクラスメイトを比較に出される。しかし、もっと詳しく話を聞く必要がある。もし、それが本当なら他の生徒がすみれを放っておくはずがない。

「いつ、どういう状況で手を合わせたんだ?」

「ええと、先週の金曜日の昼休みにスマホの話になって、すみれはスマホに寄生されていないんだねって言われて。それで、その後になぜか手の大きさについての話題で盛り上がったんだ」

 すみれがその時のことを思い出して、紫陽に話して聞かせる。たわいない話題で盛り上がった後、スマホに寄生されていない手を友達とすみれが合わせたそうだ。

「手を合わせたときは、私の手が小さくて笑われたの。話はそこで終わったんだけど、そうしたら」

 楽しそうに話していたすみれの表情が一変、険しいものになる。そして、クラスメイトに起きた悲劇を語りだす。

「月曜日になって、その友達以外の手を見たら……」

 スマホに寄生された人間は、スマホの肥大におびえて生活することになる。寄生されたスマホの成長速度は人によってばらつきがあるが、例外なく肥大化してしまう。

「その子以外の友達のスマホと、私が手を合わせた友達には明らかに大きさに差があった」

「だからと言って、お前が手を合わせたことと関係があると、どうして思ったんだ?」

 最初はすみれの話に驚いて、彼女の話を鵜呑みにしてしまったが、よく考えると、ただ手を合わせるだけでスマホの肥大化を止められるはずがない。

とはいえ、妹の状況と同じことがどこかで会ったような既視感を覚える。



「それは本当かもしれないぞ」

「電話は切ったはずだが」

「われらと同じ電子機器なら、簡単につなぐことができる。妹の話を聞かせてもらったが、それはお前らに面白い力があるからだ。それは、我らにとっても、非常に興味深く、人類との共生に欠かせないものかもしれない」

「だ、だれ。あやのさんの声に似てるけど」

 声の出どころを探ると、先ほどベッドの淵に置いていた携帯からだった。からの電話は、すみれが部屋に入る前に切ったはずだった。それなのに、声は携帯から聞こえてくる。慌てて携帯を開くと、彼女の名前が表示され、通話中となっていた。

「面白いというのは、お前にとってだが、オレ達にとっては重要なことだ。どういうことか説明してもらおうか」

「説明したいのはやまやまだが、やはり、直接話をしたい」

 すみれも含めて、三人で明日、紫陽の家で話を聞くことになった。

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