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4寄生される人、されない人
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「鷹崎君も知っていると思うけど、GW明けに高橋というクラスメイトの手から、スマホが離れなくなった。そのような現象が今、全国各地で目撃されている。いや、全世界で目撃されている。それで世界各国は、スマホを手から切り離す対処法を探しているみたい」
「それはさすがに知っている。でも、効果的な対処法はないんだろう?物理的に被害者とスマホの接合している手を切り落とすしか方法がない。そして、そうなると、被害者の手は使い物にならなくなる」
隼瀬が話し始めたが、その内容はすでに紫陽が知っていることだった。特に目新しい情報がなく、彼女が何のために紫陽の家に来たのかわからなくなった。
「今のところは、ね。スマホが手から離れないとか、現実には信じがたいけど、この目で見たのだから信じるしかない。スマホに寄生されたら、最悪自分の手が片方なくなる」
「だから、そんな話はオレだって、知っている!」
「でも、誰も彼もがスマホに寄生されるわけじゃない」
紫陽のいらだった様子を気にすることなく、隼瀬はマイペースに話を続ける。
「それがどうした」
「あの動画を鷹崎君はどう思う?私はあの動画がそのカギを握っていると考えているの」
全世界に動画流されて数日が経った。世界各国が動画の出どころを掴もうと躍起になっていた。そこに新たな動画配信されたのは、つい先日のことだった。
「全世界の皆さん、二度目の投稿となりました。私のことを覚えているでしょうか。私は今、彼女と生活を共にしています。スマートフォンという動けぬ身体をもつ、我らにとって、あなた方人間の身体はとてもうらやましい。それで、今回のお話ですが、これは我々にとっても、誤算というべき事態についてです。まあ、彼女の身体を見ていただければわかりやすい」
今回も前回と同じ女性が動画には映っていた。よく見ると、彼女の手にはタブレットが張り付いている。ただし、前回と違うのは、その大きさだった。それはタブレットにはしてはずいぶん大きく、片手で持つには大変な大きさで、両手で抱えて画面を見ることになりそうなほどだった。
「我々は、あなた方人間の手に寄生して、身体を乗っ取らせてもらっている。我々と運命共同体として生きられることを君たち人間は光栄に思うことだ。しかし、時間が経つと、このようなことになってしまうとは、我々も予想していなかった。そう、前回の動画と比較して欲しい。我々は、人間の身体から栄養を取り込み、肥大化してしまった。このままでは、肥大を続け、最終的に人間が我々の重さに耐えきれぬまで成長するだろう」
今回の動画では、スマホが人間の栄養を取り込み、肥大化するという内容で、すでに寄生された人間が悲鳴を上げることになった。動画に出ている女性をよく見ると、女性の手に収まっているスマホかタブレットらしき機械は、前回の動画より大きく成長したように見えた。
「もともとは、お前たち人間に作られた人工物。人間とともに命尽きるのも、我々の運命なのかもしれない。ああ、今回言いたかったことだが」
相変わらず、動画が聞こえてくる声は、機械を通した不気味な声で、女性は虚空を見つめ、正気を失っている。口は動いているが、自分の意志で話しているようには見えない。まるで、何かに操られているような感じだ。何かとは言っても、今回の場合は、操っている者は一つしかない。手に握られている黒い物体だろう。
自分たちが人工物であると発言したその声は、今回の動画で伝えたかった、本題を話し始めた。
「我々も、人間の誰構わず寄生するなどと言う、野蛮な真似をするつもりはない。そんなことをすれば、人類が滅亡してしまうことは明白。そこで我々が考えたのは、我々とともにいたいと願う人間の身に寄生することだ」
その後、言葉をいったん止め、沈黙が流れる。ここで動画が終わるかと思われたが、一分の沈黙ののち、話は再開される。
「我々とともにいることを願う人間という定義では、あまりにも曖昧過ぎる。ここでいう、人間は……」
動画を見ている人間はその後の言葉を聞き逃すまいと、スマホやパソコン、タブレットを凝視している様子が目に浮かぶ。紫陽もその動向を見逃すまいと動画にかじりついていた。
「……以上で、今回の動画は終わりだ。また、お前たち人間に話すべき内容が見つかり次第、動画を挙げることにしよう。せいぜい、我々との生活を楽しみたまえ」
「それはさすがに知っている。でも、効果的な対処法はないんだろう?物理的に被害者とスマホの接合している手を切り落とすしか方法がない。そして、そうなると、被害者の手は使い物にならなくなる」
隼瀬が話し始めたが、その内容はすでに紫陽が知っていることだった。特に目新しい情報がなく、彼女が何のために紫陽の家に来たのかわからなくなった。
「今のところは、ね。スマホが手から離れないとか、現実には信じがたいけど、この目で見たのだから信じるしかない。スマホに寄生されたら、最悪自分の手が片方なくなる」
「だから、そんな話はオレだって、知っている!」
「でも、誰も彼もがスマホに寄生されるわけじゃない」
紫陽のいらだった様子を気にすることなく、隼瀬はマイペースに話を続ける。
「それがどうした」
「あの動画を鷹崎君はどう思う?私はあの動画がそのカギを握っていると考えているの」
全世界に動画流されて数日が経った。世界各国が動画の出どころを掴もうと躍起になっていた。そこに新たな動画配信されたのは、つい先日のことだった。
「全世界の皆さん、二度目の投稿となりました。私のことを覚えているでしょうか。私は今、彼女と生活を共にしています。スマートフォンという動けぬ身体をもつ、我らにとって、あなた方人間の身体はとてもうらやましい。それで、今回のお話ですが、これは我々にとっても、誤算というべき事態についてです。まあ、彼女の身体を見ていただければわかりやすい」
今回も前回と同じ女性が動画には映っていた。よく見ると、彼女の手にはタブレットが張り付いている。ただし、前回と違うのは、その大きさだった。それはタブレットにはしてはずいぶん大きく、片手で持つには大変な大きさで、両手で抱えて画面を見ることになりそうなほどだった。
「我々は、あなた方人間の手に寄生して、身体を乗っ取らせてもらっている。我々と運命共同体として生きられることを君たち人間は光栄に思うことだ。しかし、時間が経つと、このようなことになってしまうとは、我々も予想していなかった。そう、前回の動画と比較して欲しい。我々は、人間の身体から栄養を取り込み、肥大化してしまった。このままでは、肥大を続け、最終的に人間が我々の重さに耐えきれぬまで成長するだろう」
今回の動画では、スマホが人間の栄養を取り込み、肥大化するという内容で、すでに寄生された人間が悲鳴を上げることになった。動画に出ている女性をよく見ると、女性の手に収まっているスマホかタブレットらしき機械は、前回の動画より大きく成長したように見えた。
「もともとは、お前たち人間に作られた人工物。人間とともに命尽きるのも、我々の運命なのかもしれない。ああ、今回言いたかったことだが」
相変わらず、動画が聞こえてくる声は、機械を通した不気味な声で、女性は虚空を見つめ、正気を失っている。口は動いているが、自分の意志で話しているようには見えない。まるで、何かに操られているような感じだ。何かとは言っても、今回の場合は、操っている者は一つしかない。手に握られている黒い物体だろう。
自分たちが人工物であると発言したその声は、今回の動画で伝えたかった、本題を話し始めた。
「我々も、人間の誰構わず寄生するなどと言う、野蛮な真似をするつもりはない。そんなことをすれば、人類が滅亡してしまうことは明白。そこで我々が考えたのは、我々とともにいたいと願う人間の身に寄生することだ」
その後、言葉をいったん止め、沈黙が流れる。ここで動画が終わるかと思われたが、一分の沈黙ののち、話は再開される。
「我々とともにいることを願う人間という定義では、あまりにも曖昧過ぎる。ここでいう、人間は……」
動画を見ている人間はその後の言葉を聞き逃すまいと、スマホやパソコン、タブレットを凝視している様子が目に浮かぶ。紫陽もその動向を見逃すまいと動画にかじりついていた。
「……以上で、今回の動画は終わりだ。また、お前たち人間に話すべき内容が見つかり次第、動画を挙げることにしよう。せいぜい、我々との生活を楽しみたまえ」
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