16 / 59
3スマホ
1
しおりを挟む
『全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのは、ほかならぬ君たち人間なのだから』
そんなメッセージとともに、ある動画がGW明けの次の日、昼の正午きっかりに、全世界に配信された。
正午に突然、全世界のすべてのスマートフォン、パソコンが何者かに乗っ取られた。乗っ取られたスマホやパソコンは、強制的に無料動画サイト『ウィーチューブ』の画面を開き始める。
紫陽はスマホを持っていなかったので、その動画はクラスメイトのスマホを覗き込む形で見ることになった。
4時限目終了のチャイムが鳴った時のことだ。チャイムと同時に、クラスメイトのスマホの着信音が教室中に響き渡る。先生にばれないよう、スマホをマナーモードにしている者が多いはずなのに、この時はなぜか、いろいろな着信音が教室に鳴り響いた。それに連動してバイブの振動音も聞こえた。
今まで静かだった空間が一斉に奏でるスマホの着信音、バイブレーション。クラスは一気に興奮状態となる。
たまたま、紫陽のクラスの4時限目の授業は古典であり、5分前に授業が終わったので、教室に教師はいなかった。スマホの音について注意するものはいなかった。
クラスメイトは一斉に自分のスマホを確認する。そして、ある動画がトップ画面に現れた。
動画に映って話しているのは、どこかのTV局のアナウンサーの女性に似ていた。彼女の目の前には机が置かれ、どこかのスタジオで撮影されているようだった。
女性の顔色は青ざめていた。奇妙なことに、女性の口から言葉は発せられているようだが、口から声が発せられているのではなく、まるで、機械音がスマホから出ているような感じだった。
動画に映っているのは、女性一人のみだった。彼女の片手には、スマホのようなものが手に収まっていた。ただし、通常のスマホより大きく、ハードカバーの小説並みの大きさに見える。スマホというより、大きいパッドサイズくらいともいえた。
『全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのは、ほかならぬ君たち人間なのだから』
『手始めに、昨日から我々スマホは、まず人間の手に寄生することにした。君たちは手を通して、我々とつながることになる』
『我々は君たち人間を糧に成長する。手を切り離しても構わないが、そうなると生活が不便だろう?君たち人間は、我々と生きる道を選ぶことになるだろう』
動画を見終わった人々は思った。これは人間のだれかのいたずらであり、スマホが意思を持って人類に寄生するなど、そんなでたらめなことがあるわけがない、と。
そんな人々との思いとは裏腹に、スマホが手から離れないという事例はその後も相次いだ。病院は常にスマホを片手に握りしめている患者や、自ら取り外して血まみれの手をさらした患者たちであふれかえっていた。
紫陽のクラスメイトもどんどんスマホが手から離れなくなっていた、いわゆるスマホに寄生されているクラスメイトが増えて、週末になると、紫陽と隼瀬あきら以外のクラスメイトは片手を包帯で覆っているか、スマホを握りしめているという異常な状況になっていた。
紫陽の幼馴染のあやのは、GW明けの次の日からずっと休み続けていた。
そんなメッセージとともに、ある動画がGW明けの次の日、昼の正午きっかりに、全世界に配信された。
正午に突然、全世界のすべてのスマートフォン、パソコンが何者かに乗っ取られた。乗っ取られたスマホやパソコンは、強制的に無料動画サイト『ウィーチューブ』の画面を開き始める。
紫陽はスマホを持っていなかったので、その動画はクラスメイトのスマホを覗き込む形で見ることになった。
4時限目終了のチャイムが鳴った時のことだ。チャイムと同時に、クラスメイトのスマホの着信音が教室中に響き渡る。先生にばれないよう、スマホをマナーモードにしている者が多いはずなのに、この時はなぜか、いろいろな着信音が教室に鳴り響いた。それに連動してバイブの振動音も聞こえた。
今まで静かだった空間が一斉に奏でるスマホの着信音、バイブレーション。クラスは一気に興奮状態となる。
たまたま、紫陽のクラスの4時限目の授業は古典であり、5分前に授業が終わったので、教室に教師はいなかった。スマホの音について注意するものはいなかった。
クラスメイトは一斉に自分のスマホを確認する。そして、ある動画がトップ画面に現れた。
動画に映って話しているのは、どこかのTV局のアナウンサーの女性に似ていた。彼女の目の前には机が置かれ、どこかのスタジオで撮影されているようだった。
女性の顔色は青ざめていた。奇妙なことに、女性の口から言葉は発せられているようだが、口から声が発せられているのではなく、まるで、機械音がスマホから出ているような感じだった。
動画に映っているのは、女性一人のみだった。彼女の片手には、スマホのようなものが手に収まっていた。ただし、通常のスマホより大きく、ハードカバーの小説並みの大きさに見える。スマホというより、大きいパッドサイズくらいともいえた。
『全世界の人間に告げる。我々は本日をもって、人間と同様の生活をすることに決めた。そのために、我々は人間諸君に寄生することにした。君たちは私たちに身体を提供してもらうことになる。拒否権は与えられない。そもそも、我々に意志を与えたのは、ほかならぬ君たち人間なのだから』
『手始めに、昨日から我々スマホは、まず人間の手に寄生することにした。君たちは手を通して、我々とつながることになる』
『我々は君たち人間を糧に成長する。手を切り離しても構わないが、そうなると生活が不便だろう?君たち人間は、我々と生きる道を選ぶことになるだろう』
動画を見終わった人々は思った。これは人間のだれかのいたずらであり、スマホが意思を持って人類に寄生するなど、そんなでたらめなことがあるわけがない、と。
そんな人々との思いとは裏腹に、スマホが手から離れないという事例はその後も相次いだ。病院は常にスマホを片手に握りしめている患者や、自ら取り外して血まみれの手をさらした患者たちであふれかえっていた。
紫陽のクラスメイトもどんどんスマホが手から離れなくなっていた、いわゆるスマホに寄生されているクラスメイトが増えて、週末になると、紫陽と隼瀬あきら以外のクラスメイトは片手を包帯で覆っているか、スマホを握りしめているという異常な状況になっていた。
紫陽の幼馴染のあやのは、GW明けの次の日からずっと休み続けていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
深淵から来る者たち
zip7894
SF
火星周回軌道で建造中の巨大ステーション・アビスゲート。
それは火星の古代遺跡で発見された未知のテクノロジーを利用した星間移動用のシステムだった。
航宙艦キリシマは月で建造されたアビスゲート用のハイパー核融合炉を輸送する輸送船の護衛任務につく。
月の演習に参加していたパイロットのフェルミナ・ハーカーは航宙艦キリシマの航空部隊にスカウトされ護衛任務に参加する事になった。
そんな中、アビスゲートのワームホールテストと同時に月と地球半球に広範囲の電子障害が発生したが……
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
銀河皇帝のいない八月
沙月Q
SF
女子高生が銀河皇帝に?
一夏の宇宙冒険を描く青春スペースオペラ。
宇宙を支配する銀河帝国が地球に襲来。
軍団を率いる銀河皇帝は堅固なシールドに守られていたが、何故か弓道部員の女子高生、遠藤アサトが放った一本の矢により射殺いころされてしまう。
しかも〈法典〉の定めによってアサトが皇位継承者たる権利を得たことで帝国は騒然となる。
皇帝を守る〈メタトルーパー〉の少年ネープと共に、即位のため銀河帝国へ向かったアサトは、皇帝一族の本拠地である惑星〈鏡夢カガム〉に辿り着く。
そこにはアサトの即位を阻まんとする皇帝の姉、レディ・ユリイラが待ち受けていた。
果たしてアサトは銀河皇帝の座に着くことが出来るのか?
そして、全ての鍵を握る謎の鉱物生命体〈星百合スター・リリィ〉とは?

第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる