朔夜蒼紗の大学生活⑤~幼馴染は彼女の幸せを願う~

折原さゆみ

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24私の身近な人物が

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「それで、今度の日曜日に、自分の幼馴染かもしれない相手の家に行くことになったと」

「そうです」

 家に帰って、夕食後、リビングで向井さんのひいおばあさんに会う約束を取り付けたことを九尾に話すと、急に機嫌が悪くなってしまった。狐の尻尾がふさふさと揺れている。いつみても、美少年の頭にケモ耳、お尻に尻尾は愛くるしくて癒される。たとえそれが不機嫌そうな表情でも。

「お前はバカだな。もし、会ったとして、本当にお前が幼馴染だと気づかれたらどうするつもりだ?」

「僕も会うことには反対です。その女の人って、雨水さんのとこの組合で捜索依頼が出されている女性なんですよね?そんないわくありげな女性と会っているとばれたら、やばくないですか」

「お前と接点があるやつを探している組合からすると、会っているのがばれたらやばいとは思う」

 九尾の近くには翼君と狼貴君の隣に居て、一緒に私の話を聞いていたが、二人にも向井さんのひいおばあさんに会うことを反対されてしまう。だとしても、私には一つ、確かめたいことがあった。

「なにもただ向こうが私に会いたいから会うっていうわけではないです。ちゃんと会うのには理由があります!」

 なおも不審げな視線を向けてくるケモミミ美少年三人組に、きちんと理由を説明することにした。


「夢、か。蒼紗が見る夢は予知夢というだったな。その夢にその女が出てきたというのか」

「夢のことがあるのなら、もっと早く言ってくださいよ。夢では結局、その女の人と会って、何を話したんですか?」
「それがわかれば、対処しようがある」

 九尾は急に考え込むように顎に手を当てていた。他の二人は興味があるのか、夢の詳しい内容を聞きたそうに上目遣いで私を見つめてくる。ウサギ耳と狼のケモミミの生えた美少年に見つめられていると、妙な気分になってくる。

 さらにはそのままぐいぐいと詰め寄ってくるケモミミ美少年。ものすごい魅力的な状況ではあるが、夢は短くてあまり話す内容はない。

「期待しているところ悪いんですけど、夢の中では私、彼女と少し会話しただけで、肝心な彼女の能力はわからなくて」

 まるで、能力の部分にだけモザイクがかけられたかのように、不自然に言葉が聞き取れなかった。それもまた、彼女の能力の一つなのだろうか。

「何か私に忠告しているような気がしたのですが、何だったのかいまいちわからなくて」

 でも、直感的にその忠告は受け入れられない気がした。

「彼女は幼馴染がそのまま年を取ったかのような容姿でした。私も順調に年を取っていれば、あんな感じに年を取っていたのでしょうか」

 今更そんなことを考える意味はないが、それでも自分の老いた姿を想像する時もある。



「ところで、ジャスミンさんなどは一緒に行くとか言わなかったのですか?」

 考え事をしていたら、突然、翼君がジャスミンのことを口にする。そういえば、今日はどうにも挙動不審だった。いつもの堂々とした態度が嘘のように、私と視線を合わせないようにしていた。綾崎さんも同様に挙動不審で、二人は私に隠し事をしているかのようだった。

「ジャスミンと綾崎さんも一緒に向井さんの家に行くことになっています。とはいえ、二人とも、今朝大学で会った時にいつもと違う感じで、何か私に隠し事をしているかのようでした」

 ジャスミンのことを話題に出され、もう一人の大学の友人、綾崎さんのことも頭に浮かぶ。二人は私のことが好きすぎる。自意識過剰ともいえる発言になるが、本当のことだ。そんな二人が私に隠し事といい度胸である。

「お主も言うようになったな。自分のことが好きすぎる女たち、か。まあ、事実ではある」

「確かに、彼女たちの蒼紗さんに対する執着というか愛はすごいものを感じます。あれ、だとしたら、彼女たちは実は危険に晒されている可能性が」

「もしかしたら、そいつらの方に、何か動きがあった可能性が」

「ふむ。蛇娘に関しては心配ないと思うが、もう一人はやばいかもしれないな」

 私の家に居候しているケモミミ美少年三人は真剣な顔をして何やら、私の友人たちの身に何か起こっているのか話し始めた。

「それっていったい」


「ねえ、大ニューズだよー!」

 私の発言は途中で遮られた。突然、目の前に白い煙が立ち込めたと思ったら、新たなケモミミ美少年が現れた。

「な、七尾。いきなりどうしたんですか?」

「面白いことを聞いたから、早く伝えたくって」

「ふん、どうせこのタイミングということは、蒼紗の連れのことだろう?我たちもその可能性を話していたのだ」

「ドンピシャなタイミングというのが気味悪いですね」

「盗み聞きでもしていたかと思うほどだ」


「ピンポーン」

 そうこうしているうちに、玄関でインターホンが鳴らされる。さすがにだれが来たのかは予想できた。目の前に七尾がいるとなると、玄関にいるのは雨水君で間違いないだろう。

「私、玄関の外にいる雨水君を迎えに行ってきますね」

「それがいいだろうな。だいぶ焦っているようだ。感情が高まって、この地帯一体大雨警報が出ているらしい」

 なぜか、私のスマホを片手に天気予報を見始めた九尾にあきれるが、彼の言葉に嘘はない。突然、雨がものすごい勢いで降り出した。もともと、雨が降っていたのだが、ここにきて猛烈な勢いで降り始めた。窓をたたきつけるようなひどい雨に、慌てて私は玄関に向かった。

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