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8面接を終えて
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「ええと、どうしてあなたがこちらに?」
「何をとぼけているんだい?僕が君たちを見ていたことは知っているはずだ。それにしても」
仕方なく席について、部屋を出るタイミングをうかがっていると、雨水君が男に質問する。見ていたとはどういうことだろうか。ここまで来た道のりで監視されていた記憶はない。少なくとも、人間の視線は感じなかった。男は30代くらいで、真っ黒な髪に真っ黒な瞳が印象的だった。服装も上下ともに黒い装いで、これから夏だというのに暑くないのだろうかという格好をしていた。
どのように男に監視されていたのか考えている間に、男は私に距離を詰めてきた。それに気づいた時には、顔がだいぶ近づいていた。
『近いです。離れてください!』
他人に不用意に近づかれるのは誰でも不愉快なものである。それが今日初対面の謎の男ならなおさら気分が悪くなる。無意識に言霊の能力を使ってしまったとしても、仕方のないことだろう。
言霊の能力は、文字通り言葉で相手のことを従わせる能力である。発動条件はそこまで厳しいものではなく、相手の目を見て言葉を発するだけで能力は発動する。発動すると、私の瞳は金色に輝き、対象者と私の周りが同じく金色に輝くようだ。能力使用時の自分を見ることはできないので、これは周りからの言葉である。
つい、言霊の能力を使ってしまった。今、私の瞳は金色に輝き、男と自分の周りは金色に輝いているだろう。男は私から離れ、ドアから反対の窓辺まで後退した。
「実際に見ると、えげつない能力だな」
「素晴らしい!」
「これがあの狐が魅了された力……」
さて、これからどうしようか。能力については、すでに玄田という代表には話しているので、怪しまれることはない。とはいえ、実際に能力を使ってしまったのはまずい気がした。その証拠に、部屋に居た三人の男が興味津々に私を見つめてくる。先ほど能力を使って追い払った男もそこには含まれていた。
「では、私はこの後、用事がありますので失礼します」
このままここに居たら、何を聞かれるかわかったものではない。何とか顔に笑顔を張り付けて、その場を立ち去ろうとしたが、今度は私の行き先を阻まれることはなかった。つい、部屋のドアで立ち止まり、部屋の中を確認すると、何やら真剣な顔をした男たち二人の姿があった。
「オレも朔夜についていくよ。構わないだろう?」
「あ、あまり私に近づかないでください」
「わかっている」
そこに雨水君の姿が見当たらないと思っていたら、隣で彼の声が聞こえた。先ほどの男のことを考えてしまい、身構えていることがばれてしまったのか、苦笑された。
とりあえず、代表との面接は果たしたので、私たちはビルを出て、九尾たちと合流することにした。私たちの後を追ってくる者はいなかった。
「はあ、まったくあなたたちはのんきなものですね」
組合のビルを出た私たちは、お腹が減ったので、組合のビル近くのファミレスに入った。そこで、よく見知った顔を見つけて思わずため息が出てしまった。
九尾たちの姿を見つけた私たちは店員に同席する旨を伝え、彼らの席を案内してもらった。どうやら、私たちを待っている間に食事をしていたらしい。本来、彼らは人間ではないので、食事をする必要はない。とはいえ、なぜか人間の食事をしたがる。そういえば、私たちが面接に行くときにお腹が減ったと言っていたことを思い出す。文句を言いたい気持ちをぐっと抑え込んで、今のこの状況に対する説明を求める。
「ふぇつふぇいとふぃふぁれても」
「ふぁくやさん」
「……」
「お腹いっぱい。でも、デザートは別腹だよね」
すると、口いっぱいにものを詰め込んだ私の家の居候であるケモミミ美少年三人組は、行儀の悪い子供さながらに口を開く。七尾だけはきちんとものを飲み込んでから口を開いた。そんな様子を見ていると、なぜか彼らのしつけを私が怠っていたように見えるから不思議だ。
「可愛いですね。これはこれで最高です。願わくば、耳と尻尾もあれば完璧です!」
彼らの姿は美少年という形容が相応しい。中学生くらいの未発達の細い身体を口いっぱいにして話す姿は非常に萌える。この場で言うべきセリフは他にあるのに、つい正直な感想が口からこぼれてしまう。
「うん。何をしても、我らの姿はこやつを興奮させてしまうようだ」
「今後は食事の仕方に気を付けます」
「変態」
いつの間にか、三人は口に入っていた食べ物をしっかりと飲み込んでいたようだ。失礼な奴らである。私はただ思ったことが口から出てしまっただけだ。
「ぷっ」
そういえば、今日は彼ら人外のケモミミ美少年以外にも人がいるのだった。すっかり目の前の光景に興奮して忘れていた。
「朔夜って、面白い奴だな」
「面白くはありません。ただ、ショタ好きの大学生です!」
雨水君に笑われてしまったが、私は自分が面白い人間だとは思っていない。むしろ、面白味にかける、つまらない人間だと自負している。
「蒼紗さん、とりあえず席についてください」
そういえば、私も雨水君も席を立ったままだった。私の声は思いの外、店内に響いていたようだ。翼君に小声で声をかけられる。私たちの近くの席に座っていたお客が不審そうに私たちを見つめる視線が痛い。慌てて、私は九尾の隣、雨水君は七尾の隣に腰かける。
「ぐうう」
席に着くと、タイミング悪く私のお腹が空腹を訴えて主張を始めた。九尾たちから生暖かい視線を感じたが、私はテーブルにあったメニュー表を手に取り眺めることにした。そして、何気なさを装い、店員を呼んでメニュー表でおススメと書かれていたハンバーグのデザート付きのセットを注文しようとしたが。
「すまんな。水を人数分持ってきてくれるか」
「かしこまりました」
店員がやってきて私が口を開く前に、九尾が水だけ頼んで店員を帰らせてしまった。どういうことかと目で問うが無視され、別のことを質問される。
「それで、面接はどうだった?」
「ここで話していいものですかね……」
「確かにここは組合のビルに近いし、組合員もよく利用する店だ。いったん、朔夜の家に行って話してもいいか?」
空腹を我慢して、面接でのことを思い出す。こんな人が多い場所で話してよいものだろうか。すると、雨水君が私の家に行くことを提案する。提案してくれるのはいいが、どうして私の家になるのだろうか。まあ、最近私の家は、人外の存在や能力者についての話をする格好の場所となっているので、否定はしない。否定はしないが、何か解せない。
「ぐうう」
そんなことを考えているうちに、私のお腹が再度空腹を訴える。九尾たちは私が面接をしている間に好きなものを好きなだけ食べていたようで、テーブルに空になった皿が大量に並べられていた。
「我たちの腹は充分満たされた。お前たちは、家に帰って出前でも頼めばよかろう」
まったく、私の家の居候は無慈悲である。自分が満足したら、それでよいらしい。それに同意するのもまた彼らである。
「それがいいと思います。蒼紗さんがこのままここで食事をとっていたら、大変なことになりかねません」
「オレも同意だ」
彼らが失礼なことを言うのはいつものことだ。私がここで食事をとることで何が起こるというのか。とはいえ、面接を後味が悪い状態で終わらせてしまった手前、そんな組合ビルの近くファミレスでゆっくりと落ち着いて食事をすることもできない。
今回はおとなしく九尾の言うことに従うことにした。こうして、私たちはいったん、私の家に帰ることになった。
「何をとぼけているんだい?僕が君たちを見ていたことは知っているはずだ。それにしても」
仕方なく席について、部屋を出るタイミングをうかがっていると、雨水君が男に質問する。見ていたとはどういうことだろうか。ここまで来た道のりで監視されていた記憶はない。少なくとも、人間の視線は感じなかった。男は30代くらいで、真っ黒な髪に真っ黒な瞳が印象的だった。服装も上下ともに黒い装いで、これから夏だというのに暑くないのだろうかという格好をしていた。
どのように男に監視されていたのか考えている間に、男は私に距離を詰めてきた。それに気づいた時には、顔がだいぶ近づいていた。
『近いです。離れてください!』
他人に不用意に近づかれるのは誰でも不愉快なものである。それが今日初対面の謎の男ならなおさら気分が悪くなる。無意識に言霊の能力を使ってしまったとしても、仕方のないことだろう。
言霊の能力は、文字通り言葉で相手のことを従わせる能力である。発動条件はそこまで厳しいものではなく、相手の目を見て言葉を発するだけで能力は発動する。発動すると、私の瞳は金色に輝き、対象者と私の周りが同じく金色に輝くようだ。能力使用時の自分を見ることはできないので、これは周りからの言葉である。
つい、言霊の能力を使ってしまった。今、私の瞳は金色に輝き、男と自分の周りは金色に輝いているだろう。男は私から離れ、ドアから反対の窓辺まで後退した。
「実際に見ると、えげつない能力だな」
「素晴らしい!」
「これがあの狐が魅了された力……」
さて、これからどうしようか。能力については、すでに玄田という代表には話しているので、怪しまれることはない。とはいえ、実際に能力を使ってしまったのはまずい気がした。その証拠に、部屋に居た三人の男が興味津々に私を見つめてくる。先ほど能力を使って追い払った男もそこには含まれていた。
「では、私はこの後、用事がありますので失礼します」
このままここに居たら、何を聞かれるかわかったものではない。何とか顔に笑顔を張り付けて、その場を立ち去ろうとしたが、今度は私の行き先を阻まれることはなかった。つい、部屋のドアで立ち止まり、部屋の中を確認すると、何やら真剣な顔をした男たち二人の姿があった。
「オレも朔夜についていくよ。構わないだろう?」
「あ、あまり私に近づかないでください」
「わかっている」
そこに雨水君の姿が見当たらないと思っていたら、隣で彼の声が聞こえた。先ほどの男のことを考えてしまい、身構えていることがばれてしまったのか、苦笑された。
とりあえず、代表との面接は果たしたので、私たちはビルを出て、九尾たちと合流することにした。私たちの後を追ってくる者はいなかった。
「はあ、まったくあなたたちはのんきなものですね」
組合のビルを出た私たちは、お腹が減ったので、組合のビル近くのファミレスに入った。そこで、よく見知った顔を見つけて思わずため息が出てしまった。
九尾たちの姿を見つけた私たちは店員に同席する旨を伝え、彼らの席を案内してもらった。どうやら、私たちを待っている間に食事をしていたらしい。本来、彼らは人間ではないので、食事をする必要はない。とはいえ、なぜか人間の食事をしたがる。そういえば、私たちが面接に行くときにお腹が減ったと言っていたことを思い出す。文句を言いたい気持ちをぐっと抑え込んで、今のこの状況に対する説明を求める。
「ふぇつふぇいとふぃふぁれても」
「ふぁくやさん」
「……」
「お腹いっぱい。でも、デザートは別腹だよね」
すると、口いっぱいにものを詰め込んだ私の家の居候であるケモミミ美少年三人組は、行儀の悪い子供さながらに口を開く。七尾だけはきちんとものを飲み込んでから口を開いた。そんな様子を見ていると、なぜか彼らのしつけを私が怠っていたように見えるから不思議だ。
「可愛いですね。これはこれで最高です。願わくば、耳と尻尾もあれば完璧です!」
彼らの姿は美少年という形容が相応しい。中学生くらいの未発達の細い身体を口いっぱいにして話す姿は非常に萌える。この場で言うべきセリフは他にあるのに、つい正直な感想が口からこぼれてしまう。
「うん。何をしても、我らの姿はこやつを興奮させてしまうようだ」
「今後は食事の仕方に気を付けます」
「変態」
いつの間にか、三人は口に入っていた食べ物をしっかりと飲み込んでいたようだ。失礼な奴らである。私はただ思ったことが口から出てしまっただけだ。
「ぷっ」
そういえば、今日は彼ら人外のケモミミ美少年以外にも人がいるのだった。すっかり目の前の光景に興奮して忘れていた。
「朔夜って、面白い奴だな」
「面白くはありません。ただ、ショタ好きの大学生です!」
雨水君に笑われてしまったが、私は自分が面白い人間だとは思っていない。むしろ、面白味にかける、つまらない人間だと自負している。
「蒼紗さん、とりあえず席についてください」
そういえば、私も雨水君も席を立ったままだった。私の声は思いの外、店内に響いていたようだ。翼君に小声で声をかけられる。私たちの近くの席に座っていたお客が不審そうに私たちを見つめる視線が痛い。慌てて、私は九尾の隣、雨水君は七尾の隣に腰かける。
「ぐうう」
席に着くと、タイミング悪く私のお腹が空腹を訴えて主張を始めた。九尾たちから生暖かい視線を感じたが、私はテーブルにあったメニュー表を手に取り眺めることにした。そして、何気なさを装い、店員を呼んでメニュー表でおススメと書かれていたハンバーグのデザート付きのセットを注文しようとしたが。
「すまんな。水を人数分持ってきてくれるか」
「かしこまりました」
店員がやってきて私が口を開く前に、九尾が水だけ頼んで店員を帰らせてしまった。どういうことかと目で問うが無視され、別のことを質問される。
「それで、面接はどうだった?」
「ここで話していいものですかね……」
「確かにここは組合のビルに近いし、組合員もよく利用する店だ。いったん、朔夜の家に行って話してもいいか?」
空腹を我慢して、面接でのことを思い出す。こんな人が多い場所で話してよいものだろうか。すると、雨水君が私の家に行くことを提案する。提案してくれるのはいいが、どうして私の家になるのだろうか。まあ、最近私の家は、人外の存在や能力者についての話をする格好の場所となっているので、否定はしない。否定はしないが、何か解せない。
「ぐうう」
そんなことを考えているうちに、私のお腹が再度空腹を訴える。九尾たちは私が面接をしている間に好きなものを好きなだけ食べていたようで、テーブルに空になった皿が大量に並べられていた。
「我たちの腹は充分満たされた。お前たちは、家に帰って出前でも頼めばよかろう」
まったく、私の家の居候は無慈悲である。自分が満足したら、それでよいらしい。それに同意するのもまた彼らである。
「それがいいと思います。蒼紗さんがこのままここで食事をとっていたら、大変なことになりかねません」
「オレも同意だ」
彼らが失礼なことを言うのはいつものことだ。私がここで食事をとることで何が起こるというのか。とはいえ、面接を後味が悪い状態で終わらせてしまった手前、そんな組合ビルの近くファミレスでゆっくりと落ち着いて食事をすることもできない。
今回はおとなしく九尾の言うことに従うことにした。こうして、私たちはいったん、私の家に帰ることになった。
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