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48突然の休講
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「午後からの授業は駒沢先生の授業ですね」
『はあ』
昼食を食べ終えて、私たちは午後からの授業を受けるために講義室まで歩いていた。綾崎さんの何気ない発言に、私とジャスミンは大きなため息を吐く。
「お二人とも、駒沢先生に失礼ですよ!」
「だって、GW後の初日から、あいつの顔見るのが嫌なんだから仕方ないわよ。蒼紗もそうでしょう?」
「私はジャスミンみたいに失礼ではないので、それに対するコメントは黙秘します」
「えええ!」
不満をぼやきながらも歩いていると、講義室までたどり着いた。部屋に入ろうとすると、部屋の壁に張り紙が貼られていて、そこには人だかりができていた。スマホで現在の時刻を確認すると、授業開始5分前となっていた。
人だかりをかきわけて張り紙の前までたどり着くと、張り紙には休講の知らせが書かれていた。
『本日の三限目の講義、「伝承について~どのように妖怪などの怪異の歴史が受け継がれていったのか~」は駒沢教授の諸事情により、休講いたします」
「駒沢の授業が休講なのはうれしいけど、こんなに急に休みと言われるのは、なんだか微妙ね」
「駒沢先生、いったいどうしたのでしょうか?」
二人の言葉が耳に入らず、私はじっと休講の知らせが書かれた張り紙を見つめる。これは、鬼崎さんが大学を退学することと関係があるのだろうか。駒沢がこのタイミングで授業を休んだ。彼女と駒沢が密接な関係にあることは把握している。そんな彼が彼女の退学を知り、鬼崎さんの元に向かった可能性は高い。
「私、用事を思い出しました。ちょうど駒沢先生の授業も休講になったことですし、今日はこれで帰ります。ああ、それと」
私は綾崎さんに今日の恰好のネタバレをした。私の突然の発言に驚きつつも、綾崎さんは納得してくれたようだ。
「どこかで見たことがあると思っていたら、そういうことでしたか」
「故人を思い出すみたいなコンセプトで嫌な感じね」
「では私はこれで」
私の格好と、急ぎの用事と聞いて、何か思うところがあったのか、彼女たちは私に何も聞かずに私を送り出してくれた。
「ただいま!」
「おや、お主は今日、午後も大学の授業があったはずでは?」
「おかえりなさい。九尾の言う通り、今日は午後、蒼紗さんが苦手な駒沢の授業があるのではなかったんですか?」
「大学で何かあったのか?」
家に帰ると、九尾たちが私の帰りに驚いていたが、私はそれどころではなく、彼らに簡潔に用件を伝える。
「駒沢が鬼崎さんを追っています。今すぐに彼女の元へ行かないと!」
家まで全速力で走ってきたので、はあはあと息切れしていて、くらっとめまいがして玄関に倒れこむ。
「慌てているようだと思っていれば、そう言うことか。翼、狼貴、蒼紗の言う男の顔はわかっているな」
「大学に行ったときに見かけたことがあるので、わかります。探してみます」
「オレも一緒に行く」
九尾が私の心を読んで、すぐに事態を理解したようだ。彼の眷属である二人に素早く支持を出す。二人は指示に従い、家から出て駒沢を探しに向かった。
「お主は少し休め。詳しい話も聞きたいところだ」
翼君と狼貴君が先に動いてくれたため、私は三人に感謝し、靴を脱いでリビングのソファまでたどり着き、背もたれにどっかりと全身を預けた。
「駒沢という男とあの女がつながっているのだろう?それで、お主は男がなぜ、会いに行くと思った?」
息を整えていると、九尾から話を振られる。私は深呼吸を一つして答える。
「大学教授である駒沢はおそらく、鬼崎さんの退学のことを大学の事務から聞かされたのでしょう。そうなると、どうして突然退学したのか気になるはずです。通常の生徒なら、そこまで気になることはないですが、彼女と密接な関係にあった彼なら気になるはず。後ろめたいことがあるとしたらなおさらです。午後の授業を急に休講にしたのはそのためだと思いました」
「なるほど、お主の言うことは一理ある。それで、彼を見つけてどうするつもりだ?」
じっと九尾が私を見つめながら問いかけてくる。駒沢には鬼崎さんとの接触、怪しい薬物の入手方法などを聞く必要がある。特に薬については入手先を聞いて、そのルートをつぶしておきたい。今後の私の日常を壊しうるものは、徹底的に排除したい。
「私は、彼が私たちにちょっかいを出してくれなくなるのなら、それでいいです。もし、話し合っても、私たちに絡んでくるようなら……」
もちろん、これは私の個人的感情から来ている。しかし、それ以外にしておかなくてはいけないことがあった。
「まあ、私の事情は後でもどうにかなりますが、問題は鬼崎さんです。退学する彼女に対して駒沢が何をするのか心配というのが一番の理由です。もしかしたら」
最悪の想像をしたくはない。だが、彼ならやりかねないので、それを防ぐために私は駒沢を追い、彼女との接触を防ぐ必要があった。
「やはり、お主に目をつけて良かったな。面白い」
私の言葉に九尾は満足そうに笑う。私たちは、翼君たちの連絡を家でおとなしく待つことにした。
「ピンポーン」
二人からの連絡を待っている間、嫌なことを考えてしまいそうになるので、無心で家の掃除をすることにした。掃除なども居候の翼君と狼貴君がしてくれているお陰で、ゴミやホコリは落ちていないが、丁寧に掃除機をかけていく。
そんな中、唐突に家に来客を知らせるインターホンが鳴る。
「はい」
「蒼紗、スマホを見てくれていないみたいね」
来客として現れたのはジャスミンだった。なんでジャスミンが来たのかわからず、まずは家に招き入れる。
「どうしたのですか?私は用事があるので、先に帰りますと言ったはずですが」
「用事って言われても、その格好を見る限り、急な用事ではなさそうだけど?」
「こ、これはその。そう!連絡待ちなのですよ」
「何の連絡待ちなのかしら。普通、急ぎの用事で連絡待ちしている人が、掃除しながら待つとかありえる?」
ジャスミンに不審な目を向けられてしまう。とはいえ、私は本当に用事があるので、嘘は言っていない。
「ジャスミンはどうしたんですか?もしかして、私の用事の邪魔をしに来たのですか?」
「そんなわけないでしょう?蒼紗の深刻そうな顔が気になってわざわざ来て挙げたのよ!」
それにと続けるジャスミンは、自身のスマホを私に突き付けてきた。スマホには私に送ったらしきSNSの画面が開かれていた。
『鬼崎さんの居場所が分かった。今から迎えにいくから準備をしておいて』
スマホに映し出されたメッセージを読み上げると、満足そうに頷かれた。私が鬼崎さんの行方を調べるとどうしてわかったのだろうか。疑問が顔に出てしまったのか、ジャスミンが質問もしていないのに説明してくれた。
「どうしても何も、突然、鬼崎さんが退学するなんて、普通はありえないでしょう。それに、最後に会ったのはおそらく蒼紗だろうから、悩んでいるとしたら、それしかないだろうと推測しただけ」
「勝手に推測しないでください。それで、鬼崎さんのことですけど、彼女はまだ自分の住むアパートにいるのですか?」
私が本当に探しているのは駒沢だが、鬼崎さんのもとにいると予想されるので、彼女の動向がわかれば、彼の所在もわかるというものだ。
「ずいぶん食いつきがいいのね。蒼紗の言っている通り、彼女はまだアパートにいるけど、なんだかやばそうだから、私も一緒についていってあげるわ」
私に拒否されるとは思っていないのか、自身気についていくと言い張るジャスミン。こういう時に彼女を止めるのは難しい。私はあきらめて、彼女がついてくるのを認めることにした。
「仕方ありません。どうせ、私が止めてもついてきそうな雰囲気ですからね。一緒に行きましょう」
「当たり前でしょう?鬼崎さんがいきなり退学を決めたのは、明らかに昨日の蒼紗の訪問が原因に決まっているわ。ということは、昨日、そこでひと悶着あったと思って間違いない」
「綾崎さんはこのことを知っているのですか?」
「彼女は言っていない。だって彼女は一般人でしょ。危険に巻き込むわけにはいかないもの。その代わりに。ある任務を託してきたわ」
ジャスミンが得意そうに胸を張る。割と大きな胸が強調されてイラっと来るが、黙って続きを聞くことにした。
「任務について聞きたい顔をしているわね。彼女には、大学に残って、駒沢と鬼崎さんの関係をサークルの人に聞いてもらうことにしたわ。蒼紗は、彼女たちの他人から見た関係も気になるでしょ」
「じゃ、ジャスミンが、私のストーカーではなく、有能な人に見えます」
次々に明かされるジャスミンの行動に感心する。私が家に帰り、翼君たちの連絡を待ちながら掃除をしている間に、ずいぶんと精力的に働いていたのだ。ただし、忠告はしておくことにした。
「私のために動いてくれるのはありがたいですが、あまり無茶をしてはいけません。どうにも、私の周りには危険が多いみたいですから」
「わかっているわ。だからこそ、親友として放っておけないんでしょ。さあ、行くわよ!」
「蒼紗さん!駒沢という男の所在を掴みました。それで、僕、助っ人を呼んできました!」
ちょうどよいタイミングで、玄関のドアが開き、息せき切った翼君が飛び込んできた。後ろには苦笑いをした雨水君の姿があった。
『はあ』
昼食を食べ終えて、私たちは午後からの授業を受けるために講義室まで歩いていた。綾崎さんの何気ない発言に、私とジャスミンは大きなため息を吐く。
「お二人とも、駒沢先生に失礼ですよ!」
「だって、GW後の初日から、あいつの顔見るのが嫌なんだから仕方ないわよ。蒼紗もそうでしょう?」
「私はジャスミンみたいに失礼ではないので、それに対するコメントは黙秘します」
「えええ!」
不満をぼやきながらも歩いていると、講義室までたどり着いた。部屋に入ろうとすると、部屋の壁に張り紙が貼られていて、そこには人だかりができていた。スマホで現在の時刻を確認すると、授業開始5分前となっていた。
人だかりをかきわけて張り紙の前までたどり着くと、張り紙には休講の知らせが書かれていた。
『本日の三限目の講義、「伝承について~どのように妖怪などの怪異の歴史が受け継がれていったのか~」は駒沢教授の諸事情により、休講いたします」
「駒沢の授業が休講なのはうれしいけど、こんなに急に休みと言われるのは、なんだか微妙ね」
「駒沢先生、いったいどうしたのでしょうか?」
二人の言葉が耳に入らず、私はじっと休講の知らせが書かれた張り紙を見つめる。これは、鬼崎さんが大学を退学することと関係があるのだろうか。駒沢がこのタイミングで授業を休んだ。彼女と駒沢が密接な関係にあることは把握している。そんな彼が彼女の退学を知り、鬼崎さんの元に向かった可能性は高い。
「私、用事を思い出しました。ちょうど駒沢先生の授業も休講になったことですし、今日はこれで帰ります。ああ、それと」
私は綾崎さんに今日の恰好のネタバレをした。私の突然の発言に驚きつつも、綾崎さんは納得してくれたようだ。
「どこかで見たことがあると思っていたら、そういうことでしたか」
「故人を思い出すみたいなコンセプトで嫌な感じね」
「では私はこれで」
私の格好と、急ぎの用事と聞いて、何か思うところがあったのか、彼女たちは私に何も聞かずに私を送り出してくれた。
「ただいま!」
「おや、お主は今日、午後も大学の授業があったはずでは?」
「おかえりなさい。九尾の言う通り、今日は午後、蒼紗さんが苦手な駒沢の授業があるのではなかったんですか?」
「大学で何かあったのか?」
家に帰ると、九尾たちが私の帰りに驚いていたが、私はそれどころではなく、彼らに簡潔に用件を伝える。
「駒沢が鬼崎さんを追っています。今すぐに彼女の元へ行かないと!」
家まで全速力で走ってきたので、はあはあと息切れしていて、くらっとめまいがして玄関に倒れこむ。
「慌てているようだと思っていれば、そう言うことか。翼、狼貴、蒼紗の言う男の顔はわかっているな」
「大学に行ったときに見かけたことがあるので、わかります。探してみます」
「オレも一緒に行く」
九尾が私の心を読んで、すぐに事態を理解したようだ。彼の眷属である二人に素早く支持を出す。二人は指示に従い、家から出て駒沢を探しに向かった。
「お主は少し休め。詳しい話も聞きたいところだ」
翼君と狼貴君が先に動いてくれたため、私は三人に感謝し、靴を脱いでリビングのソファまでたどり着き、背もたれにどっかりと全身を預けた。
「駒沢という男とあの女がつながっているのだろう?それで、お主は男がなぜ、会いに行くと思った?」
息を整えていると、九尾から話を振られる。私は深呼吸を一つして答える。
「大学教授である駒沢はおそらく、鬼崎さんの退学のことを大学の事務から聞かされたのでしょう。そうなると、どうして突然退学したのか気になるはずです。通常の生徒なら、そこまで気になることはないですが、彼女と密接な関係にあった彼なら気になるはず。後ろめたいことがあるとしたらなおさらです。午後の授業を急に休講にしたのはそのためだと思いました」
「なるほど、お主の言うことは一理ある。それで、彼を見つけてどうするつもりだ?」
じっと九尾が私を見つめながら問いかけてくる。駒沢には鬼崎さんとの接触、怪しい薬物の入手方法などを聞く必要がある。特に薬については入手先を聞いて、そのルートをつぶしておきたい。今後の私の日常を壊しうるものは、徹底的に排除したい。
「私は、彼が私たちにちょっかいを出してくれなくなるのなら、それでいいです。もし、話し合っても、私たちに絡んでくるようなら……」
もちろん、これは私の個人的感情から来ている。しかし、それ以外にしておかなくてはいけないことがあった。
「まあ、私の事情は後でもどうにかなりますが、問題は鬼崎さんです。退学する彼女に対して駒沢が何をするのか心配というのが一番の理由です。もしかしたら」
最悪の想像をしたくはない。だが、彼ならやりかねないので、それを防ぐために私は駒沢を追い、彼女との接触を防ぐ必要があった。
「やはり、お主に目をつけて良かったな。面白い」
私の言葉に九尾は満足そうに笑う。私たちは、翼君たちの連絡を家でおとなしく待つことにした。
「ピンポーン」
二人からの連絡を待っている間、嫌なことを考えてしまいそうになるので、無心で家の掃除をすることにした。掃除なども居候の翼君と狼貴君がしてくれているお陰で、ゴミやホコリは落ちていないが、丁寧に掃除機をかけていく。
そんな中、唐突に家に来客を知らせるインターホンが鳴る。
「はい」
「蒼紗、スマホを見てくれていないみたいね」
来客として現れたのはジャスミンだった。なんでジャスミンが来たのかわからず、まずは家に招き入れる。
「どうしたのですか?私は用事があるので、先に帰りますと言ったはずですが」
「用事って言われても、その格好を見る限り、急な用事ではなさそうだけど?」
「こ、これはその。そう!連絡待ちなのですよ」
「何の連絡待ちなのかしら。普通、急ぎの用事で連絡待ちしている人が、掃除しながら待つとかありえる?」
ジャスミンに不審な目を向けられてしまう。とはいえ、私は本当に用事があるので、嘘は言っていない。
「ジャスミンはどうしたんですか?もしかして、私の用事の邪魔をしに来たのですか?」
「そんなわけないでしょう?蒼紗の深刻そうな顔が気になってわざわざ来て挙げたのよ!」
それにと続けるジャスミンは、自身のスマホを私に突き付けてきた。スマホには私に送ったらしきSNSの画面が開かれていた。
『鬼崎さんの居場所が分かった。今から迎えにいくから準備をしておいて』
スマホに映し出されたメッセージを読み上げると、満足そうに頷かれた。私が鬼崎さんの行方を調べるとどうしてわかったのだろうか。疑問が顔に出てしまったのか、ジャスミンが質問もしていないのに説明してくれた。
「どうしても何も、突然、鬼崎さんが退学するなんて、普通はありえないでしょう。それに、最後に会ったのはおそらく蒼紗だろうから、悩んでいるとしたら、それしかないだろうと推測しただけ」
「勝手に推測しないでください。それで、鬼崎さんのことですけど、彼女はまだ自分の住むアパートにいるのですか?」
私が本当に探しているのは駒沢だが、鬼崎さんのもとにいると予想されるので、彼女の動向がわかれば、彼の所在もわかるというものだ。
「ずいぶん食いつきがいいのね。蒼紗の言っている通り、彼女はまだアパートにいるけど、なんだかやばそうだから、私も一緒についていってあげるわ」
私に拒否されるとは思っていないのか、自身気についていくと言い張るジャスミン。こういう時に彼女を止めるのは難しい。私はあきらめて、彼女がついてくるのを認めることにした。
「仕方ありません。どうせ、私が止めてもついてきそうな雰囲気ですからね。一緒に行きましょう」
「当たり前でしょう?鬼崎さんがいきなり退学を決めたのは、明らかに昨日の蒼紗の訪問が原因に決まっているわ。ということは、昨日、そこでひと悶着あったと思って間違いない」
「綾崎さんはこのことを知っているのですか?」
「彼女は言っていない。だって彼女は一般人でしょ。危険に巻き込むわけにはいかないもの。その代わりに。ある任務を託してきたわ」
ジャスミンが得意そうに胸を張る。割と大きな胸が強調されてイラっと来るが、黙って続きを聞くことにした。
「任務について聞きたい顔をしているわね。彼女には、大学に残って、駒沢と鬼崎さんの関係をサークルの人に聞いてもらうことにしたわ。蒼紗は、彼女たちの他人から見た関係も気になるでしょ」
「じゃ、ジャスミンが、私のストーカーではなく、有能な人に見えます」
次々に明かされるジャスミンの行動に感心する。私が家に帰り、翼君たちの連絡を待ちながら掃除をしている間に、ずいぶんと精力的に働いていたのだ。ただし、忠告はしておくことにした。
「私のために動いてくれるのはありがたいですが、あまり無茶をしてはいけません。どうにも、私の周りには危険が多いみたいですから」
「わかっているわ。だからこそ、親友として放っておけないんでしょ。さあ、行くわよ!」
「蒼紗さん!駒沢という男の所在を掴みました。それで、僕、助っ人を呼んできました!」
ちょうどよいタイミングで、玄関のドアが開き、息せき切った翼君が飛び込んできた。後ろには苦笑いをした雨水君の姿があった。
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