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37今回の事件についていろいろ知ることができました

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「犬史君とはどうやって出会ったのですか?」

 私は、鬼崎さんに一つずつ疑問に思ったことを質問することにした。まずは、GW中に会いたいと思っている犬史君について聞いてみることにした。今までの情報からだと、彼女と犬史君はつながっているらしいことはわかっている。

「犬史を紹介してくれたのは、駒沢教授でした」

 私の言霊の能力に従って、鬼崎さんが正直に質問に答えてくれたが、その回答の中に驚くべき人の名前が挙げられた。私が驚いている様子に構うことなく、鬼崎さんは淡々と答えていく。

「駒沢教授が、私が非科学的なものに興味を持っていることを知り、犬史を紹介してくれました。駒沢教授が、私の興味を満たせるよう、配慮してくれたのです。初めて出会ったのは、4月の入学式が終わった次の日で、駒沢教授に言われるままに、私は犬史の家を訪問しました。そこで、犬史と初めて出会いました」

 ここで言葉を止める。そのまま私の顔をじっと見つめる鬼崎さん。質問に答えたということだろう。まさか、こんなにすぐに鬼崎さんの背後にいる人物を知ることができるとは思わなかった。

「じゃ、じゃあ、犬史君にお兄さんに会えるといったのはなぜ?お兄さんは死んでいる、もしくは行方不明ということになっていたでしょう?」

 混乱する頭で、次の質問をする。彼女にかけた言霊の力が亡くなってしまう前に、どんどん答えてもらおう。考えるのは、後回しにすることにした。疑問に思ったことはこの場で余すことなく聞くことにした。

「駒沢先生が教えてくれました。犬史のお兄さん的存在は、すでに亡くなっている可能性が高いと。しかし、遺体は見つかっていないから、まだ生きている可能性はあると先生は言っていました。そこで、駒沢先生は、ある仮説を立てました。それが、『お兄さんは死んでいるが、幽霊か何か、別の存在としてこの世に存在しているのではないか』というものでした」



「それは、いったい」

「駒沢先生も、私と同じく、非科学的な出来事に興味をお持ちで、最近は、朔夜蒼紗のことが研究対象として面白そうだと常々話していました。そして、朔夜蒼紗の周りで起きた不思議な出来事を詳しく調べているそうです。その中で、一年前に起きた連続不審死という事件の謎を解こうと必死になっていた彼の元に、面白い情報が入ってきたようです」

 一年前の連続不審死。それは、私が九尾たちと出会うきっかけになった事件であり、多大な被害者が出た痛ましい事件だ。駒沢が調べていたとは思ってもいなかった。あの事件の被害者の遺体は全て、証拠が残らないように、九尾が瀧のお寺ごと燃やしてしまった。その場には何も残らなかったはずだ。

 そして、その寺の記憶は人々の中から消えてしまったはずだ。九尾が消してしまった。被害者を調べれば不審な点だらけとなって、確かに不可解で調べてみたくはなるが、そこからどうやって、犬史君にまでたどり着けたのだろうか。どうして犬史君に接触しようと考えたのかも謎である。

「被害者を調べていくうちに、被害者によく似た幼い子供が目撃されていることがわかりました。そして、それは朔夜蒼紗の周りに出没することも」

 どんどん衝撃の事実が暴露されていく。いったい、どこまで駒沢は私たちの秘密に近づいているのだろうか。不安が募っていくが、鬼崎さんの話を止めることなく、私は彼女の話を最後まで聞くことにした。

「最初に目を付けたのは、宇佐美翼。彼の元同棲相手に話を聞いて、彼女が今も彼に未練を残していることを知りました。しかし、彼女の精神はすでに彼がいなくなったことで不安定になっており、駒沢先生の思い通りにはことが運びませんでした。彼女は精神を病んで、その後はわかりません」

 翼君の彼女を翼君に向かわせたのは、駒沢ではなかったようだ。とはいえ、彼女は翼君の少年姿を見かけて私の家まで追ってきた。彼女の翼君に関する記憶は消去された。ということは、次に駒沢が目を着けたのが。

「次に目を付けたのは、紅狼貴という男性でした。彼を調べていくうちに、身内に幼い犬史がいることがわかり、目をつけました。彼はまだ幼く、お兄さんが死んだことを信じておらず、彼をおとりとして使えば、もしかしたら、本当に死んだはずの男が会いに来るかもしれないと言い出しました。私は、その話に乗ることにしました」

 そこからは、私の知っている話となった。狼貴君が出そうな場所を探して予想をつけて鬼崎さんに向かわせて探す。そんな日々が続いたそうだ。そして、狼貴君に会うための最短ルートを見つけ出した。





「飲み会に朔夜蒼紗を誘ったのは、賭けでした。駒沢先生は、これだけ探しても見つからないとなれば、彼らは誰かの家に居候していると推測しました。そして、その居候先は」

「私、というわけですね。そして、私を危険に晒せば、おそらく彼らが出てくると予想した」

「飲み会に誘えたのは素晴らしい幸運でした。私は朔夜さんがまさか、彼らを連れてくるとは思っていませんでした。もしかしたらと期待はしていましたが。とはいえ、彼らのために、駒沢先生はあるものを私に渡してくれました」

 嫌な予感がした。九尾たちは人間ではないので、酒に酔うということはない。それなのに、あの日、彼らは例外なく酔っぱらって本性を出してしまっていた。それは、飲み物に意図的に、彼らに効果のあるものにすり替えられていたということだ。その薬はジャスミンのような能力者にも効果があるものだった。

 私が考えている間にも、話は続いていく。彼女は私の予想通りのことを話していく。

「私は駒沢先生に、ある水をもらいました。それは、何でも先生が探しに探して手に入れた、秘蔵のお酒らしく、普通の人間であれば、ただの水でしかない。ただし、能力者や人外には絶大な効果を発揮する代物だったそうです」


 話はそれからも続いていく。九尾は薬と言っていたが、実際にはお酒だったようだ。その怪しいお酒を九尾たちが飲むだろう飲み物に混ぜて、まんまと飲んでしまった九尾たちの変化を鬼崎さんはスマホに収めることにした。そして、その写真をSNSで拡散。もちろん、協力者である駒沢にも写真を見せたようだ。


 ちらりと外の様子をうかがうと、外はだいぶ暗くなっていた。これ以上長居をしていると、他の部員たちが部屋に入ってくるかもしれない。もしくは、下校時刻だと先生が見回りに来るかもしれない。最後に私は一つ質問した。

「鬼崎さんは、どうして非科学的なものに興味を」





「トントン、あれ、蒼紗さんに鬼崎さん。二人で珍しいですね。いや二人で話したいと言っていましたね。ですが、もうそろそろ下校時刻ですよ。この部屋の鍵、閉めてもいいですか?今日は私がカギ当番なので」

 ちょうど質問を仕掛けたタイミングで、綾崎さんが部屋から顔を出した。時間切れということらしい。とりあえず、聞きたいことはあらかた聞くことができた。残りの話はGW最終日にじっくり聞くことにした。

「すいません。後少しで話は終わりますから、少しだけ部屋を借りてもいいですか。一分もかかりませんので」

「蒼紗さんの頼みなら仕方ありませんね。すぐに終わらせてくださいよ。外で待っていますから」

 綾崎さんを部屋から追い出し、念のため、私は彼女にもう一度能力を使った。

『今、私と話したことは忘れてください』

 言霊の力が発動され、鬼崎さんは正気に戻ったようだ。


「あれ、私は今まで何を。朔夜先輩、私たちのサークルに入ってくれるのですか?」

「鬼崎さん、そろそろ下校時刻だそうですので、とりあえず、部屋を出ましょう。外で綾崎さんが待っています」

 鬼崎さんは今の状況を理解できず混乱しているようだが、部屋から無理やり出すと、外で待っていた綾崎さんに押し付ける。

「では、私は帰りますので、良いお二人とも残りのGWを楽しんでください。鬼崎さんはGGW最終日に会いましょう」

 私は、家に帰って九尾たちに相談すべきことがたくさんあるので、さっさと帰ることにした。 
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