結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【新年の目標】6一緒に食事(梨々花視点)

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 昼休憩中に、倉敷さんと話す機会があった。なぜか、倉敷さんとはなかなか休憩時間が合わず、ゆっくりと話すことができたのは初めてかもしれない。しかし、途中で河合さんが割り込んできて、途中で話は終わってしまった。とはいえ、収穫はあった。

「さっそくだけど、今日の夕方は空いてる?善は急げというでしょ。もし予定がないのなら、一緒にファミレスでご飯でもどう?」

「今日ですか?急ですけど、予定は特にないので大丈夫です」

 いきなり予定を入れられたが、私は実家暮らしなので、母親に連絡を入れたら問題はない。母親に連絡を入れ、私は河合さんからの夕食の誘いを喜んで受けることにした。ちなみに当間くんは残業があるらしいので、ちょうどよかった。

 その日の退勤後、私と河合さんは会社近くのファミレスで一緒に夕食を取っていた。倉敷さんにはもう少し、旦那さんのことを聞きたかったが、コミュ障な感じの地味女性と一緒に食事はしたくない。それならいっそ、倉敷さんと仲のよい、河合さんと食事をした方がよい。そう考えて誘ったのだが、まさか話した当日に一緒に夕食を取るとは思わなかった。

 夕方の時間は、ファミレスは家族連れやカップルでにぎわいを見せていた。しかし、運よく席がひとつ空いていたので、私たちは待つことなく席に案内された。向かい合って座り、お互いに食べたいものを注文する。寒い季節になってきて、メニューには鍋系が多い。私は味噌煮込みうどん、河合さんはもつ鍋を注文した。

「やっぱり、梨々花ちゃんは天然じゃないんだね?」

「河合さんこそ」

 お互いに女子受けするメニューは頼まなかった。男性がいないのに、キャラを作る必要はない。河合さんも私と同じ部類の人間だ。私がぶりっ子の天然キャラじゃないことをすぐに見破った。

「それで、私に聞きたいことがあるんでしょ?答えられる範囲で答えてあげるよ」

 タッチパネルで注文を終えたところで、河合さんが話を切り出した。何から聞いたらいいだろうか。悩んで末、一番気になったことを聞くことにした。

「じゃあ、聞きますけど、倉敷さんの旦那さんは本当にイケメンなんですか?」

 河合さんなら、倉敷さんと親しいので写真などを見たことがあるかもしれない。

「イケメンかどうかでいうと、かなりのイケメンだよ。でも、梨々花ちゃんみたいな人から猛アタックを受けて大変な目に遭っているから、望み薄だと思うよ」

「べ、別に私は倉敷さんの旦那さんを寝取ろうなんて」

 思っていない。そう口にしようとしたが、最後まで言葉が口から出てこなかった。心の奥底では狙っていることを否定できなかったからだ。当間という現在の恋人がいて、可愛がられているはずなのに。

「梨々花ちゃんがどう思っていようと私には関係ないけど、忠告はしておくよ」

 先輩を傷つけるようなことはするな。

 河合さんが急に真面目な顔で何を言いだしたかと思えば、予想外の発言だった。そこまで倉敷さんに肩入れする理由が気になった。

「実を言うとね、先輩の旦那のおおたかっちは」

 私の元カレなんだよ。

「元カレ?」

 しかし、河合さんはさらに驚くべき発言をした。驚きすぎて、彼女の言葉を反芻する。もし、その言葉が本当だとしたら、彼女の先ほどの言葉は矛盾している。元カノジョと現ヨメが仲良くしているのも意味がわからない。河合さんは私の困惑した様子を見て、笑っている。

「そりゃあ、普通に考えれば、私と先輩の関係って変だと思うよね?でもさ、私と先輩、おおたかっちの三人は結構、仲良しなんだ」

「信じられない」

「信じる、信じないは自由だよ。でも、さっき言ったように、私は先輩のことを大切に思っているの。だから、先輩を傷つける行為、つまり、おおたかっちを奪うような行為は見過ごせないわけだ」

 まあ、おおたかっちを紗々さんから奪うことはできないけど。

 ぼそりとつぶやかれた言葉には絶対の信頼があった。奪うような行為をしたところで、意味がないと言われている気がした。

「み、未練とかはないんですか?」

「未練ねえ」

 思わず、口から出た言葉に自分でも笑ってしまう。未練がないからこそ、現ヨメの倉敷さんと仲良くできているのだ。河合さんの言葉には元カレに対する未練が全く感じられない。むしろ、今は倉敷さんに好意があるように見える。いや、好意と言うより、執着に近い。

「それで、私がおおたかっちを梨々花ちゃんに紹介しようと思ったわけなんだけど」

『オマタセシマシタ。注文したメニューをお受け取り下さい』

 話していたら、注文したメニューが配ぜんロボットによって運ばれてきた。慌ててロボットに載った料理をテーブルに移動させる。役目を終えたロボットはそのまま、厨房へと戻っていく。

「冷めないうちに食べようか」

「そうですね」

『いただきます』

 話はそこでいったん中断となった。私たちは食事を開始した。

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