149 / 234
番外編【波乱の新年の幕開け】6心配です
しおりを挟む
「河合さんと当間さん、私の3人で食事に行くことになりました」
帰宅後、私は大鷹さんに今日決まったことを正直に話すことにした。河合さんがいるため、何か起こるとも思えないが、大鷹さんに言っておいた方が良いと判断した。夕食の準備は大鷹さんがしてくれていた。キッチンで作業をしていた大鷹さんは私の言葉に鍋から目を離し、私のいるリビングに身体を向けて首をかしげる。
「なんでそんなことになったのか、説明してもらえますか?」
大鷹さんの視線が怖い。何もやましいことがないのに、謝りたくなってしまう。本当は私だってこんな約束に頷きたくはなかった。悪いのは河合さんだ。もう、素直に私が約束を取り付けたのではなく、河合さんが勝手にしたことだとばらしてしまおうか。
「はあ」
私が黙っていたら、大鷹さんが大きな溜息を吐く。幼馴染設定が嫌いなのに、自分は幼馴染と河合さんも同席だとはいえ、食事をするのか。あきれた奴だ。そんな心の声が聞こえてきそうだ。
「あの、大鷹さ」
「わかっていますよ。どうせ、河合江子のせいでしょう?彼女が紗々さんと当間さんの関係を嗅ぎつけて、勝手に食事の場をセッティングした」
私が河合さんの名前を出す前に、大鷹さんはこの件の真相にたどり着いてしまった。河合さんの性格を知り過ぎているような気がして、あまり気分がよくない。モヤモヤした気持ちになるが、気にしている場合ではない。
「わかっているのなら」
「それでも」
それにしても、大鷹さんはよほど私と当間をプライベートで会わせるのが嫌らしい。私の言葉を遮り、大鷹さんにしては大きな声で話し続ける。
「僕はできれば、紗々さんにはその約束を断ってほしかった。まあ、彼女は押しが強いので断りにくかったとは思いますが」
「もしかして、私が当間と何かあるかもしれないと、心配しているんですか?」
「あ、当たり前でしょう?いくら紗々さんが恋愛に疎いからと言って、実家の隣に住んでいた男の子と、どうもならないという可能性は否定できません」
心配してくれているのは嬉しいが、一言余計だ。恋愛に疎いのは事実だが、口にしなくてもいいではないか。
「大鷹さんの言い分はワカリマシタ。ですが、私が大鷹さんよりほかの男を選ぶとかありえません」
「ぼ、僕だってそんなことは分かって」
「だったら」
私は大鷹さんのいるキッチンまで歩いていく。大鷹さんは私より身長が高いので視線を合わせるときは上を向かなくてはならない。大鷹さんを見上げる形でしっかりと視線を合わせる。
「私をもっと信用してください。そもそも、私は当間とは大した思い出もないので、どうこうなりようがありません。それに当間は私のタイプではありません。私は」
大鷹さんがタイプです。
「も、もう結構です。紗々さんの気持ちはよくわかりました」
最後まで言葉を言わせてもらえなかった。
「わかってくれたなら、良かったです。お腹が減ったのですが、今日の夕食は何ですか?」
話が無事に終わりそうなことに安心したら、急にお腹が減ってきた。今日は、大鷹さんは仕事が休みだったが、私は一日仕事を頑張っている。
「身体は正直ですね。今日はかにすきにしましたよ」
「うれしいです。準備、手伝いますね」
冷凍庫に眠っていた年末に買ったかにが残っていることを思い出す。
「ぐうう」
「急ぎましょう。もう、鍋は温まっているので皿の準備をお願いします」
私たちは先ほどまでのぎすぎすした雰囲気とは一変して、互いに微笑みあう。これぞ、仲の良い夫婦というものだ。
夕食のかにすきは、かにの身が大ぶりでとてもおいしかった。
帰宅後、私は大鷹さんに今日決まったことを正直に話すことにした。河合さんがいるため、何か起こるとも思えないが、大鷹さんに言っておいた方が良いと判断した。夕食の準備は大鷹さんがしてくれていた。キッチンで作業をしていた大鷹さんは私の言葉に鍋から目を離し、私のいるリビングに身体を向けて首をかしげる。
「なんでそんなことになったのか、説明してもらえますか?」
大鷹さんの視線が怖い。何もやましいことがないのに、謝りたくなってしまう。本当は私だってこんな約束に頷きたくはなかった。悪いのは河合さんだ。もう、素直に私が約束を取り付けたのではなく、河合さんが勝手にしたことだとばらしてしまおうか。
「はあ」
私が黙っていたら、大鷹さんが大きな溜息を吐く。幼馴染設定が嫌いなのに、自分は幼馴染と河合さんも同席だとはいえ、食事をするのか。あきれた奴だ。そんな心の声が聞こえてきそうだ。
「あの、大鷹さ」
「わかっていますよ。どうせ、河合江子のせいでしょう?彼女が紗々さんと当間さんの関係を嗅ぎつけて、勝手に食事の場をセッティングした」
私が河合さんの名前を出す前に、大鷹さんはこの件の真相にたどり着いてしまった。河合さんの性格を知り過ぎているような気がして、あまり気分がよくない。モヤモヤした気持ちになるが、気にしている場合ではない。
「わかっているのなら」
「それでも」
それにしても、大鷹さんはよほど私と当間をプライベートで会わせるのが嫌らしい。私の言葉を遮り、大鷹さんにしては大きな声で話し続ける。
「僕はできれば、紗々さんにはその約束を断ってほしかった。まあ、彼女は押しが強いので断りにくかったとは思いますが」
「もしかして、私が当間と何かあるかもしれないと、心配しているんですか?」
「あ、当たり前でしょう?いくら紗々さんが恋愛に疎いからと言って、実家の隣に住んでいた男の子と、どうもならないという可能性は否定できません」
心配してくれているのは嬉しいが、一言余計だ。恋愛に疎いのは事実だが、口にしなくてもいいではないか。
「大鷹さんの言い分はワカリマシタ。ですが、私が大鷹さんよりほかの男を選ぶとかありえません」
「ぼ、僕だってそんなことは分かって」
「だったら」
私は大鷹さんのいるキッチンまで歩いていく。大鷹さんは私より身長が高いので視線を合わせるときは上を向かなくてはならない。大鷹さんを見上げる形でしっかりと視線を合わせる。
「私をもっと信用してください。そもそも、私は当間とは大した思い出もないので、どうこうなりようがありません。それに当間は私のタイプではありません。私は」
大鷹さんがタイプです。
「も、もう結構です。紗々さんの気持ちはよくわかりました」
最後まで言葉を言わせてもらえなかった。
「わかってくれたなら、良かったです。お腹が減ったのですが、今日の夕食は何ですか?」
話が無事に終わりそうなことに安心したら、急にお腹が減ってきた。今日は、大鷹さんは仕事が休みだったが、私は一日仕事を頑張っている。
「身体は正直ですね。今日はかにすきにしましたよ」
「うれしいです。準備、手伝いますね」
冷凍庫に眠っていた年末に買ったかにが残っていることを思い出す。
「ぐうう」
「急ぎましょう。もう、鍋は温まっているので皿の準備をお願いします」
私たちは先ほどまでのぎすぎすした雰囲気とは一変して、互いに微笑みあう。これぞ、仲の良い夫婦というものだ。
夕食のかにすきは、かにの身が大ぶりでとてもおいしかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる