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番外編【頭痛が痛い】1月に一度のアレ
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「あああ、頭痛が痛い……」
「頭痛が痛いって、日本語おかしくないですか」
「いえ、それであっています。日本語がおかしくなるくらい、頭が痛いということです」
まったく、女性というものは厄介なものだ。月に一度やってくるあれは、本当に毎回拷問かと思うような頭痛を私に与えてくる。幸い、私の場合は頭痛がひどいだけで腹痛の方は無いので、ダブルパンチは避けられているが、世の中の女性にはダブルパンチを食らっている人もいるだろう。
「ああああああああああ」
そのせいで、その期間はどうしても小説の更新頻度が落ちてしまう。まあ、趣味でやっていることだし、毎日更新を掲げているわけでもないので大した問題ではない。とはいえ、小説の更新は止めても文句は言われないが、仕事を休むことはできない。
「ずいぶんと辛そうですね」
休日の朝、食事をしながら大鷹さんに昨日の夜から続く痛みについて訴えてみる。とはいえ、大鷹さんに愚痴ったところで何も解決しないことは分かっている。それに、大鷹さんは悪くない。世間では女性にまったく配慮のない夫や恋人がいると聞いたことがある。それに比べたら、大鷹さんはとても配慮の出来た、とても素晴らしい夫だ。今も、私のことを心配そうな目で見つめてくる。
「このせいで、だいぶ時間を無駄にしている気がします。やっぱり、男女平等とか現実的には不可能だと思います」
「確かに、男性は月に一度も体調が悪くなりませんからね。紗々さんの言うことも理解できます」
朝から、気分の悪い話をしてしまっただろうか。別に大鷹さんを悪く言うつもりはないのに、大鷹さんを含むすべての男性をディスってしまった気がする。本当に、頭痛が痛いと、日本語がおかしな発言をしてしまうほどの痛みなのだ。空気も読めなくなるし、イライラがたまるし、いいことがない。
「ちなみにどんな痛みですか?頭痛と言っても、いろいろありますが」
朝食のトーストしたパンを頬張っていたら、大鷹さんに質問される。こんな気分の荒んでいる妻にまだ果敢にも声をかけてくれるとは、やっぱり私の夫はよくできている。私なら、生理中で情緒不安定な妻がいたら、無視して放置だ。そもそも、私はあまり気が長くない。どちらかというと、短気な部類だ。陰キャだからと言って、おとなしい気質と思っていたら大間違いだ。言葉に出さないだけで内心、怒りで荒れ狂っていることも多々ある。
「こめかみ辺りがキューンとして痛いです。ずきずきとは違う感じです。とりあえず、この痛みのせいで、何もやる気が起きません。とはいえ、仕事はお金の為に仕方なくいきますけど、可能ならこの期間は一日中、ベッドでゴロゴロしていたいです」
そうはいかないのが社会人というものだろう。幸いにして、今は痛み止めという薬があるので、それを飲んで無理やり身体を動かすことができる。
「ごちそうさまでした。とりあえず、今週の土日は家で安静にしています」
「あの日じゃなくても、紗々さんは家で安静にしている気もしますけど、お大事に。家事は僕がやっておきますよ」
ううん、素晴らしい夫で家事をやってくれるのはありがたいが、その前の言葉は嫌みにしか聞こえない。とはいえ、言葉一つ一つにイライラしていたら身が持たない。私は黙って食器をキッチンのシンクにおいて、自分の部屋に向かった。
「ああ、痛み止めは飲んでおかないと」
自室について、薬を飲み忘れたことを思い出す。我慢していたら、本当に何もできない。慌てて痛み止めを薬が入ったラックから取り出し、キッチンに戻り薬を水で飲んで身体に流し入れた。
生理用品に痛み止め。まったく、女性はお金が入り用だ。毎度のことながら、嫌になってしまう。男になりたいと思うことがあっても不思議ではない。
「【休みと友達】なんてテーマにしなきゃよかった」
薬を飲んで部屋に戻った私はベッドにダイブすることなく、パソコンの電源を入れていた。朝からごろごろするのは休日の醍醐味だと思うが、そうすると本当にダラダラしてしまい、休みを無駄にしたような気になってしまう。いや、ダラダラすることこそが休日の本来に過ごし方だと思うが、なんとなく世間のキラキラ休日と比べてしまう自分がいる。他人は他人なので、私は私の過ごしたいように過ごすだけでいいはずだが、モヤモヤしてしまう。
よくある話だ。調子がいいときはごろごろしていても、いざ調子が悪いとつい、ごろごろするのをためらってしまう。
パソコンの執筆画面には、先日、中学の同級生に会う前に考えたネタが、いまだ手つかずのままになっていた。簡単なプロットはできているが、それだけでこのままだとお蔵入りしてしまう。
「別にいいか。書きたいと思ったネタでいこう」
パソコンの前に座っても、何もいいアイデアが思いつかない。さて、どうしようか。痛み止めの薬を飲んだはいいが、効くのにはもう少し時間がかかるだろう。
「こういう時は」
現実逃避に限る。
最近は、自分で創作しなくても手軽に無料で漫画や小説、動画、音楽などの他人の創作物を見たり聞いたりすることが可能だ。自分にない発想や展開に胸躍らすことも多い。
「オメガバースか……」
スマホでSNSや漫画アプリなどを適当にさ迷っていたら、オメガバースのBL作品の広告に出会った。内容は知っているが、個人的にあまり好きではなかったが。
「いや、これはありかもしれない」
そうだ、私のこの頭痛の痛みはこのためにあったのかもしれない。私は急いで、広告のページをタップして、作品の試し読みを行う。
オメガバース。それは男女のほかにアルファ、ベータ、オメガと呼ばれる第二の性が存在する設定のことらしい。
BLでこの設定を利用するというのは、ずばり、【男性でも妊娠可能】だからだ。だからこそ、私は今までオメガバース設定の物語から目を背けてきた。
しかし、今日から私はオメガバース設定にも目を向けていこうと思う。
「ありがとう、君のこの痛みも役に立つことがあるんだね」
今の私は頭痛の痛みに頭がおかしくなっていた。気分が下がっていたのが急に上がってハイになっていた。私は思いついた小説のネタを急いでパソコンに打ち込んだ。
「頭痛が痛いって、日本語おかしくないですか」
「いえ、それであっています。日本語がおかしくなるくらい、頭が痛いということです」
まったく、女性というものは厄介なものだ。月に一度やってくるあれは、本当に毎回拷問かと思うような頭痛を私に与えてくる。幸い、私の場合は頭痛がひどいだけで腹痛の方は無いので、ダブルパンチは避けられているが、世の中の女性にはダブルパンチを食らっている人もいるだろう。
「ああああああああああ」
そのせいで、その期間はどうしても小説の更新頻度が落ちてしまう。まあ、趣味でやっていることだし、毎日更新を掲げているわけでもないので大した問題ではない。とはいえ、小説の更新は止めても文句は言われないが、仕事を休むことはできない。
「ずいぶんと辛そうですね」
休日の朝、食事をしながら大鷹さんに昨日の夜から続く痛みについて訴えてみる。とはいえ、大鷹さんに愚痴ったところで何も解決しないことは分かっている。それに、大鷹さんは悪くない。世間では女性にまったく配慮のない夫や恋人がいると聞いたことがある。それに比べたら、大鷹さんはとても配慮の出来た、とても素晴らしい夫だ。今も、私のことを心配そうな目で見つめてくる。
「このせいで、だいぶ時間を無駄にしている気がします。やっぱり、男女平等とか現実的には不可能だと思います」
「確かに、男性は月に一度も体調が悪くなりませんからね。紗々さんの言うことも理解できます」
朝から、気分の悪い話をしてしまっただろうか。別に大鷹さんを悪く言うつもりはないのに、大鷹さんを含むすべての男性をディスってしまった気がする。本当に、頭痛が痛いと、日本語がおかしな発言をしてしまうほどの痛みなのだ。空気も読めなくなるし、イライラがたまるし、いいことがない。
「ちなみにどんな痛みですか?頭痛と言っても、いろいろありますが」
朝食のトーストしたパンを頬張っていたら、大鷹さんに質問される。こんな気分の荒んでいる妻にまだ果敢にも声をかけてくれるとは、やっぱり私の夫はよくできている。私なら、生理中で情緒不安定な妻がいたら、無視して放置だ。そもそも、私はあまり気が長くない。どちらかというと、短気な部類だ。陰キャだからと言って、おとなしい気質と思っていたら大間違いだ。言葉に出さないだけで内心、怒りで荒れ狂っていることも多々ある。
「こめかみ辺りがキューンとして痛いです。ずきずきとは違う感じです。とりあえず、この痛みのせいで、何もやる気が起きません。とはいえ、仕事はお金の為に仕方なくいきますけど、可能ならこの期間は一日中、ベッドでゴロゴロしていたいです」
そうはいかないのが社会人というものだろう。幸いにして、今は痛み止めという薬があるので、それを飲んで無理やり身体を動かすことができる。
「ごちそうさまでした。とりあえず、今週の土日は家で安静にしています」
「あの日じゃなくても、紗々さんは家で安静にしている気もしますけど、お大事に。家事は僕がやっておきますよ」
ううん、素晴らしい夫で家事をやってくれるのはありがたいが、その前の言葉は嫌みにしか聞こえない。とはいえ、言葉一つ一つにイライラしていたら身が持たない。私は黙って食器をキッチンのシンクにおいて、自分の部屋に向かった。
「ああ、痛み止めは飲んでおかないと」
自室について、薬を飲み忘れたことを思い出す。我慢していたら、本当に何もできない。慌てて痛み止めを薬が入ったラックから取り出し、キッチンに戻り薬を水で飲んで身体に流し入れた。
生理用品に痛み止め。まったく、女性はお金が入り用だ。毎度のことながら、嫌になってしまう。男になりたいと思うことがあっても不思議ではない。
「【休みと友達】なんてテーマにしなきゃよかった」
薬を飲んで部屋に戻った私はベッドにダイブすることなく、パソコンの電源を入れていた。朝からごろごろするのは休日の醍醐味だと思うが、そうすると本当にダラダラしてしまい、休みを無駄にしたような気になってしまう。いや、ダラダラすることこそが休日の本来に過ごし方だと思うが、なんとなく世間のキラキラ休日と比べてしまう自分がいる。他人は他人なので、私は私の過ごしたいように過ごすだけでいいはずだが、モヤモヤしてしまう。
よくある話だ。調子がいいときはごろごろしていても、いざ調子が悪いとつい、ごろごろするのをためらってしまう。
パソコンの執筆画面には、先日、中学の同級生に会う前に考えたネタが、いまだ手つかずのままになっていた。簡単なプロットはできているが、それだけでこのままだとお蔵入りしてしまう。
「別にいいか。書きたいと思ったネタでいこう」
パソコンの前に座っても、何もいいアイデアが思いつかない。さて、どうしようか。痛み止めの薬を飲んだはいいが、効くのにはもう少し時間がかかるだろう。
「こういう時は」
現実逃避に限る。
最近は、自分で創作しなくても手軽に無料で漫画や小説、動画、音楽などの他人の創作物を見たり聞いたりすることが可能だ。自分にない発想や展開に胸躍らすことも多い。
「オメガバースか……」
スマホでSNSや漫画アプリなどを適当にさ迷っていたら、オメガバースのBL作品の広告に出会った。内容は知っているが、個人的にあまり好きではなかったが。
「いや、これはありかもしれない」
そうだ、私のこの頭痛の痛みはこのためにあったのかもしれない。私は急いで、広告のページをタップして、作品の試し読みを行う。
オメガバース。それは男女のほかにアルファ、ベータ、オメガと呼ばれる第二の性が存在する設定のことらしい。
BLでこの設定を利用するというのは、ずばり、【男性でも妊娠可能】だからだ。だからこそ、私は今までオメガバース設定の物語から目を背けてきた。
しかし、今日から私はオメガバース設定にも目を向けていこうと思う。
「ありがとう、君のこの痛みも役に立つことがあるんだね」
今の私は頭痛の痛みに頭がおかしくなっていた。気分が下がっていたのが急に上がってハイになっていた。私は思いついた小説のネタを急いでパソコンに打ち込んだ。
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