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番外編【看病イベント】4見たことある光景
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「おやおや、彼女たちは君のお仲間かな?」
あとから来た二人の女性たちも、目の前で千沙さんたちに厳しい指摘を受けている女性と似たような雰囲気だった。明らかに私の夫に手を出そうとしている。それに気づいたきらりさんが何気なさを装って声をかける。しかし、彼女たちの目に入ったのは私たちではなかった。
「あら、加藤さん。こんなところで何をしているの?定時で急いで帰ったかと思っていたけれど」
「もしかして、大鷹さんのお見舞いとか?」
「あなたたちに関係ないでしょ。ていうか、あなたたちだって大鷹さんのお見舞いに来たんだから、人の事言えないと思うけど?何なら、見舞いにこじつけて押しかけるつもりなのが見え見えなのよ!」
完全に私たちは無視されている。彼女達はどうやら知り合いのようで、きっと大鷹さんの会社で働いている人たちだろう。このまま放置すれば口論は激化して大変な事態になりそうだ。
「あの、これ以上は」
『すとーっぷ!』
どうにかしてこの場を収めようと口を開いたが、河合さんの声に遮られる。そこまで大声ではなかったものの、女性三人は一度静かになった。そこでようやく私たちがいることに気づいたようだ。
「ようやく此方を見たね。怒った顔は素敵ではないよ。女性はいつでも笑顔が素敵だと決まっているからね。人数は増えたけど、私は何人でも受け入れるよ。おいで、私のハニーたち」
「私もあなたたちにお話があるからついていきまーす!」
「それとも、この場で騒ぎを起こしてその彼とやらに迷惑を掛けたいのかな。彼はきっと奥さんにしか眼中にないけど、騒ぎを起こしたら今後一切、彼の視界に入らなくなるよ」
きらりさんの雰囲気ががらりと変化した。このような光景はどこかで見たことがある。
「去年の正月明けと一緒だ」
あの時は、私に絡んでくる中学校の同級生の男を私から引き離してくれた。今回は大鷹さん目当ての女性を同じように引き離そうとしてくれている。そう考えると、きらりさんにはかなりお世話になっている。今度、一緒に食事でもおごってあげよう。
ということで、ここまできたら結末はみえている。この女性たちはきっと、ここに来たことを後悔するだろう。
「わ、わたし……」
「返事はいりませーん。きらりさん?だっけ。サッサと行きましょう。私の行きつけの店に案内しますよ!」
「河合さん、だっけ?私たち、気が合いそうだね。じゃあ、皆さん、こんなところで長話もあれだから、さっさと移動しようか」
有無を言わせぬ圧できらりさんは、最初にマンション前で待ち伏せしていた女性のうでをつかんだ。河合さんは残りの二人の女性の腕をガッチリつかんでいた。
「じゃあね。さ、ささん。この子たちは私たちが丁重におもてなししておくよ」
「来週、この件についてはゆっくり話しましょうねえ」
「ちょ、ちょっと。私はまだ」
「何なの。でも、こういうのもタイプかも」
「離しなさいよ!」
文句を言う彼女達だったが、きらりさんたちに連れられて強制的にマンションのエントランスを出ていった。
彼女たちがいなくなり、エントランスには私一人が残された。一気にその場に静寂が訪れる。嵐のような人たちだった。
「とりあえず、家に入ろう」
私はエントランスを抜け、自分の部屋につながるエレベーターに乗るのだった。
あとから来た二人の女性たちも、目の前で千沙さんたちに厳しい指摘を受けている女性と似たような雰囲気だった。明らかに私の夫に手を出そうとしている。それに気づいたきらりさんが何気なさを装って声をかける。しかし、彼女たちの目に入ったのは私たちではなかった。
「あら、加藤さん。こんなところで何をしているの?定時で急いで帰ったかと思っていたけれど」
「もしかして、大鷹さんのお見舞いとか?」
「あなたたちに関係ないでしょ。ていうか、あなたたちだって大鷹さんのお見舞いに来たんだから、人の事言えないと思うけど?何なら、見舞いにこじつけて押しかけるつもりなのが見え見えなのよ!」
完全に私たちは無視されている。彼女達はどうやら知り合いのようで、きっと大鷹さんの会社で働いている人たちだろう。このまま放置すれば口論は激化して大変な事態になりそうだ。
「あの、これ以上は」
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どうにかしてこの場を収めようと口を開いたが、河合さんの声に遮られる。そこまで大声ではなかったものの、女性三人は一度静かになった。そこでようやく私たちがいることに気づいたようだ。
「ようやく此方を見たね。怒った顔は素敵ではないよ。女性はいつでも笑顔が素敵だと決まっているからね。人数は増えたけど、私は何人でも受け入れるよ。おいで、私のハニーたち」
「私もあなたたちにお話があるからついていきまーす!」
「それとも、この場で騒ぎを起こしてその彼とやらに迷惑を掛けたいのかな。彼はきっと奥さんにしか眼中にないけど、騒ぎを起こしたら今後一切、彼の視界に入らなくなるよ」
きらりさんの雰囲気ががらりと変化した。このような光景はどこかで見たことがある。
「去年の正月明けと一緒だ」
あの時は、私に絡んでくる中学校の同級生の男を私から引き離してくれた。今回は大鷹さん目当ての女性を同じように引き離そうとしてくれている。そう考えると、きらりさんにはかなりお世話になっている。今度、一緒に食事でもおごってあげよう。
ということで、ここまできたら結末はみえている。この女性たちはきっと、ここに来たことを後悔するだろう。
「わ、わたし……」
「返事はいりませーん。きらりさん?だっけ。サッサと行きましょう。私の行きつけの店に案内しますよ!」
「河合さん、だっけ?私たち、気が合いそうだね。じゃあ、皆さん、こんなところで長話もあれだから、さっさと移動しようか」
有無を言わせぬ圧できらりさんは、最初にマンション前で待ち伏せしていた女性のうでをつかんだ。河合さんは残りの二人の女性の腕をガッチリつかんでいた。
「じゃあね。さ、ささん。この子たちは私たちが丁重におもてなししておくよ」
「来週、この件についてはゆっくり話しましょうねえ」
「ちょ、ちょっと。私はまだ」
「何なの。でも、こういうのもタイプかも」
「離しなさいよ!」
文句を言う彼女達だったが、きらりさんたちに連れられて強制的にマンションのエントランスを出ていった。
彼女たちがいなくなり、エントランスには私一人が残された。一気にその場に静寂が訪れる。嵐のような人たちだった。
「とりあえず、家に入ろう」
私はエントランスを抜け、自分の部屋につながるエレベーターに乗るのだった。
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