結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
上 下
65 / 204

番外編【成人式】1平凡な年末年始

しおりを挟む
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「あけましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」

 年が経つのは早いもので、もう一年が過ぎて新しい年が始まってしまった。年末年始を大鷹さんと一緒に過ごすのは二回目となる。今年は12月の早い段階で大鷹さんは知り合いからの連絡をブロックしていたようだ。大鷹さんのスマホが振動する回数が少なかった気がする。

 年末は最初の年と違って、大した事件が起きることはなかった。私の勤める銀行に某知り合いが来ることもなかったし、家に某義弟が押しかけてくることもなかった。いたって平穏な年末となった。

 大鷹さんは私に合わせて大晦日を家で過ごしていた。一緒に歌番組をみたり、話したりしていたらあっという間に年が明けてしまった。今は、年が明けた深夜12時。私たちは互いに新年のあいさつを交わしていた。なんだか、大鷹さんの挨拶には妙に熱がこもっていた気がするが気のせいではないと思う。

 その後は一緒に近くの神社に初もうでに向かった。ここでも昨年と違って面倒くさい某知り合いに会うことはなかった。

 要するに今年はいたって平穏すぎる年末年始を過ごしたのだった。年明けは大鷹さんの実家にあいさつに回ったが、まあそこはいつも通りカオスな空間だったが、すでに昨年経験済みだったので、特に問題なく対応できたと思う。

 私の実家にも来てくれたが、こちらは私含めて大鷹さんの親族に比べたら普通なので、大鷹さんが目立っていたくらいで問題が起こることはなかった。


「あまりにも平凡すぎる休みだった」
「平凡な日常こそが大切だと思いますけど」

 そのまま休みは終わってしまい、私は1月4日から仕事始めとなった。大鷹さんは5日からのようで一日ちがいで仕事が始まったのだが、仕事を終えて家に帰って愚痴をこぼすと笑われてしまった。

「もし、紗々さんが望むのなら僕が平凡な日常からかいほ」
「遠慮しておきます」

 私服からスウェットに着替えてリビングに向かうと、気が利く大鷹さんがお茶を入れてくれていた。手洗うがいをして席について、ありがたくいただくことにする。まったくもって気が利く旦那である。しかし、その言葉だけは聞き入れられない。私の言葉に大鷹さんは不満そうな顔をしていたがあきらめたようだ。

「まだ途中までしか話していないのに、つれないですね。でもまあ、鈍感系キャラからの脱却は良いと思います」

「そもそも、私は鈍感系キャラではないと思います。鈍感系キャラって主人公とかヒロインによくいるキャラ付であって、私は基本的にそんなたいそうな役柄のキャラではないですよ」

「人間一人ひとり主人公なので問題はありません。僕の中の紗々さんはそんな感じの位置付けだっただけです」

「ふむ」

 蓼食う虫も好き好きというものだ。それはそれで良いとして、何か面白いネタはないものか。

「そういえば、鈍感系で思い出しましたけど、妹夫婦がインフルエンザにかかったみたいです」

 唐突に頭に浮かんだことを口にする。妹夫婦はかなり行動派で、子供が生まれてからも精力的に旅行に出かけていた。最近、妹は仕事に復帰して働き始めたばかりで、そこまで外出して大丈夫かと心配していたが、その心配は的中してしまった。子供は現在、実家で私の両親が面倒を見ている。

「どこで関連しているのかわかりませんが、新年早々、大変ですね」

「まあ、自業自得なところもあるし、仕方ないと言えば仕方ないです」


 話しているうちに大鷹さんが出してくれたお茶が冷めてしまった。ぬるいお茶を飲みながら、風邪について考えてみる。今回はインフルエンザだが、風邪について考えていたことを大鷹さんに伝えてみようと思った。

「成人式があることをすっかり忘れてました」

 風邪の看病イベントも面白いが、もっと面白いネタを思いついたので、私の頭は一気に看病イベントのことが抜け落ちた。

「本当に脈絡なく話が変わりますね」

「こうしてはいられません。ああ、大鷹さんは、成人式ってどんな感じでした?まあ、ほとんど予想が出来るのでわざわざ語ってもらう必要はありませんが」

 大鷹さんは私の話題の変わりように苦笑しているが今更である。苦笑している顔を見ながらも、私はそそくさと自室に戻りパソコンの電源を入れるのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

処理中です...