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続編~中学校編②~
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中学生といえば、定期考査が行われる。小学校にはなかったテストのことだ。小学校の時にあいまいだった学力の差、いわゆる頭の差が顕著に出てくる。その点数によっては、クラス内でのいじめの対象になることも充分あり得る。
別府えにしも例外ではなかった。テストが返却され、くそ女に点数をばらされても、別府えにしは、特に変わった様子なく学校に来ていた。彼女に変わった様子はなくても、くそ女の様子は違っていた。
くそ女が本格的に別府さんをいじめ始めた。まずはいじめの定番である、無視を始めた。彼女がくそ女に話しかけても、無視されていた。クラスの女子にも、別府えにしに話しかけられたら無視するようにと命令していたらしい。その結果、クラスで別府えにしは浮いてしまっていた。
女子同士の問題は、女子同士で解決するのがいいと思うが、別府えにしには親しい、自分を助けてくれるような友達はいないようだ。誰にも頼ることなく、クラスの女子から無視される日々が続いていた。
「あの、このプリントだけど、先生が福島さんだけ出していないから、出すようにって言われたんだけど。」
「……」
「先生、怒っていたよ。忘れたなら、きちんと説明した方がいいと思う……。」
「……。ああ、そういえば、今日の放課後、私、用事があったわ。」
話しかけられても無視で、挙句の果てには、大した用事もないのに、席を立って帰る支度を始めたくそ女。
そんなやり取りが何度か続いて、とうとう見ていられなくなったオレは、くそ女がいないときに、別府えにしに声をかけることにした。
「別府さん、クラスの女子から無視されているようだけど、つらいよね。いや、つらいに決まってる。オレからくそお、ちかげにいってやろうか。」
「ありがとうございます。本当に優しいんですね、中里さんは。そんな幼馴染をもって福島さんは幸せですね。うらやましい。でも、中里さんが福島さんに何か言う必要はありません。」
オレの手助けは必要ないと別府さんは断った。なんてけなげな女子だろうか。とはいえ、一人で悩みを抱え込んでいてはダメだと思うので、何かあったらオレに頼るように言っておく。
「それなら、なんか困ったことがあったら、すぐにオレに言ってくれよ。なんでも言ってくれて構わない。オレならくそ女の変な行動をどうにかできるから。」
「じゃあ……。」
その後に続いた彼女の言葉に、オレは一瞬、言葉を失った。だって出会ってまだ一カ月もたっていないのだ。いくらなんでもそれは早すぎる。
「ふふふ、おかしな顔。」
言葉を失っているオレの顔がおかしかったのか、別府えにしは口を押えて身体を震わせている。笑い方もかわいいな。場違いなことを考えるオレを許してほしい。
「すぐに返事をくれだなんて言いません。これは二人の気持ちが大切ですし。私は本気ですよ。何なら、条件をつけましょう。」
笑いを引っ込め、別府えにしは、自分の言葉にさらに条件を付けた。別府えにしの言葉は、かなり本気のものだった。
「今週末の赤点補修のテストで、すべて満点をとったら、返事をもらうということにしましょう。満点でなかったら、返事もいりませんし、この話もなかったことにします。」
言い終えた別府えにしは、先ほどのしおらしさを欠片も感じさせない足取りで教室を出ていった。
「なんでも言ってくれという言葉、信じますよ。私と付き合ってください。もちろん、福島さんとは縁を切って、私だけを好きになってください。」
とんでもない転校生が来てしまった。オレの返答は一つしかないが、別府えにしの行動の不可解さがどうにも迷わせていた。
別府えにしはオレと付き合いたいとは言ったが、オレのことを好きとは言っていなかったという事実に気付くことはなかった。
別府えにしも例外ではなかった。テストが返却され、くそ女に点数をばらされても、別府えにしは、特に変わった様子なく学校に来ていた。彼女に変わった様子はなくても、くそ女の様子は違っていた。
くそ女が本格的に別府さんをいじめ始めた。まずはいじめの定番である、無視を始めた。彼女がくそ女に話しかけても、無視されていた。クラスの女子にも、別府えにしに話しかけられたら無視するようにと命令していたらしい。その結果、クラスで別府えにしは浮いてしまっていた。
女子同士の問題は、女子同士で解決するのがいいと思うが、別府えにしには親しい、自分を助けてくれるような友達はいないようだ。誰にも頼ることなく、クラスの女子から無視される日々が続いていた。
「あの、このプリントだけど、先生が福島さんだけ出していないから、出すようにって言われたんだけど。」
「……」
「先生、怒っていたよ。忘れたなら、きちんと説明した方がいいと思う……。」
「……。ああ、そういえば、今日の放課後、私、用事があったわ。」
話しかけられても無視で、挙句の果てには、大した用事もないのに、席を立って帰る支度を始めたくそ女。
そんなやり取りが何度か続いて、とうとう見ていられなくなったオレは、くそ女がいないときに、別府えにしに声をかけることにした。
「別府さん、クラスの女子から無視されているようだけど、つらいよね。いや、つらいに決まってる。オレからくそお、ちかげにいってやろうか。」
「ありがとうございます。本当に優しいんですね、中里さんは。そんな幼馴染をもって福島さんは幸せですね。うらやましい。でも、中里さんが福島さんに何か言う必要はありません。」
オレの手助けは必要ないと別府さんは断った。なんてけなげな女子だろうか。とはいえ、一人で悩みを抱え込んでいてはダメだと思うので、何かあったらオレに頼るように言っておく。
「それなら、なんか困ったことがあったら、すぐにオレに言ってくれよ。なんでも言ってくれて構わない。オレならくそ女の変な行動をどうにかできるから。」
「じゃあ……。」
その後に続いた彼女の言葉に、オレは一瞬、言葉を失った。だって出会ってまだ一カ月もたっていないのだ。いくらなんでもそれは早すぎる。
「ふふふ、おかしな顔。」
言葉を失っているオレの顔がおかしかったのか、別府えにしは口を押えて身体を震わせている。笑い方もかわいいな。場違いなことを考えるオレを許してほしい。
「すぐに返事をくれだなんて言いません。これは二人の気持ちが大切ですし。私は本気ですよ。何なら、条件をつけましょう。」
笑いを引っ込め、別府えにしは、自分の言葉にさらに条件を付けた。別府えにしの言葉は、かなり本気のものだった。
「今週末の赤点補修のテストで、すべて満点をとったら、返事をもらうということにしましょう。満点でなかったら、返事もいりませんし、この話もなかったことにします。」
言い終えた別府えにしは、先ほどのしおらしさを欠片も感じさせない足取りで教室を出ていった。
「なんでも言ってくれという言葉、信じますよ。私と付き合ってください。もちろん、福島さんとは縁を切って、私だけを好きになってください。」
とんでもない転校生が来てしまった。オレの返答は一つしかないが、別府えにしの行動の不可解さがどうにも迷わせていた。
別府えにしはオレと付き合いたいとは言ったが、オレのことを好きとは言っていなかったという事実に気付くことはなかった。
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