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続編~中学校編①~
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テストが終わり、部活動が再開した。私と彼女は陸上部で日々練習に励んでいた。
ある日の週末、陸上の市内大会が総合グラウンドで行われることになった。そして、同日にはサッカーの試合も別のグラウンドで行われることになっていた。
「なあ、俺のカッコイイ姿を見に来いよ。」
例のイケメンバカに試合を見に来いと誘われた。誘われたのは、大会が行われる週の月曜日の朝だった。朝、登校して開口一番に言われた言葉だ。挨拶よりも先に用件とはいい御身分である。
「あいにく、私たち陸上部も大会があるので無理です。そもそも、その日はどの部活も大会で応援なんて来てくれないでしょう。」
そうなのだ。市内大会が一斉に行われるために、どの部活も大会があるのだ。
「そこを何とか頼むよ。おまえ、どうせ、選手じゃないんだろ。先輩の応援をするくらいなら、俺の応援に来いよ。俺なんて一年なのにレギュラーなんだぜ。」
自信ありげにいうのだが、レギュラーに選ばれるのは当然である。サッカーは11人で1チームとなるが、私の学校のサッカー部の部員はなんと、12人。試合のコートには11人しか出ることはできないが、交代もあるから、全員ユニホームをもらえる。すごいもくそもない。
それに、うわさによると、12人のうち、2人がゴールキーパーらしいので、もれなく全員試合に出ることができるというわけだ。
「としや君はレギュラーなんですね。すごいです。私なんて、出る人がいないから、無理やり出るという感じなので、尊敬します。」
私たちの会話に割り込んできたのは、別府えにしだ。
「いや、別府さんがその種目に出たいといったからでしょう。だって、その種目は……。」
「できれば応援に行きたいのですが、私も選ばれたからには走る義務があります。申し訳ありません。その代わりに、今日から一緒に帰りましょう。そうしたら、俊哉君の頑張りを見ることができなくても、頑張りを聞くことはできますから。」
「そ、そうか。まあ、大会なら仕方ないよな。でも、俺たち、結構部活が長引いちゃうから、待つことになると思うけど。」
「構いません。武田さんと一緒に待ちますから、終わるまでの間にいろいろ積もる話もできるでしょうし。」
よくわからないうちに、私と別府えにしとイケメンバカの三人で帰宅することになってしまった。
一緒に帰って気付いたのだが、彼女は、私たちの家と割と近いところにあるアパートに住んでいるようだった。
待ちたくもないイケメンバカを待つ毎日だったが、彼女の話を聞くのは思いのほか楽しかった。私は生まれてから一度も引っ越しも転校もしたことがないので、彼女が話す転校話は、心ひかれる興味深い内容のものばかりだった。
「それでね、私は転校することになったのだけど、そこで、ふと気付いたのよ。幼馴染を観察するのは本当に面白いことだと。私には縁のないものだから、見ていて飽きないわ。」
「幼馴染なんていいものでもありませんよ。だって、何でも一緒にひとくくりにされてしまうから。」
「それがいいという人がいるのでしょう。それなら、いっそ私がそれを壊してもいいけれど。」
転校についての話しをしていたはずが、どうやら、別府えにしは、幼馴染という関係にかなり固執しているということが改めてわかった。
彼女の物騒な発言は丸きりの冗談とも思えないほど、真面目で真剣な響きであった。
「本当ですか。」
「冗談に決まっているでしょう。そんなひどいことをする人に私は見えているかな。」
「そうは見えないけど……。」
「まあ、あなたは他の幼馴染と違って、少しは面白そうではあるけれど。それもどうなるのか……。」
最後の言葉はぼそっと独り言のように言われて、聞き取れなかった。
残念ながら、部活動の大会は、私は風邪で休むことになってしまった。風邪の原因はわかっている。私が買って読んでいる漫画の新刊が出ていて、それを買って家で読もうとしたら、最初から読みたくなってしまい、1巻から徹夜で読んでしまったことが原因だ。
漫画は現在26巻まで発売されていて、それを1巻から読み始めたので、読み終わるにはそれなりの時間がかかるだろう。その漫画は、私が嫌いな幼馴染展開にはならない。さらには幼馴染という関係性すら出てこないバトルものだった。
お風呂もそこそこに、髪も乾かさずにみふけってしまったのだ。私の髪の長さは、肩くらいまである。そのせいで、濡れた髪が冷たくなってしまい、そのまま徹夜をしてしまったので、風邪をひいてしまったというわけだ。
漫画の新刊を買ったのは、木曜日。次の日の金曜日は少し熱っぽい気がしていた。そして、部活が終わり、家に帰って熱を測ったら38度という高熱を出してしまったのだ。
なんとも情けない休み方である。そのため、私は陸上部の顧問に休みの連絡を入れた。顧問は苦笑いをしながらも、ゆっくり休みなさいと言ってくれた。
私が大会を休むことは、当然、同じ部活の別府えにしにも伝わることだ。それは当たり前のことで、何も思わない。しかし、どうしてイケメンバカまで私の家に見舞いに来るのだろうか。
最近はめっきりイケメンバカの家との連絡は途絶えていたはずで、私の親もわざわざ私の情報を隣の家に流すことはしていない。そもそも、情報を流すなと親にはきつく言っているのだ。それを破るとも思えない。
それなのに、別府えにしは、イケメンバカと一緒に私の家に見舞いに来た。そして、うるさいくらいに自分の陸上部の大会のこと、イケメンバカはバカで、サッカーの試合について延々と私に話し出した。
二人を見て思ったのだが、二人の距離は異様に近かった。まるで、付き合っている恋人同士の距離である。私はベットで寝ていたのだが、彼らは私のベットの横から話しかけているのだが、二人は密着して隣同士に座っていた。そんなに私の部屋は狭くないはずだ。
これは面倒なことが起こりそうだと、私の本能が告げているのだった。
ある日の週末、陸上の市内大会が総合グラウンドで行われることになった。そして、同日にはサッカーの試合も別のグラウンドで行われることになっていた。
「なあ、俺のカッコイイ姿を見に来いよ。」
例のイケメンバカに試合を見に来いと誘われた。誘われたのは、大会が行われる週の月曜日の朝だった。朝、登校して開口一番に言われた言葉だ。挨拶よりも先に用件とはいい御身分である。
「あいにく、私たち陸上部も大会があるので無理です。そもそも、その日はどの部活も大会で応援なんて来てくれないでしょう。」
そうなのだ。市内大会が一斉に行われるために、どの部活も大会があるのだ。
「そこを何とか頼むよ。おまえ、どうせ、選手じゃないんだろ。先輩の応援をするくらいなら、俺の応援に来いよ。俺なんて一年なのにレギュラーなんだぜ。」
自信ありげにいうのだが、レギュラーに選ばれるのは当然である。サッカーは11人で1チームとなるが、私の学校のサッカー部の部員はなんと、12人。試合のコートには11人しか出ることはできないが、交代もあるから、全員ユニホームをもらえる。すごいもくそもない。
それに、うわさによると、12人のうち、2人がゴールキーパーらしいので、もれなく全員試合に出ることができるというわけだ。
「としや君はレギュラーなんですね。すごいです。私なんて、出る人がいないから、無理やり出るという感じなので、尊敬します。」
私たちの会話に割り込んできたのは、別府えにしだ。
「いや、別府さんがその種目に出たいといったからでしょう。だって、その種目は……。」
「できれば応援に行きたいのですが、私も選ばれたからには走る義務があります。申し訳ありません。その代わりに、今日から一緒に帰りましょう。そうしたら、俊哉君の頑張りを見ることができなくても、頑張りを聞くことはできますから。」
「そ、そうか。まあ、大会なら仕方ないよな。でも、俺たち、結構部活が長引いちゃうから、待つことになると思うけど。」
「構いません。武田さんと一緒に待ちますから、終わるまでの間にいろいろ積もる話もできるでしょうし。」
よくわからないうちに、私と別府えにしとイケメンバカの三人で帰宅することになってしまった。
一緒に帰って気付いたのだが、彼女は、私たちの家と割と近いところにあるアパートに住んでいるようだった。
待ちたくもないイケメンバカを待つ毎日だったが、彼女の話を聞くのは思いのほか楽しかった。私は生まれてから一度も引っ越しも転校もしたことがないので、彼女が話す転校話は、心ひかれる興味深い内容のものばかりだった。
「それでね、私は転校することになったのだけど、そこで、ふと気付いたのよ。幼馴染を観察するのは本当に面白いことだと。私には縁のないものだから、見ていて飽きないわ。」
「幼馴染なんていいものでもありませんよ。だって、何でも一緒にひとくくりにされてしまうから。」
「それがいいという人がいるのでしょう。それなら、いっそ私がそれを壊してもいいけれど。」
転校についての話しをしていたはずが、どうやら、別府えにしは、幼馴染という関係にかなり固執しているということが改めてわかった。
彼女の物騒な発言は丸きりの冗談とも思えないほど、真面目で真剣な響きであった。
「本当ですか。」
「冗談に決まっているでしょう。そんなひどいことをする人に私は見えているかな。」
「そうは見えないけど……。」
「まあ、あなたは他の幼馴染と違って、少しは面白そうではあるけれど。それもどうなるのか……。」
最後の言葉はぼそっと独り言のように言われて、聞き取れなかった。
残念ながら、部活動の大会は、私は風邪で休むことになってしまった。風邪の原因はわかっている。私が買って読んでいる漫画の新刊が出ていて、それを買って家で読もうとしたら、最初から読みたくなってしまい、1巻から徹夜で読んでしまったことが原因だ。
漫画は現在26巻まで発売されていて、それを1巻から読み始めたので、読み終わるにはそれなりの時間がかかるだろう。その漫画は、私が嫌いな幼馴染展開にはならない。さらには幼馴染という関係性すら出てこないバトルものだった。
お風呂もそこそこに、髪も乾かさずにみふけってしまったのだ。私の髪の長さは、肩くらいまである。そのせいで、濡れた髪が冷たくなってしまい、そのまま徹夜をしてしまったので、風邪をひいてしまったというわけだ。
漫画の新刊を買ったのは、木曜日。次の日の金曜日は少し熱っぽい気がしていた。そして、部活が終わり、家に帰って熱を測ったら38度という高熱を出してしまったのだ。
なんとも情けない休み方である。そのため、私は陸上部の顧問に休みの連絡を入れた。顧問は苦笑いをしながらも、ゆっくり休みなさいと言ってくれた。
私が大会を休むことは、当然、同じ部活の別府えにしにも伝わることだ。それは当たり前のことで、何も思わない。しかし、どうしてイケメンバカまで私の家に見舞いに来るのだろうか。
最近はめっきりイケメンバカの家との連絡は途絶えていたはずで、私の親もわざわざ私の情報を隣の家に流すことはしていない。そもそも、情報を流すなと親にはきつく言っているのだ。それを破るとも思えない。
それなのに、別府えにしは、イケメンバカと一緒に私の家に見舞いに来た。そして、うるさいくらいに自分の陸上部の大会のこと、イケメンバカはバカで、サッカーの試合について延々と私に話し出した。
二人を見て思ったのだが、二人の距離は異様に近かった。まるで、付き合っている恋人同士の距離である。私はベットで寝ていたのだが、彼らは私のベットの横から話しかけているのだが、二人は密着して隣同士に座っていた。そんなに私の部屋は狭くないはずだ。
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