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二人が帰って緊張の糸が解けた私は、テーブルに残された空の湯呑みを片付ける気力もわかず、自分の部屋のベッドに倒れこんだ。
「こんな展開を私は望んでいたのだろうか」
一人つぶやいてみても、当然、一人暮らしのアラフォーの家では返答が来るはずがない。わかってはいても、それが急に一人暮らしの寂しさを改めて感じさせた。
「一人で生きていくと決めたのに、あいつらのせいで……」
あの夫婦の会話は、緊迫していようが、聞いていてひやひやするものであろうが、人間同士の会話だった。普段、一人で自分の部屋での仕事をすることの多い私にとって、それはとてもまぶしいものに見えた。
この年になって、一人の寂しさに耐え切れなくなったのだろうか。たかが、家に招いた夫婦が帰っただけだ。しかも、彼らは私の関係ないところで離婚を成立させた。私が関係しているのかもしれないが、勝手に話しは進められた。私の家は、二人で話すためのあいびき場所にでも使われたかのような扱いだった。
「はあ。もういや。今何時だ」
ベッドでゴロゴロしながらスマホで時刻を確認すると、すでに昼をだいぶ過ぎた時間だった。時刻を目にした瞬間、空腹を知らせる音が腹から響きだした。
「お腹が減って、変な考えが頭に湧いてくるんだ。とりあえず、昼ご飯でも食べて気分転換しよう」
昼ご飯は簡単に済ませることにした。常備していたカップラーメンにお湯を注いで三分待つ。こんなものを食べていると、さらに一人暮らしのむなしさがこみ上げて気分が滅入ってくる。とはいえ、今は悠長に昼食を作る気にもなれなかった。
しかし、腹に食べ物を入れると、少し落ち着くものである。食事を終えると、少し気分が落ち着き、先ほど帰った彼らの会話を振り返る余裕ができた。
「REONAさんは、私に執着しているようだったけど、あれを本気にしていいものか」
話の後半に、REONAさんは私のことが好きみたいな発言をしていた。男の方はその発言に対して、どういう反応をしていたか。思い出してみるが、男の方は大して驚いていなかった気がする。いや、最初は驚いていたが、次第に納得したような表情になっていたはずだ。
「え、ということは、私はREONAさんにマジの告白をされたということか!」
いやいや、人生で一度も告白などと言う、リア充イベントに遭遇したことのない私に、そんな奇跡みたいなことが起こりえるのだろうか。しかも、男性ではなく、女性から告白されてしまった。それも、元とは言え芸能人に。
「だとしたら、私は彼女の告白をバッサリと切り捨ててしまった」
あんな美人な元芸能人の告白に、一般人にほんの少し毛が生えたような人間が応えなかった。「嫌です」の一言で断ってしまった。これは由々しき事態となった。
とはいえ、こんなプライベートなことを誰かに相談してもいいのだろうか。誰かと言っても、相談できる相手など一人しかいないが。
「ううん」
悩んでいるうちに、眠気が襲ってきた。昼食を食べたせいで、眠たくなってきたのだろう。眠気に身を任せてもいいが、最近、同じ展開を繰り返している。そもそも、一般人は仕事をしている時間だ。そんな時間にのんきに昼寝などしていたら、自分が社会から外れた社会不適合者だと言っているも同然だ。
「でもまあいいか。別に世間に迷惑をかけているわけでもないし、これでもきちんと仕事して税金も納めているし」
そうは言っても、今日は眠気に身体を任せることはしなかった。締め切りが近づいているエッセイが一つあったことを思い出し、眠い目をこすりつつ、自分の部屋のパソコンの電源を入れ、原稿を執筆して、怒涛の一日は終わった。
「こんな展開を私は望んでいたのだろうか」
一人つぶやいてみても、当然、一人暮らしのアラフォーの家では返答が来るはずがない。わかってはいても、それが急に一人暮らしの寂しさを改めて感じさせた。
「一人で生きていくと決めたのに、あいつらのせいで……」
あの夫婦の会話は、緊迫していようが、聞いていてひやひやするものであろうが、人間同士の会話だった。普段、一人で自分の部屋での仕事をすることの多い私にとって、それはとてもまぶしいものに見えた。
この年になって、一人の寂しさに耐え切れなくなったのだろうか。たかが、家に招いた夫婦が帰っただけだ。しかも、彼らは私の関係ないところで離婚を成立させた。私が関係しているのかもしれないが、勝手に話しは進められた。私の家は、二人で話すためのあいびき場所にでも使われたかのような扱いだった。
「はあ。もういや。今何時だ」
ベッドでゴロゴロしながらスマホで時刻を確認すると、すでに昼をだいぶ過ぎた時間だった。時刻を目にした瞬間、空腹を知らせる音が腹から響きだした。
「お腹が減って、変な考えが頭に湧いてくるんだ。とりあえず、昼ご飯でも食べて気分転換しよう」
昼ご飯は簡単に済ませることにした。常備していたカップラーメンにお湯を注いで三分待つ。こんなものを食べていると、さらに一人暮らしのむなしさがこみ上げて気分が滅入ってくる。とはいえ、今は悠長に昼食を作る気にもなれなかった。
しかし、腹に食べ物を入れると、少し落ち着くものである。食事を終えると、少し気分が落ち着き、先ほど帰った彼らの会話を振り返る余裕ができた。
「REONAさんは、私に執着しているようだったけど、あれを本気にしていいものか」
話の後半に、REONAさんは私のことが好きみたいな発言をしていた。男の方はその発言に対して、どういう反応をしていたか。思い出してみるが、男の方は大して驚いていなかった気がする。いや、最初は驚いていたが、次第に納得したような表情になっていたはずだ。
「え、ということは、私はREONAさんにマジの告白をされたということか!」
いやいや、人生で一度も告白などと言う、リア充イベントに遭遇したことのない私に、そんな奇跡みたいなことが起こりえるのだろうか。しかも、男性ではなく、女性から告白されてしまった。それも、元とは言え芸能人に。
「だとしたら、私は彼女の告白をバッサリと切り捨ててしまった」
あんな美人な元芸能人の告白に、一般人にほんの少し毛が生えたような人間が応えなかった。「嫌です」の一言で断ってしまった。これは由々しき事態となった。
とはいえ、こんなプライベートなことを誰かに相談してもいいのだろうか。誰かと言っても、相談できる相手など一人しかいないが。
「ううん」
悩んでいるうちに、眠気が襲ってきた。昼食を食べたせいで、眠たくなってきたのだろう。眠気に身を任せてもいいが、最近、同じ展開を繰り返している。そもそも、一般人は仕事をしている時間だ。そんな時間にのんきに昼寝などしていたら、自分が社会から外れた社会不適合者だと言っているも同然だ。
「でもまあいいか。別に世間に迷惑をかけているわけでもないし、これでもきちんと仕事して税金も納めているし」
そうは言っても、今日は眠気に身体を任せることはしなかった。締め切りが近づいているエッセイが一つあったことを思い出し、眠い目をこすりつつ、自分の部屋のパソコンの電源を入れ、原稿を執筆して、怒涛の一日は終わった。
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