ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち

折原さゆみ

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16神永夫婦のご対面①

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「だそうです。REONAさん」

 スマホの画面には、通話中の文字が表示されている。私はその通話相手を暴露した。

「サヨリ、いったい何をして……」

『浩二さん、私が沙頼さんに頼んだことです。彼女に再び手を出したらいけませんよ。手を出したらどうなるか』

 ガチャリ。電話越しにどこかのドアが開く音がする。そして、その音と同じ音が近くで聞こえた。

『沙頼さん、この度は本当にありがとうございました。この男の始末は、私にお任せください。それで、すべてが終わったら、私のお話を聞いてくれますか?』

「ば、バカな!」

 さらには、電話で話しているはずなのに、なぜか電話越しではない、本物の声が私の家の玄関から響いてくる。テーブルで聞こえる声が玄関からも聞こえる。それが意味するのは。

「そんなに驚かないでくださいよ」

 REONAさんが私の家にやってきた。そして、私たちの前に姿を見せた。

いきなりの自分の妻の登場に驚愕の表情を浮かべる男だが、私はすでに子の顛末を知っていたため、特に驚くことはなかった。


「今までの沙頼さんとの話は聞いていました。やはり、あなたとはもっと早く別れるべきでした。翔琉のためにも、両親の仲が悪いのは良くないと思い、必死にあなたとの仲を取り繕っていたのが間違いでした」

「お、お前、いつから聞いていた!」

 男は突然やってきた妻に夢中で、他人の部屋にいるのにもかかわらず、REONAさんに詰め寄り、胸倉をつかもうとした。

「他人が見ている前ですよ。先生が困惑しています」

 鬼の形相の男に、REONAさんは慣れているのか、優しく諭しながら、つかみかかってきた腕を交わしていた。つかみ損ねた腕が宙にさまよい、男の怒りは増していく。

「このくそあま!」

「そういう野蛮なところが私は嫌いです」

 大声で自分の妻に怒鳴り散らす姿を目の当たりにして、自分自身に本気の怒りが向かないことにほっとする。もう、自分一人でこの男の怒りを受け止める必要はない。成人男性一人と成人女性二人。男が本気を出したら、不利な状況になるかもしれないが、そうはならないという確信があった。REONAさんに任せればなんとかなるだろう。

後は、このままどうやって問題を解決していくかが重要である。

 そのための準備はすでに進められている。男はすでに追い詰められている。男の未来が明るく輝かしいものになることはない。


「あの、少し落ち着かれてはどうですか?幸い、私には時間がありますし、REONAさんも、神永さんの怒りを煽らないでください。まずはお茶でも入れますから、お二人とも、冷静に話し合いましょう?」

 このまま放っておいても、REONAさんの方が何とかしてくれるだろうが、なるべく穏便に物事を勧めていきたい。私は二人をイスに勧め、お茶を入れることにした。



 私がキッチンでお茶を入れている間に、二人は少し落ち着いたのだろう。二人の間には依然として緊迫した空気が流れていたが、怒鳴り合いの展開にはなっていなかった。

 そのことに少し安心して、三人分のお茶を載せたお盆をテーブルに置く。私と男の前に置かれていた湯呑みは片付け、新たに入れなおしたお茶を代わりに置いていく。新たなる来客、REONAさんの前にも準備する。飲みかけのお茶をキッチンのシンクに入れると、私も彼らの会話に参加するために席に着こうとしたが、そこで少しの間、動きが止まってしまう。私が座る席を考えていなかった。

私の座る席はどこがいいだろうか。先ほどまでは、男と私は正面になるように座っていた。しかし、今は私が座っていた席にREONAさんが腰かけている。この場合、どこに座るのが正解だろうか。

「沙頼さんはこちらにどうぞ」

「ああ、はい。では隣に座らせていただきます」

 それにしても、この男と言い、REONAさんと言い、二人とも今日はずいぶん家主である私に対して偉そうな態度だ。私がこの家の主で、彼らは来客だというのに、これでは家主の威厳が皆無である。ここは私の家のはずだが、なぜ、彼らに指図されているのだろうか。疑問に思うが、この状況で口にできるはずもない。おとなしく、もう一つの湯呑みをREONAさんの隣に移動させて私も席に着く。

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