ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち

折原さゆみ

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「不倫の証拠を」

「不倫?不穏な言葉ですね」

「ええと、ああ、少し待ってください。部屋が不潔ですので、少しだけ時間をください。そうだ!近くにコンビニがあるので、そこで時間をつぶしてください。10分で、神永さんが入れるような空間にします!」

「ああ、申し訳ない。女性の家に突然訪問は失礼でした。先生の言う通り、近くのコンビニで時間をつぶしていますので、用意ができたら、電話ください」

「ワカリマシタ」

 追い払うことばかりに気を取られていたが、私は彼と話をする必要があることを思い出す。REONAさんたちと交わした約束がある。無意識にその目的を口にしていたらしい。しかし、電話口での独り言に、男は反応していたが、何とかごまかし、男と会う前に10分の時間を得ることに成功した。


 とはいえ、時間を得たというには、10分というのはあまりに短い時間だ。10分で何ができるというのか。妹に相談してみようか。いや、最近、何かあるたびに妹に頼りすぎだ。それは姉としてどうかと思う。

 だとしたら、この場合、誰に相談するのが得策か。

「もしもし。REONAさんですか。これから、私の家にあなたの旦那さんをお呼びすることになったんですが、私はどうしたらいいですか?」

 私は、面倒くさくなって、当事者に意見を求めることにした。そして、彼女から一つの助言をもらい、実行することにした。


「お邪魔します」

 約束の時間の10分では部屋の片づけはできそうになかった。普段は柚子や深波、担当編集の加藤さんくらいしか来客はない。アラフォーの独身女性の家だからと言って、ゴミ屋敷ではないが、キレイに片づけられているというわけでもない。

 REONAさんとの電話で時間を取られ、その後に慌ててリビングに掃除機をかけるだけで、タイムリミットとなってしまった。

「どうぞ、神永家に比べたら汚い部屋ですが上がってください」

 10分を過ぎたので、男に電話をかける。本来なら、家に招き入れたくないし、電話もしたくないが、これで今まで私が抱えてきた問題が解決するのなら、我慢してやれるというものだ。

「別にそこまで謙遜するほど汚くないじゃないですか。うちだって、あまりきれいに片付いてはいませんよ」

「それで、話とはいったい、何のことでしょうか?」

 今まで招いた、彼の家族にした対応と同じことを男にしようとしたが、身体が思うように動かない。ただ、リビングのイスに座るように勧めて、彼にお茶を入れるだけだ。たったそれだけのことなのに、どうしてこうも身体がこわばってしまうのか。

「立ち話することでもないから、椅子に座ってもいいかな」

「ハイ、ドウゾオスワリクダサイ」

 なぜ、家に招いた私がイスを勧めず、招かれた男に座っていいかと聞かれるのか。

「そういえば、こんな感じでしたね。優しそうな顔して、自分勝手な傲慢な性格だったことを忘れていました」

 疑問に思う必要はなかった。この男の本性を知っていたら、こんなことを悩むのが馬鹿らしくなる。この男はもとからこんな性格だった。外面と声が良くて、女性ファンも多いが、中身はクズ野郎だった。だからこそ、彼女は。

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