47 / 62
④
しおりを挟む
「不倫の証拠を」
「不倫?不穏な言葉ですね」
「ええと、ああ、少し待ってください。部屋が不潔ですので、少しだけ時間をください。そうだ!近くにコンビニがあるので、そこで時間をつぶしてください。10分で、神永さんが入れるような空間にします!」
「ああ、申し訳ない。女性の家に突然訪問は失礼でした。先生の言う通り、近くのコンビニで時間をつぶしていますので、用意ができたら、電話ください」
「ワカリマシタ」
追い払うことばかりに気を取られていたが、私は彼と話をする必要があることを思い出す。REONAさんたちと交わした約束がある。無意識にその目的を口にしていたらしい。しかし、電話口での独り言に、男は反応していたが、何とかごまかし、男と会う前に10分の時間を得ることに成功した。
とはいえ、時間を得たというには、10分というのはあまりに短い時間だ。10分で何ができるというのか。妹に相談してみようか。いや、最近、何かあるたびに妹に頼りすぎだ。それは姉としてどうかと思う。
だとしたら、この場合、誰に相談するのが得策か。
「もしもし。REONAさんですか。これから、私の家にあなたの旦那さんをお呼びすることになったんですが、私はどうしたらいいですか?」
私は、面倒くさくなって、当事者に意見を求めることにした。そして、彼女から一つの助言をもらい、実行することにした。
「お邪魔します」
約束の時間の10分では部屋の片づけはできそうになかった。普段は柚子や深波、担当編集の加藤さんくらいしか来客はない。アラフォーの独身女性の家だからと言って、ゴミ屋敷ではないが、キレイに片づけられているというわけでもない。
REONAさんとの電話で時間を取られ、その後に慌ててリビングに掃除機をかけるだけで、タイムリミットとなってしまった。
「どうぞ、神永家に比べたら汚い部屋ですが上がってください」
10分を過ぎたので、男に電話をかける。本来なら、家に招き入れたくないし、電話もしたくないが、これで今まで私が抱えてきた問題が解決するのなら、我慢してやれるというものだ。
「別にそこまで謙遜するほど汚くないじゃないですか。うちだって、あまりきれいに片付いてはいませんよ」
「それで、話とはいったい、何のことでしょうか?」
今まで招いた、彼の家族にした対応と同じことを男にしようとしたが、身体が思うように動かない。ただ、リビングのイスに座るように勧めて、彼にお茶を入れるだけだ。たったそれだけのことなのに、どうしてこうも身体がこわばってしまうのか。
「立ち話することでもないから、椅子に座ってもいいかな」
「ハイ、ドウゾオスワリクダサイ」
なぜ、家に招いた私がイスを勧めず、招かれた男に座っていいかと聞かれるのか。
「そういえば、こんな感じでしたね。優しそうな顔して、自分勝手な傲慢な性格だったことを忘れていました」
疑問に思う必要はなかった。この男の本性を知っていたら、こんなことを悩むのが馬鹿らしくなる。この男はもとからこんな性格だった。外面と声が良くて、女性ファンも多いが、中身はクズ野郎だった。だからこそ、彼女は。
「不倫?不穏な言葉ですね」
「ええと、ああ、少し待ってください。部屋が不潔ですので、少しだけ時間をください。そうだ!近くにコンビニがあるので、そこで時間をつぶしてください。10分で、神永さんが入れるような空間にします!」
「ああ、申し訳ない。女性の家に突然訪問は失礼でした。先生の言う通り、近くのコンビニで時間をつぶしていますので、用意ができたら、電話ください」
「ワカリマシタ」
追い払うことばかりに気を取られていたが、私は彼と話をする必要があることを思い出す。REONAさんたちと交わした約束がある。無意識にその目的を口にしていたらしい。しかし、電話口での独り言に、男は反応していたが、何とかごまかし、男と会う前に10分の時間を得ることに成功した。
とはいえ、時間を得たというには、10分というのはあまりに短い時間だ。10分で何ができるというのか。妹に相談してみようか。いや、最近、何かあるたびに妹に頼りすぎだ。それは姉としてどうかと思う。
だとしたら、この場合、誰に相談するのが得策か。
「もしもし。REONAさんですか。これから、私の家にあなたの旦那さんをお呼びすることになったんですが、私はどうしたらいいですか?」
私は、面倒くさくなって、当事者に意見を求めることにした。そして、彼女から一つの助言をもらい、実行することにした。
「お邪魔します」
約束の時間の10分では部屋の片づけはできそうになかった。普段は柚子や深波、担当編集の加藤さんくらいしか来客はない。アラフォーの独身女性の家だからと言って、ゴミ屋敷ではないが、キレイに片づけられているというわけでもない。
REONAさんとの電話で時間を取られ、その後に慌ててリビングに掃除機をかけるだけで、タイムリミットとなってしまった。
「どうぞ、神永家に比べたら汚い部屋ですが上がってください」
10分を過ぎたので、男に電話をかける。本来なら、家に招き入れたくないし、電話もしたくないが、これで今まで私が抱えてきた問題が解決するのなら、我慢してやれるというものだ。
「別にそこまで謙遜するほど汚くないじゃないですか。うちだって、あまりきれいに片付いてはいませんよ」
「それで、話とはいったい、何のことでしょうか?」
今まで招いた、彼の家族にした対応と同じことを男にしようとしたが、身体が思うように動かない。ただ、リビングのイスに座るように勧めて、彼にお茶を入れるだけだ。たったそれだけのことなのに、どうしてこうも身体がこわばってしまうのか。
「立ち話することでもないから、椅子に座ってもいいかな」
「ハイ、ドウゾオスワリクダサイ」
なぜ、家に招いた私がイスを勧めず、招かれた男に座っていいかと聞かれるのか。
「そういえば、こんな感じでしたね。優しそうな顔して、自分勝手な傲慢な性格だったことを忘れていました」
疑問に思う必要はなかった。この男の本性を知っていたら、こんなことを悩むのが馬鹿らしくなる。この男はもとからこんな性格だった。外面と声が良くて、女性ファンも多いが、中身はクズ野郎だった。だからこそ、彼女は。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる