ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち

折原さゆみ

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「ブーブー」

 答えの出ない問題に頭を悩ませていると、突然、スマホが振動を始めた。慌てて誰からの電話か確認すると、見知らぬ相手からだった。

「出るべきか、出ないべきか」

 このタイミングで見知らぬ相手からの電話。おそらく、間違い電話ではない。私の直感が出るなと言っている。私に用事があってかけてくる人物で、私が登録していない人物が一人だけ存在する。

「もしもし。秋葉ですけど」

「良かった。出てくれました。僕です。神永浩二です」

「私はあなたに話すことはないですけど」

「僕にはありますよ。15年前のことで話したいことが」

「ツーツー」


 15年前というフレーズを聞いたとたん、無意識に通話を終了させていた。

「思わず、切ってしまった……」

 話すことがないなど嘘である。むしろ、あの男には聞きたいことが山ほどある。それなのに、いきなり電話を切ってしまった。やはり、私にとって、あの男は過去の男ではなく、いまだに忘れられない男であるのか。

「ピンポーン」

 電話を切ってしまった自分の行動に呆然として、インターホンが鳴っている音に気付くのが遅れてしまった。

「ピンポーン」

 居留守を使っていると思われているのか、再度、インターホンが鳴らされる。インターホンの画面を見ようと身体を動かすが、腰が抜けてしまって動けない。よほど、あの男と電話に動揺しているのだろう。

 最近、宅配を頼んだ記憶はないし、締め切り間近の原稿もなかったはずだ。そうなると、いったい誰が私に用があるのだろうか。

「ブーブー」

「メッセージ?」

 インターホンが三回鳴らされることはなく、その後スマホにメッセージが一件送られてきた。内容を確認するためスマホの画面を開くが、すぐにスマホを閉じて、ベッドに放り投げる。


「さっきはいきなり電話を切られて驚いたよ。落ち着いたら、また連絡してもいいかな」

 あの男からのメッセージだった。さすがに電話を強制的に終了させたことを謝罪しないのは後味が悪い。とはいえ、あの男と連絡を取りたくはない。

「ブーブー」

 また、スマホが振動し始めた。今度は誰だろうか。メッセージの後すぐに男が電話をかけてきたのか。恐る恐る投げ出したスマホを確認すると、ほっとした。

「もしもし、深波?」

「もしもしじゃないんだけど。いろいろあって、いま、お姉ちゃんの家にREONAさんと翔琉君が向かっているの!もうついているかもしれないけど、念のため連絡したんだけど」

「えっ!」

 急いで電話を切って、インターホン画面を確認する。そこには二人の親子が映っていた。インターホンの録画時刻を確認すると、すでに10分以上が経過していた。私がいないとわかり、その場を去ってしまったかもしれない。慌ててマンションの一階まで降りるがやはり、彼らの姿は見当たらない。

 自分の部屋に戻り、スマホに何かメッセージが残されていないかと探してみると、一つのメッセージが残されていた。

「今日、もしよろしければお話しできませんか?先ほど、先生のマンションを訪れたのですが留守でした。先生にも仕事の都合などあると思いますが、至急、会って話したいことができました。先日の体育祭でのお詫びもかねて、私の家に先生をご招待したいと思いますので、このメッセージを確認後、なるべく早めにご連絡ください」

「至急、会って話したいこと……」

 スマホをよく確認すると、不在着信が入っていた。ちょうど、あの男から電話がかかってきた時間だ。
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