ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち

折原さゆみ

文字の大きさ
上 下
45 / 62

しおりを挟む
「ブーブー」

 答えの出ない問題に頭を悩ませていると、突然、スマホが振動を始めた。慌てて誰からの電話か確認すると、見知らぬ相手からだった。

「出るべきか、出ないべきか」

 このタイミングで見知らぬ相手からの電話。おそらく、間違い電話ではない。私の直感が出るなと言っている。私に用事があってかけてくる人物で、私が登録していない人物が一人だけ存在する。

「もしもし。秋葉ですけど」

「良かった。出てくれました。僕です。神永浩二です」

「私はあなたに話すことはないですけど」

「僕にはありますよ。15年前のことで話したいことが」

「ツーツー」


 15年前というフレーズを聞いたとたん、無意識に通話を終了させていた。

「思わず、切ってしまった……」

 話すことがないなど嘘である。むしろ、あの男には聞きたいことが山ほどある。それなのに、いきなり電話を切ってしまった。やはり、私にとって、あの男は過去の男ではなく、いまだに忘れられない男であるのか。

「ピンポーン」

 電話を切ってしまった自分の行動に呆然として、インターホンが鳴っている音に気付くのが遅れてしまった。

「ピンポーン」

 居留守を使っていると思われているのか、再度、インターホンが鳴らされる。インターホンの画面を見ようと身体を動かすが、腰が抜けてしまって動けない。よほど、あの男と電話に動揺しているのだろう。

 最近、宅配を頼んだ記憶はないし、締め切り間近の原稿もなかったはずだ。そうなると、いったい誰が私に用があるのだろうか。

「ブーブー」

「メッセージ?」

 インターホンが三回鳴らされることはなく、その後スマホにメッセージが一件送られてきた。内容を確認するためスマホの画面を開くが、すぐにスマホを閉じて、ベッドに放り投げる。


「さっきはいきなり電話を切られて驚いたよ。落ち着いたら、また連絡してもいいかな」

 あの男からのメッセージだった。さすがに電話を強制的に終了させたことを謝罪しないのは後味が悪い。とはいえ、あの男と連絡を取りたくはない。

「ブーブー」

 また、スマホが振動し始めた。今度は誰だろうか。メッセージの後すぐに男が電話をかけてきたのか。恐る恐る投げ出したスマホを確認すると、ほっとした。

「もしもし、深波?」

「もしもしじゃないんだけど。いろいろあって、いま、お姉ちゃんの家にREONAさんと翔琉君が向かっているの!もうついているかもしれないけど、念のため連絡したんだけど」

「えっ!」

 急いで電話を切って、インターホン画面を確認する。そこには二人の親子が映っていた。インターホンの録画時刻を確認すると、すでに10分以上が経過していた。私がいないとわかり、その場を去ってしまったかもしれない。慌ててマンションの一階まで降りるがやはり、彼らの姿は見当たらない。

 自分の部屋に戻り、スマホに何かメッセージが残されていないかと探してみると、一つのメッセージが残されていた。

「今日、もしよろしければお話しできませんか?先ほど、先生のマンションを訪れたのですが留守でした。先生にも仕事の都合などあると思いますが、至急、会って話したいことができました。先日の体育祭でのお詫びもかねて、私の家に先生をご招待したいと思いますので、このメッセージを確認後、なるべく早めにご連絡ください」

「至急、会って話したいこと……」

 スマホをよく確認すると、不在着信が入っていた。ちょうど、あの男から電話がかかってきた時間だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...