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「急に黙ってどうしたの?ねえ、顔色が悪いけど、僕の声、聞こえてる?」
急に黙り込んだ私にじれたのか、翔琉が私の顔を覗き込んできた。思わず、彼の顔を凝視してしまう。翔琉は、父親によく似ているが、柚子はあまり似ていない気がする。そのせいで、今まで深波の家で彼女の子供としてばれずに生きてきたのだから、それは私としては似ていなくて良かったと思ってしまう。
「ねえ、これはあくまで仮定の話、可能性の話だけど、少しだけ私の知り合いの話を聞いてくれる?」
柚子のことを隠してきて15年。そろそろ、私は秘密を隠し切れなくなってきた。いつばれるかもしれない不安な日から解放されたいと考えたのかもしれない。私は彼に知り合いの話として、柚子のことを話すことにした。
「私の知り合いにね。小説家がいるんだけど、その子の作品がめでたいことにアニメ化されたの。そこで、ある声優さんと出会うんだけど」
「その知り合いっていう形で話すのはやめた方がいいよ。そういう話をする奴って、十中八九、自分のことを言っているよね。バレバレだから」
いざ、知り合いのことのように話し出すと、すぐにストップをかけられた。私も知り合いの体はないなと思っている。そもそも、小説でも漫画でもアニメでも、この手の話は彼の言う通り、自分のことを隠しながら相談するという流れがほとんどだ。こうして自分のことではないと言っておけば、多少の罪悪感とか羞恥とかが薄くなると思うから、やってしまうのだ。とはいえ、さすがにいきなり話題を変えすぎた感は否めない。
「やっぱりわかるよね。まあ、翔琉君だから特別に私の秘密を一つ、教えて差し上げよう」
なんだか上から目線になってしまったが、テンションをまともに保っていたら、秘密なんて暴露できない。よくわからないノリで一気に話すことにした。
「知り合いの話しという体はやめたけど、本当はその体で話したいくらいの内容だから、途中で気分が悪くなったり、やるせない気持ちが出てきたりしたら、話の途中でも私の言葉を止めてもいいからね」
念のため、話し始める前に忠告をしておくことにした。
「きっと、僕は気分が悪くなっても、先生の話を最後まで聞くと思うけどね」
翔琉君の言葉を聞き、私は深呼吸して自らの過去を彼に話すことにした。
「私の職業は知っていると思うけど、運がいいことに私は小説家としての仕事を得た。さらにすごいことに、自らの作品のアニメ化が決定した。もう、15年も前の話になるんだけどね。誰にも言えない秘密が生まれたのは、そこから」
私が世間に隠したいと思うような秘密を持ったのは、自分の作品のアニメ化がきっかけであることは間違いない。その秘密の元凶ともいえるあの男の息子にこんな話をするとは、なんだか不思議な気分だ。
それから、私は自らの秘密にしたい過去を洗いざらい彼に話した。とはいえ、さすがにまだあの男の息子が私の一晩の相手だったとは言えなかった。あの男との間にできた子供についても、誰なのかは明言しなかった。
急に黙り込んだ私にじれたのか、翔琉が私の顔を覗き込んできた。思わず、彼の顔を凝視してしまう。翔琉は、父親によく似ているが、柚子はあまり似ていない気がする。そのせいで、今まで深波の家で彼女の子供としてばれずに生きてきたのだから、それは私としては似ていなくて良かったと思ってしまう。
「ねえ、これはあくまで仮定の話、可能性の話だけど、少しだけ私の知り合いの話を聞いてくれる?」
柚子のことを隠してきて15年。そろそろ、私は秘密を隠し切れなくなってきた。いつばれるかもしれない不安な日から解放されたいと考えたのかもしれない。私は彼に知り合いの話として、柚子のことを話すことにした。
「私の知り合いにね。小説家がいるんだけど、その子の作品がめでたいことにアニメ化されたの。そこで、ある声優さんと出会うんだけど」
「その知り合いっていう形で話すのはやめた方がいいよ。そういう話をする奴って、十中八九、自分のことを言っているよね。バレバレだから」
いざ、知り合いのことのように話し出すと、すぐにストップをかけられた。私も知り合いの体はないなと思っている。そもそも、小説でも漫画でもアニメでも、この手の話は彼の言う通り、自分のことを隠しながら相談するという流れがほとんどだ。こうして自分のことではないと言っておけば、多少の罪悪感とか羞恥とかが薄くなると思うから、やってしまうのだ。とはいえ、さすがにいきなり話題を変えすぎた感は否めない。
「やっぱりわかるよね。まあ、翔琉君だから特別に私の秘密を一つ、教えて差し上げよう」
なんだか上から目線になってしまったが、テンションをまともに保っていたら、秘密なんて暴露できない。よくわからないノリで一気に話すことにした。
「知り合いの話しという体はやめたけど、本当はその体で話したいくらいの内容だから、途中で気分が悪くなったり、やるせない気持ちが出てきたりしたら、話の途中でも私の言葉を止めてもいいからね」
念のため、話し始める前に忠告をしておくことにした。
「きっと、僕は気分が悪くなっても、先生の話を最後まで聞くと思うけどね」
翔琉君の言葉を聞き、私は深呼吸して自らの過去を彼に話すことにした。
「私の職業は知っていると思うけど、運がいいことに私は小説家としての仕事を得た。さらにすごいことに、自らの作品のアニメ化が決定した。もう、15年も前の話になるんだけどね。誰にも言えない秘密が生まれたのは、そこから」
私が世間に隠したいと思うような秘密を持ったのは、自分の作品のアニメ化がきっかけであることは間違いない。その秘密の元凶ともいえるあの男の息子にこんな話をするとは、なんだか不思議な気分だ。
それから、私は自らの秘密にしたい過去を洗いざらい彼に話した。とはいえ、さすがにまだあの男の息子が私の一晩の相手だったとは言えなかった。あの男との間にできた子供についても、誰なのかは明言しなかった。
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