28 / 62
➁
しおりを挟む
「いずれ知ることになるから、隠す必要もない、か。そうだよ、柚子から君の話は聞いている。私の作品のファンが同じクラスに居て、それが君だということをすでに知っている」
電車の中でははぐらかしたが、なんだか隠し事をしているのが面倒になった。別に柚子が姪だったとしても、翔琉君と柚子が異母兄妹ということがばれるわけではない。柚子との関係を認めることにした。
「やけにあっさり認めるね。どうして柚子って気付いたか、知りたくないの?」
「理由を聞いたところで、事実が覆るわけでもないから、別に興味はないかな」
「ええ、僕は話したくてたまらないよ。なんだか、先生と話していると、不意に柚子の顔が頭に浮かぶんだ。どうしてだろうと考えたとき、あることに気付いた。なんだと思う?」
興味がないと言ったのに、翔琉君は勝手に話し始めた。話を聞いていると、私に話を振ってきたので、仕方なく思ったことを正直に伝える。
「似ているから、でしょう?そりゃあ、柚子は私の姪だから、少しくらい似ていても不思議じゃない。別に驚くことでもない、と思う」
柚子と似ていると言われるとつい、私と柚子の本当の関係を知られていないかと疑心暗鬼になってしまう。言葉の最後が尻すぼみになってしまった。
「似ているのは不思議じゃない、か。似ていることは否定しないんだね。ねえ、柚子は先生に僕のことをどんなふうに話しているの?僕たまに、柚子と自分は似ているなと思うことがあるんだよ。なんでだろうね。どう考えても、僕たちに似ている要素なんてないはずなのに」
やはり、少しでも血のつながりがあると、直感やら本能やらが働いて、自分と同族だと思えるのだろうか。そうなると、彼らが惹かれ合ったのは、恋愛感情ではなく、兄弟愛からだというのか。今は柚子の方は恋愛感情から惹かれたと思っている。
「柚子のことはどう思う?」
彼女の方は恋愛感情から自分たちが似ていると思い込んでいる。無理やりそのように解釈することにして、彼の方はどうか聞いてみることにした。
「いきなりの質問だね。どうだろうなあ、最初は僕のことを見てキャーキャー言っていたけど、最近は言わなくなって、話しやすくなったかな」
「異性としては?好きになった?」
「ぐいぐい来るね。もし、僕が彼女のことを好きだと言ったらどうするの?姪のことをよろしくとでも言ってくれる?」
軽い口調で、翔琉君は質問の答えをはぐらかしてくるが、ここはしっかりと答えを聞いておいた方がいい。恋愛感情から彼らは互いを似ていると思い込んでいる。そう思い込んでいると考えたい。
「私は姪であって、彼女の母親ではないから認めるとかは、私が決めることじゃない。でもまあ、話しやすい異性ということは、これから恋愛感情が芽生える可能性もあるし、もしかしたら、すでに自分が気付いていないだけで、柚子に……」
言葉が途中で止まってしまった。もし、彼らが真実を知り、兄妹だと知った時には、彼らはどんな反応をするのだろうか。彼らが恋愛感情から惹かれたとしても、それが何になるというのか。ただ、私の心の平穏を一時だけでも穏やかにしたいだけではないのか。自己満足で彼らの思いをゆがめてしまうのか。
電車の中でははぐらかしたが、なんだか隠し事をしているのが面倒になった。別に柚子が姪だったとしても、翔琉君と柚子が異母兄妹ということがばれるわけではない。柚子との関係を認めることにした。
「やけにあっさり認めるね。どうして柚子って気付いたか、知りたくないの?」
「理由を聞いたところで、事実が覆るわけでもないから、別に興味はないかな」
「ええ、僕は話したくてたまらないよ。なんだか、先生と話していると、不意に柚子の顔が頭に浮かぶんだ。どうしてだろうと考えたとき、あることに気付いた。なんだと思う?」
興味がないと言ったのに、翔琉君は勝手に話し始めた。話を聞いていると、私に話を振ってきたので、仕方なく思ったことを正直に伝える。
「似ているから、でしょう?そりゃあ、柚子は私の姪だから、少しくらい似ていても不思議じゃない。別に驚くことでもない、と思う」
柚子と似ていると言われるとつい、私と柚子の本当の関係を知られていないかと疑心暗鬼になってしまう。言葉の最後が尻すぼみになってしまった。
「似ているのは不思議じゃない、か。似ていることは否定しないんだね。ねえ、柚子は先生に僕のことをどんなふうに話しているの?僕たまに、柚子と自分は似ているなと思うことがあるんだよ。なんでだろうね。どう考えても、僕たちに似ている要素なんてないはずなのに」
やはり、少しでも血のつながりがあると、直感やら本能やらが働いて、自分と同族だと思えるのだろうか。そうなると、彼らが惹かれ合ったのは、恋愛感情ではなく、兄弟愛からだというのか。今は柚子の方は恋愛感情から惹かれたと思っている。
「柚子のことはどう思う?」
彼女の方は恋愛感情から自分たちが似ていると思い込んでいる。無理やりそのように解釈することにして、彼の方はどうか聞いてみることにした。
「いきなりの質問だね。どうだろうなあ、最初は僕のことを見てキャーキャー言っていたけど、最近は言わなくなって、話しやすくなったかな」
「異性としては?好きになった?」
「ぐいぐい来るね。もし、僕が彼女のことを好きだと言ったらどうするの?姪のことをよろしくとでも言ってくれる?」
軽い口調で、翔琉君は質問の答えをはぐらかしてくるが、ここはしっかりと答えを聞いておいた方がいい。恋愛感情から彼らは互いを似ていると思い込んでいる。そう思い込んでいると考えたい。
「私は姪であって、彼女の母親ではないから認めるとかは、私が決めることじゃない。でもまあ、話しやすい異性ということは、これから恋愛感情が芽生える可能性もあるし、もしかしたら、すでに自分が気付いていないだけで、柚子に……」
言葉が途中で止まってしまった。もし、彼らが真実を知り、兄妹だと知った時には、彼らはどんな反応をするのだろうか。彼らが恋愛感情から惹かれたとしても、それが何になるというのか。ただ、私の心の平穏を一時だけでも穏やかにしたいだけではないのか。自己満足で彼らの思いをゆがめてしまうのか。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
風船葛の実る頃
藤本夏実
ライト文芸
野球少年の蒼太がラブレター事件によって知り合った京子と岐阜の町を探索するという、地元を紹介するという意味でも楽しい作品となっています。又、この本自体、藤本夏実作品の特選集となっています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サドガシマ作戦、2025年初冬、ロシア共和国は突如として佐渡ヶ島に侵攻した。
セキトネリ
ライト文芸
2025年初冬、ウクライナ戦役が膠着状態の中、ロシア連邦東部軍管区(旧極東軍管区)は突如北海道北部と佐渡ヶ島に侵攻。総責任者は東部軍管区ジトコ大将だった。北海道はダミーで狙いは佐渡ヶ島のガメラレーダーであった。これは中国の南西諸島侵攻と台湾侵攻を援助するための密約のためだった。同時に北朝鮮は38度線を越え、ソウルを占拠した。在韓米軍に対しては戦術核の電磁パルス攻撃で米軍を朝鮮半島から駆逐、日本に退避させた。
その中、欧州ロシアに対して、東部軍管区ジトコ大将はロシア連邦からの離脱を決断、中央軍管区と図ってオビ川以東の領土を東ロシア共和国として独立を宣言、日本との相互安保条約を結んだ。
佐渡ヶ島侵攻(通称サドガシマ作戦、Operation Sadogashima)の副指揮官はジトコ大将の娘エレーナ少佐だ。エレーナ少佐率いる東ロシア共和国軍女性部隊二千人は、北朝鮮のホバークラフトによる上陸作戦を陸自水陸機動団と阻止する。
※このシリーズはカクヨム版「サドガシマ作戦(https://kakuyomu.jp/works/16818093092605918428)」と重複しています。ただし、カクヨムではできない説明用の軍事地図、武器詳細はこちらで掲載しております。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる