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9少年と出会いは唐突に①
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「どうして僕の名前を知っているんですか?」
再度問われた質問に、どう答えようか迷ったが、まずは電車に乗ることが先決である。
「電車の時間もあるし、電車を待ちながらでも説明するね」
「ワカリマシタ」
なぜかカタコトの返事が来たが、気にせず私は駅のホームに向かい歩き出す。後ろを振り返ると、彼も私の後をついてきた。
改札を抜けて駅のホームに歩いていこうとしたが、翔琉君はどこに住んでいるのだろうか。いや、彼がどこに住んでいるのかなど明白だ。何せ、あの男の息子である。別居だという話も聞かないので、一緒に住んでいるのだろう。同じ方向の電車に乗ることになってしまった。
「見間違いでなければ、あなたは浅羽季四李先生ですか?」
一緒に階段をのぼり、同じ電車を待つために、ホームに設置されているベンチに腰掛ける。私はベンチに腰掛けたのに、翔琉君は腰かけようとせず、私に質問を投げかけた。思わぬ質問に言葉が詰まるが、ここはごまかしても仕方がない。肯定とともに私だとわかった理由を尋ねることにした。
「ご名答。確かに私はそのペンネームで作品を世に出しているけど、どうして私の素性がわかったのかな?」
「ただの勘、ではダメですか?いや、それは無理がありますね。きちんと説明しますから、先にあなたが僕のことを知っている理由を教えてください。その後に僕もきちんと理由をお話しします」
「先に私から説明させるのね。まあ、別にいいけど、このままここで話していたら長くなりそうだから、電車に乗ってからでもいいかな。翔琉君は確か、ここから5駅先の駅で降りるんだよね」
「はあ、その発言はどうかと思いますよ」
高校生にため息をつかれてしまった。ため息をつかれた理由を考えてみると、すぐに自分の発言が間違いだったと気づく。名前を知っていて、しかも住んでいる場所まで把握されている。しかも、その相手は自分とは初対面。これはもう、ストーカーになってしまう。慌てて弁解すると、どんどんやばい方向に話が進んでいく。
「ええとね、私には高校生の姪がいて、その子から入学式の写真を見せてもらったの。そこに君のことが映っていて、ほら、翔琉君って、イケメンって言われない?私はかっこいいなと思って、印象に残っていたの」
「ふうん。それで?」
「それでと言われても、そう!思い出した。君が声優の神永浩二に似ているなと思ったんだよ!入学式の日に、REONAさんが来ていたと言っていたから、それでピンと来たんだ。君は彼らの息子だと。昔、君のご両親と仕事をしたことがあって、家がどの辺になるのか知っていたんだよ!」
「なるほど」
先ほどから、私の説明に言葉少なに返事をする少年に、なぜか私の方が焦ってどんどん言葉が口から出てくる。
「ていうか、ごめんね、見ず知らずの人から、いきなり名前を呼ばれたら気持ちが悪いし、不審者に思われても仕方ないね」
「いいえ、僕もあなたのことを知っていましたから、お互い様です」
「3番線に列車がまいります。黄色い線尾内側までお下がりください」
話していると、私たちが乗るべき電車がホームにやってきた。駅のアナウンスが入り、電車が停車してドアが開く。
「話は電車の中でしましょう」
「ソウデスネ」
今度は私の方がカタコトの返事をして、私たちは電車に乗り込んだ。時刻は午後7時過ぎで、部活や習い事帰りの高校生や、仕事終わりのサラリーマンなどが次々と電車に乗り込んでいく。翔琉君と話すのに夢中で、ホームに人が結構いたことにも気付かなった。
再度問われた質問に、どう答えようか迷ったが、まずは電車に乗ることが先決である。
「電車の時間もあるし、電車を待ちながらでも説明するね」
「ワカリマシタ」
なぜかカタコトの返事が来たが、気にせず私は駅のホームに向かい歩き出す。後ろを振り返ると、彼も私の後をついてきた。
改札を抜けて駅のホームに歩いていこうとしたが、翔琉君はどこに住んでいるのだろうか。いや、彼がどこに住んでいるのかなど明白だ。何せ、あの男の息子である。別居だという話も聞かないので、一緒に住んでいるのだろう。同じ方向の電車に乗ることになってしまった。
「見間違いでなければ、あなたは浅羽季四李先生ですか?」
一緒に階段をのぼり、同じ電車を待つために、ホームに設置されているベンチに腰掛ける。私はベンチに腰掛けたのに、翔琉君は腰かけようとせず、私に質問を投げかけた。思わぬ質問に言葉が詰まるが、ここはごまかしても仕方がない。肯定とともに私だとわかった理由を尋ねることにした。
「ご名答。確かに私はそのペンネームで作品を世に出しているけど、どうして私の素性がわかったのかな?」
「ただの勘、ではダメですか?いや、それは無理がありますね。きちんと説明しますから、先にあなたが僕のことを知っている理由を教えてください。その後に僕もきちんと理由をお話しします」
「先に私から説明させるのね。まあ、別にいいけど、このままここで話していたら長くなりそうだから、電車に乗ってからでもいいかな。翔琉君は確か、ここから5駅先の駅で降りるんだよね」
「はあ、その発言はどうかと思いますよ」
高校生にため息をつかれてしまった。ため息をつかれた理由を考えてみると、すぐに自分の発言が間違いだったと気づく。名前を知っていて、しかも住んでいる場所まで把握されている。しかも、その相手は自分とは初対面。これはもう、ストーカーになってしまう。慌てて弁解すると、どんどんやばい方向に話が進んでいく。
「ええとね、私には高校生の姪がいて、その子から入学式の写真を見せてもらったの。そこに君のことが映っていて、ほら、翔琉君って、イケメンって言われない?私はかっこいいなと思って、印象に残っていたの」
「ふうん。それで?」
「それでと言われても、そう!思い出した。君が声優の神永浩二に似ているなと思ったんだよ!入学式の日に、REONAさんが来ていたと言っていたから、それでピンと来たんだ。君は彼らの息子だと。昔、君のご両親と仕事をしたことがあって、家がどの辺になるのか知っていたんだよ!」
「なるほど」
先ほどから、私の説明に言葉少なに返事をする少年に、なぜか私の方が焦ってどんどん言葉が口から出てくる。
「ていうか、ごめんね、見ず知らずの人から、いきなり名前を呼ばれたら気持ちが悪いし、不審者に思われても仕方ないね」
「いいえ、僕もあなたのことを知っていましたから、お互い様です」
「3番線に列車がまいります。黄色い線尾内側までお下がりください」
話していると、私たちが乗るべき電車がホームにやってきた。駅のアナウンスが入り、電車が停車してドアが開く。
「話は電車の中でしましょう」
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今度は私の方がカタコトの返事をして、私たちは電車に乗り込んだ。時刻は午後7時過ぎで、部活や習い事帰りの高校生や、仕事終わりのサラリーマンなどが次々と電車に乗り込んでいく。翔琉君と話すのに夢中で、ホームに人が結構いたことにも気付かなった。
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