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56驚きの連続
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「おはようございます。栄枝先輩」
「お、おはよう。相沢さん」
会社に着くと、派遣社員の後輩がすでに仕事を始めていた。昨日のことがあって、もう仕事に来ないのかと思っていたので一瞬、身体が硬直してしまう。しかし、相手はそんな実乃梨の様子を気にすることなく、笑顔で実乃梨に話しかける。
「今日も仕事を頑張りましょう。私、決めたんです」
「な、何を」
「それは秘密です。まあ、先輩には特別に教えますが、ここで話すことでもないので。昼休憩にでもゆっくりと話します」
戸惑う実乃梨に対して、相沢はなぜか上機嫌で、鼻歌を歌いながら楽しそうに仕事に取り組み始めた。
「栄枝さん、社長が呼んでいますよ」
午前中の仕事に一段落がついたころ、実乃梨は社長に呼び出されていた。護衛がいなくなったことを追及されるのだろうか。それとも、昨日起きた事件のことを聞かれるのだろうか。どちらにしよ。あまり楽しい話ではないだろうと予想する。
「失礼します」
社長室の扉をノックすると、すぐに入室の許可が下りる。社長の声に従ってドアを開けると、そこには予想外の人物がソファに座っていた。先客がいたようだ。
「え、永徳さんが、なぜ」
永徳が社長室のソファに腰かけていた。朝、自分の家の玄関に迎えがなかったのに、こんなところで会うとは思っていなかった。実乃梨が驚いていると、社長が説明を始めた。
「ああ、驚かせてしまったね。彼が急に私に話があると言ってきてね。話を聞いたら、栄枝さんにも関係があることだと思って、君を」
「今朝は、栄枝さんの護衛につけなくて申し訳ありません」
社長の話を遮って、永徳がソファから立ち上がり、実乃梨に今朝のことを謝罪する。自分の会社の社長の話を遮って謝罪する永徳に、実乃梨は思わず首をかしげてしまう。永徳は自分より目上の人間の話を遮るほど、非常識な人間だっただろうか。
「いや、あなたはそんな人間でしたね」
今までの護衛中の彼を思い出すが、それだけでは真面目で誠実な仕事ぶりの彼しか見えてこない。しかし、実乃梨は永徳がやばい感情を心のうちに秘めていることを知ってしまった。だからこそ、昨日のような惨状が起こってしまったのだということも。
「永徳君。私はまだ、栄枝さんに話したいことがあるんだけど、途中で話を止めないでもらえるかい」
「申し訳ありません。つい、栄枝さんと話す男性に嫉妬して、口をはさんでしまいました」
しれっと、実乃梨に嫉妬していたことを告白するが、社長はそれを冗談だと受け止めたようだ。笑って、衝撃の事実を口にする。
「まったく、そんなことを口にしてはいけないよ。仮にも、婚約者を亡くしてしまった君が言うべきセリフではないよ。それに、君にはもう、新しい婚約者がいるのだろう?」
「新しい、婚約者?」
「はい、僕は先日、こちらに勤めだした派遣社員の『相沢永遠』さんとこの度、婚約することになりました」
相沢は今朝、実乃梨と会った時に、そんなそぶりはまったく見せなかった。いつも通り過ぎて拍子抜けするくらいだった。
「……ということだから、護衛の任務は引き続き行うけど、相沢さんのこともあるから、彼には自分の婚約者、相沢さんと、栄枝さんの二人の護衛を頼むことになった。栄枝さん?顔色が悪いようだけど、大丈夫かな」
永徳の真意を考えていたら、社長の話を聞きそびれてしまった。相沢と永徳。この二人は仲が悪かったはずだ。それが婚約とは何が起こったのだろう。いや、二人の利害が一致したのかもしれない。
「そういえば、相沢の不老不死から解放しようとしたのは、お前だったか」
実乃梨のつぶやきは永徳には聞こえたようで、にっこりと背筋が凍るような笑みを向けられた。
「お、おはよう。相沢さん」
会社に着くと、派遣社員の後輩がすでに仕事を始めていた。昨日のことがあって、もう仕事に来ないのかと思っていたので一瞬、身体が硬直してしまう。しかし、相手はそんな実乃梨の様子を気にすることなく、笑顔で実乃梨に話しかける。
「今日も仕事を頑張りましょう。私、決めたんです」
「な、何を」
「それは秘密です。まあ、先輩には特別に教えますが、ここで話すことでもないので。昼休憩にでもゆっくりと話します」
戸惑う実乃梨に対して、相沢はなぜか上機嫌で、鼻歌を歌いながら楽しそうに仕事に取り組み始めた。
「栄枝さん、社長が呼んでいますよ」
午前中の仕事に一段落がついたころ、実乃梨は社長に呼び出されていた。護衛がいなくなったことを追及されるのだろうか。それとも、昨日起きた事件のことを聞かれるのだろうか。どちらにしよ。あまり楽しい話ではないだろうと予想する。
「失礼します」
社長室の扉をノックすると、すぐに入室の許可が下りる。社長の声に従ってドアを開けると、そこには予想外の人物がソファに座っていた。先客がいたようだ。
「え、永徳さんが、なぜ」
永徳が社長室のソファに腰かけていた。朝、自分の家の玄関に迎えがなかったのに、こんなところで会うとは思っていなかった。実乃梨が驚いていると、社長が説明を始めた。
「ああ、驚かせてしまったね。彼が急に私に話があると言ってきてね。話を聞いたら、栄枝さんにも関係があることだと思って、君を」
「今朝は、栄枝さんの護衛につけなくて申し訳ありません」
社長の話を遮って、永徳がソファから立ち上がり、実乃梨に今朝のことを謝罪する。自分の会社の社長の話を遮って謝罪する永徳に、実乃梨は思わず首をかしげてしまう。永徳は自分より目上の人間の話を遮るほど、非常識な人間だっただろうか。
「いや、あなたはそんな人間でしたね」
今までの護衛中の彼を思い出すが、それだけでは真面目で誠実な仕事ぶりの彼しか見えてこない。しかし、実乃梨は永徳がやばい感情を心のうちに秘めていることを知ってしまった。だからこそ、昨日のような惨状が起こってしまったのだということも。
「永徳君。私はまだ、栄枝さんに話したいことがあるんだけど、途中で話を止めないでもらえるかい」
「申し訳ありません。つい、栄枝さんと話す男性に嫉妬して、口をはさんでしまいました」
しれっと、実乃梨に嫉妬していたことを告白するが、社長はそれを冗談だと受け止めたようだ。笑って、衝撃の事実を口にする。
「まったく、そんなことを口にしてはいけないよ。仮にも、婚約者を亡くしてしまった君が言うべきセリフではないよ。それに、君にはもう、新しい婚約者がいるのだろう?」
「新しい、婚約者?」
「はい、僕は先日、こちらに勤めだした派遣社員の『相沢永遠』さんとこの度、婚約することになりました」
相沢は今朝、実乃梨と会った時に、そんなそぶりはまったく見せなかった。いつも通り過ぎて拍子抜けするくらいだった。
「……ということだから、護衛の任務は引き続き行うけど、相沢さんのこともあるから、彼には自分の婚約者、相沢さんと、栄枝さんの二人の護衛を頼むことになった。栄枝さん?顔色が悪いようだけど、大丈夫かな」
永徳の真意を考えていたら、社長の話を聞きそびれてしまった。相沢と永徳。この二人は仲が悪かったはずだ。それが婚約とは何が起こったのだろう。いや、二人の利害が一致したのかもしれない。
「そういえば、相沢の不老不死から解放しようとしたのは、お前だったか」
実乃梨のつぶやきは永徳には聞こえたようで、にっこりと背筋が凍るような笑みを向けられた。
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