本日私は姉を卒業します!

秘密 (秘翠ミツキ)

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あれから、数日が経つ。アンジェリカはロランが用意してくれた、部屋でその間過ごしていた。

「アンジェ、君は君の思うようにしていいよ。兄さんの元へ戻りたければ……それでいいし、城を出て行くなら手配するから。あ、それとも僕と結婚したい?僕は大歓迎だよー」

あの時見たロランは幻だったのかと思える程、またいつも通りの掴み所のないロランに戻っている。

「少し、私に時間を頂けませんか?」

アンジェリカの言葉にロランは笑い、頷いた。







そして、更に10日程経った。毎日何をするでもなく時間ばかりが過ぎて行く。その間、アンジェリカは少しだけロランと仲良くなった、と思う。

一緒に食事をしたり、読書をしたり、会話を愉しんだり、散歩もした。その時間は穏やかで、平凡な日々だった。

「ロラン様、またこんな所で寝られて……風邪を引きますよ」

椅子に座り、読書をしていたロランはいつの間にか、眠っていた。それに、気づいたアンジェリカはロランを軽く揺するが、一向に起きる気配はない。

アンジェリカは、ため息を吐き苦笑いを浮かべると、薄手の掛け布を持ってきてロランに掛けやる。ロランからは小さいが、寝息が聞こえてくる。

その姿に、思わずアンジェリカからは笑顔が溢れた。

「……」

これから、自分はどうすればいいのだろう。この半月、考えてはいたが一向に結論は出ない。本来ならば、城を出て気ままに1人旅でもするのが正しいのかも知れない。元々そのつもりだったのだから……。

だが、そう考えると必ずの顔が頭を過る。アンジェリカは、手を握りしめた。私はきっとあの人の事が……。


コンッ。

その時、控えめに扉を叩く音がした。ゆっくりと、扉が開くとそこには。

「ディルク、様……」

「……その、久しぶり。元気そうで良かったよ」

ディルクはそう言いながら、部屋の中へと入ってきた。アンジェリカは、呆然としながらその様子を見守っていた。

「ロランは」

「眠られています」

椅子に座り、すっかり熟睡しているロランを見たディルクは、驚いた顔をする。


「驚いたよ。ロランが人前で、寝るなんて……余程君に、気を許してるんだろうね……」

その言葉にアンジェリカは、目を見開いた。


「ロランは、一見すると誰とでも親しく接しているように見えるけど、本当は誰にも気を許してはいない。兄弟である僕やアルフィオにもね。だから……本当、驚いたよ」

「そうなん、ですか……」

「……」

「……」


会話が途切れ、沈黙が流れた。かなり、気まずい。アンジェリカは、ディルクを盗み見ると、ディルクもまた気まずそうにしている。気まずさに耐えられなくなったアンジェリカは口を開いた。

「ディルク様‼︎」

「あ、アンジェリカ!」

ディルクも同じように考えていたようで、2人の声が重なり、互いに顔を見合わせた。思わず、アンジェリカからは笑みが零れる。

「ふふ、ディルク様、お先にどうぞ」

「あ、いや……なら取り敢えず、場所を変えたい」

ディルクは、ロランの顔を見ながら複雑そうに話した。その様子にアンジェリカは静かに頷く。そして2人は部屋を後にした。












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