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「ロラン様が、猫さんだったなんて」
「驚いた?ごめんね、でもアンジェにバレて嫌われたらと思うと……言い出せなくて。僕の事嫌いになった?」
ロランが、まさかあの『猫さん』の正体だったなんて……。アンジェリカは、本当に猫が喋っていると信じていた故、驚愕し困惑していた。
「……猫、さん?」
「どうしたの、にゃん」
「よ、呼んでみただけです」
アンジェリカは、恥ずかしそうに頬を染め視線をそらす。まさか、ロランが猫さんなんて……正直恥ずかしい。
色々と人に言えないような事を、相談していたのに。
「ねぇ、アンジェ。兄さんなんてやめて、僕のお嫁さんになりなよ」
「ろ、ロラン様……?」
「僕ならアンジェの事、大切に出来るよ。兄さんのように、大勢の中の1人じゃなくて、アンジェだけを愛するって約束する」
ロランが、アンジェの頬に触れるとアンジェは頬を染め、顔が熱いのを感じた。
「アンジェ……」
ゆっくりとロランの顔が、アンジェリカの顔に近づいていく。アンジェリカは、まるで金縛りのように身体が動かない。唇が触れる、直前だった。
バンッと音が鳴る程勢いよく扉が開いた。
「アンジェリカ!」
ディルクは、ツカツカと部屋の中に入ってくるとロランからアンジェリカを引き剥がす。ロランはつまらなそうな表情を浮かべているが、アンジェリカは呆然とし、ディルクになされるがままに引き寄せられた。
「え、あの……ディルク、様?」
「ロランっ、アンジェリカに触れるな!アンジェリカは僕の妃になる……予定の女性だ」
語尾の声は、自信なさげに若干小さくなる。その様子にアンジェリカは、思わず笑みが溢れた。不本意だが、可愛いと思ってしまった。
「そうですわ!ロラン様。卑怯な手を使うのは紳士に有るまじき行為ですわよ」
いつの間にか、シャルロッテが扉の前に立っていた。ツカツカと中へ入って来ると、今度はディルクとアンジェリカを引き剥がす。ディルクは、苛っとした顔をしたが素直にアンジェリカを離した。
「……あ、あの。どなたですか」
唖然として、シャルロッテを見遣るアンジェリカは、突如現れた見た目が派手目で、宝石を上から下までジャラジャラと身に付けている少女に引いていた……センスが壊滅的だ。そして追い討ちをかけるような、長い髪を縦に巻いた斬新な髪型……。
あの髪……どうなってるのかな。
視線は斬新な髪型に釘付けだ。初対面の人間は皆一様に目を丸くして、視線は頭に釘付けになる。アンジェリカも例外ではない。
「私は、王太子妃……候補の、シャルロッテですわ」
『候補』の所は消え入るような程小声で話す。無論アンジェリカには、聞こえなかったようで、目を見開き驚いていた。
「ディルク様の……王太子妃、様」
王太子妃と聞いた瞬間、心臓が跳ねた。ディルクはまだ妃はいないく、候補しかいないと言っていたのに……嘘だったのだろうか。
べ、別にディルク様に妃がいようといまいと、私には関係ない!と心の中で叫ぶ。だが、胸が痛い。
アンジェリカには、胸が苦しくなる理由が分からなかった。
「シャルロッテ嬢!な、何を言うんだ!……アンジェリカ、違うんだ、彼女は」
「違いませんわ、ディルク様」
シャルロッテは、ディルクにべったりと纏わりつく。まさに、美男美女の図だ。シャルロッテは、格好こそヘンテコだがシャルロッテ自身は美少女だ。自分など足元にも及ばないだろう。
自分なんか、ディルクには釣り合わない。きっと、シャルロッテの方がディルクには、相応しい。
不意にアンジェリカは、無意識にロランの袖をぎゅっと掴んだ。目が熱い。自分でも分からないが、涙が出そうになる。ディルクの事など、好きじゃない。好きなんかじゃ、ない。でも、身体も心も震えてる。
「アンジェ……」
ロランは、小刻みに震えているアンジェリカを抱き寄せた。
「大丈夫だよ。兄さんなんかじゃなくて、僕がいるから……泣かないで」
「……⁈」
はらり。はらり。涙が溢れていた。アンジェリカはロランに言われて、初めて自分が涙を流している事に気がついた。
ディルクを見遣ると、ディルクは驚いた様子で立ち尽くしていた。シャルロッテも、困惑した様子でアンジェリカを見ている。
「アンジェリカ……」
ディルクがそう呟いた時。
「行こう、アンジェ」
ロランはアンジェリカの手を引き、部屋を出て行こうとする。それに気づいたディルクは、我に返り急いでアンジェリカの腕を掴もうとしたが。
パンっ。
乾いた音が部屋に響いた。アンジェリカが、ディルクの手を振り叩いた音だった。
振り叩いたアンジェリカ自身も、叩かれたディルクも驚愕し呆然とする。
「……ごめんなさっ」
アンジェリカが、言い終わる前にロランはアンジェリカを連れて部屋を出て行った。
後には、アンジェリカに払われた手をただ見つめ立ち尽くしているディルクと、その様子を見遣るシャルロッテだけが残された。
「驚いた?ごめんね、でもアンジェにバレて嫌われたらと思うと……言い出せなくて。僕の事嫌いになった?」
ロランが、まさかあの『猫さん』の正体だったなんて……。アンジェリカは、本当に猫が喋っていると信じていた故、驚愕し困惑していた。
「……猫、さん?」
「どうしたの、にゃん」
「よ、呼んでみただけです」
アンジェリカは、恥ずかしそうに頬を染め視線をそらす。まさか、ロランが猫さんなんて……正直恥ずかしい。
色々と人に言えないような事を、相談していたのに。
「ねぇ、アンジェ。兄さんなんてやめて、僕のお嫁さんになりなよ」
「ろ、ロラン様……?」
「僕ならアンジェの事、大切に出来るよ。兄さんのように、大勢の中の1人じゃなくて、アンジェだけを愛するって約束する」
ロランが、アンジェの頬に触れるとアンジェは頬を染め、顔が熱いのを感じた。
「アンジェ……」
ゆっくりとロランの顔が、アンジェリカの顔に近づいていく。アンジェリカは、まるで金縛りのように身体が動かない。唇が触れる、直前だった。
バンッと音が鳴る程勢いよく扉が開いた。
「アンジェリカ!」
ディルクは、ツカツカと部屋の中に入ってくるとロランからアンジェリカを引き剥がす。ロランはつまらなそうな表情を浮かべているが、アンジェリカは呆然とし、ディルクになされるがままに引き寄せられた。
「え、あの……ディルク、様?」
「ロランっ、アンジェリカに触れるな!アンジェリカは僕の妃になる……予定の女性だ」
語尾の声は、自信なさげに若干小さくなる。その様子にアンジェリカは、思わず笑みが溢れた。不本意だが、可愛いと思ってしまった。
「そうですわ!ロラン様。卑怯な手を使うのは紳士に有るまじき行為ですわよ」
いつの間にか、シャルロッテが扉の前に立っていた。ツカツカと中へ入って来ると、今度はディルクとアンジェリカを引き剥がす。ディルクは、苛っとした顔をしたが素直にアンジェリカを離した。
「……あ、あの。どなたですか」
唖然として、シャルロッテを見遣るアンジェリカは、突如現れた見た目が派手目で、宝石を上から下までジャラジャラと身に付けている少女に引いていた……センスが壊滅的だ。そして追い討ちをかけるような、長い髪を縦に巻いた斬新な髪型……。
あの髪……どうなってるのかな。
視線は斬新な髪型に釘付けだ。初対面の人間は皆一様に目を丸くして、視線は頭に釘付けになる。アンジェリカも例外ではない。
「私は、王太子妃……候補の、シャルロッテですわ」
『候補』の所は消え入るような程小声で話す。無論アンジェリカには、聞こえなかったようで、目を見開き驚いていた。
「ディルク様の……王太子妃、様」
王太子妃と聞いた瞬間、心臓が跳ねた。ディルクはまだ妃はいないく、候補しかいないと言っていたのに……嘘だったのだろうか。
べ、別にディルク様に妃がいようといまいと、私には関係ない!と心の中で叫ぶ。だが、胸が痛い。
アンジェリカには、胸が苦しくなる理由が分からなかった。
「シャルロッテ嬢!な、何を言うんだ!……アンジェリカ、違うんだ、彼女は」
「違いませんわ、ディルク様」
シャルロッテは、ディルクにべったりと纏わりつく。まさに、美男美女の図だ。シャルロッテは、格好こそヘンテコだがシャルロッテ自身は美少女だ。自分など足元にも及ばないだろう。
自分なんか、ディルクには釣り合わない。きっと、シャルロッテの方がディルクには、相応しい。
不意にアンジェリカは、無意識にロランの袖をぎゅっと掴んだ。目が熱い。自分でも分からないが、涙が出そうになる。ディルクの事など、好きじゃない。好きなんかじゃ、ない。でも、身体も心も震えてる。
「アンジェ……」
ロランは、小刻みに震えているアンジェリカを抱き寄せた。
「大丈夫だよ。兄さんなんかじゃなくて、僕がいるから……泣かないで」
「……⁈」
はらり。はらり。涙が溢れていた。アンジェリカはロランに言われて、初めて自分が涙を流している事に気がついた。
ディルクを見遣ると、ディルクは驚いた様子で立ち尽くしていた。シャルロッテも、困惑した様子でアンジェリカを見ている。
「アンジェリカ……」
ディルクがそう呟いた時。
「行こう、アンジェ」
ロランはアンジェリカの手を引き、部屋を出て行こうとする。それに気づいたディルクは、我に返り急いでアンジェリカの腕を掴もうとしたが。
パンっ。
乾いた音が部屋に響いた。アンジェリカが、ディルクの手を振り叩いた音だった。
振り叩いたアンジェリカ自身も、叩かれたディルクも驚愕し呆然とする。
「……ごめんなさっ」
アンジェリカが、言い終わる前にロランはアンジェリカを連れて部屋を出て行った。
後には、アンジェリカに払われた手をただ見つめ立ち尽くしているディルクと、その様子を見遣るシャルロッテだけが残された。
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