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「アンジェはどれが好き?」
「そうですね、私は」
ディルクが部屋を出て行ってから一刻程経った。が未だに戻って来る気配がない。
そして待っている間、アンジェリカとロランは意外にも仲良くなっていた。ロランはどうやら甘い物が好きらしい。レネーが用意してくれた様々な焼き菓子を一緒に食べながら会話も弾むが。
「アンジェリカ、どうかした?」
「え、あ…いえ」
中々戻らないディルクにアンジェリカは心配になる。国王に呼び出された理由は多分自分の事だろう。よくよく考えたらディルクは王太子である。アンジェリカは気になる事が頭に浮かんだ。
「ロラン様、1つお伺いしても宜しいでしょうか?」
アンジェリカのその言葉にロランではなくレネーが反応を見せた。
「アンジェリカ様、新しいお茶をお煎れ致します」
「ありがとうございます。ロラン様、それで」
「アンジェリカ様、此方のお茶などは如何ですか?これは遠方から遥々取り寄せた珍しい、種類のお茶でして」
「そうなんですね、ではそれでお願い致します。あ、それでロラン様」
「アンジェリカ様!こちらの焼き菓子お召し上がりは頂きましたか?これはうちの城の料理長オリジナルの…」
レネーは延々と焼き菓子について語り出す。よくそんなに焼き菓子について語る事があるな、と感心する程に。アンジェリカはレネーから何か鬼気迫るものを感じた…。
レネーの気迫に押され呆然として話を聞く中、その言葉を遮りロランが口を開く。
「でアンジェ、聞きたい事って何?」
その言葉にレネーは焦りながら他の話題を探す。その姿は必死だ。
「そうでした…それなんですが」
「あ、アンジェリカ様!」
レネーは再び話を遮ろうとする、が。
「レネー、煩い。今僕がアンジェリカと話してるの。少し黙れ」
瞬間ロランの纏う空気が変わる。それに気づいたアンジェリカはビクッとなった。レネーを見ると押し黙っている。
「アンジェ、良いよ。聞きたい事あるんでしょ?」
「はい…ディルク様の事なんですが」
アンジェリカは廊下を爆走していた。淑女たる者走るなどはしたないと思うが、今はそんな事どうでもいい。それに自分はもう自国を離れ家を出て自由の身だ。淑女など意識する必要はない。もう公爵令嬢ではなく、今はただのアンジェリカなのだから。
莫迦だった。少し考えたら分かる事なのに。嫌がりながらも、どこかでディルクの甘い言葉に期待していた自分がいたんだ。…恥ずかしい。
このまま城を出て、何処か遠くへ行こう。色んな場所を放浪しながら旅をするのもいい。元々そのつもりだったのだから…。
アンジェリカの凄い形相に誰も話しかける事が出来ず、廊下にいた侍女達は引いていた。やがて廊下を抜け門が見えてくる。
方向音痴じゃなくて良かった。正直部屋を飛び出したのはいいが…出口が見つからなかったらどうしようかと思った。この広い城の中で迷子になどなりたくない。アンジェリカは少し胸をなで下ろす。
門に向かって突進する勢いのアンジェリカに門番は驚愕した。それもそうだろう、まさかドレスを靡かせたうら若き少女が猪突猛進の如く走ってくるなど驚く意外ない。
後少し!とアンジェリカが思った時。
「っ…⁈」
何かに当たりよろけた。前をよく見ないとこうなるのね…アンジェリカには門しか目に入ってなかった。まさか正面に誰か飛び出してくるなんて…。
そのまま倒れるかと思ったが誰かに抱き寄せられ、転倒するのを免れた。
「そうですね、私は」
ディルクが部屋を出て行ってから一刻程経った。が未だに戻って来る気配がない。
そして待っている間、アンジェリカとロランは意外にも仲良くなっていた。ロランはどうやら甘い物が好きらしい。レネーが用意してくれた様々な焼き菓子を一緒に食べながら会話も弾むが。
「アンジェリカ、どうかした?」
「え、あ…いえ」
中々戻らないディルクにアンジェリカは心配になる。国王に呼び出された理由は多分自分の事だろう。よくよく考えたらディルクは王太子である。アンジェリカは気になる事が頭に浮かんだ。
「ロラン様、1つお伺いしても宜しいでしょうか?」
アンジェリカのその言葉にロランではなくレネーが反応を見せた。
「アンジェリカ様、新しいお茶をお煎れ致します」
「ありがとうございます。ロラン様、それで」
「アンジェリカ様、此方のお茶などは如何ですか?これは遠方から遥々取り寄せた珍しい、種類のお茶でして」
「そうなんですね、ではそれでお願い致します。あ、それでロラン様」
「アンジェリカ様!こちらの焼き菓子お召し上がりは頂きましたか?これはうちの城の料理長オリジナルの…」
レネーは延々と焼き菓子について語り出す。よくそんなに焼き菓子について語る事があるな、と感心する程に。アンジェリカはレネーから何か鬼気迫るものを感じた…。
レネーの気迫に押され呆然として話を聞く中、その言葉を遮りロランが口を開く。
「でアンジェ、聞きたい事って何?」
その言葉にレネーは焦りながら他の話題を探す。その姿は必死だ。
「そうでした…それなんですが」
「あ、アンジェリカ様!」
レネーは再び話を遮ろうとする、が。
「レネー、煩い。今僕がアンジェリカと話してるの。少し黙れ」
瞬間ロランの纏う空気が変わる。それに気づいたアンジェリカはビクッとなった。レネーを見ると押し黙っている。
「アンジェ、良いよ。聞きたい事あるんでしょ?」
「はい…ディルク様の事なんですが」
アンジェリカは廊下を爆走していた。淑女たる者走るなどはしたないと思うが、今はそんな事どうでもいい。それに自分はもう自国を離れ家を出て自由の身だ。淑女など意識する必要はない。もう公爵令嬢ではなく、今はただのアンジェリカなのだから。
莫迦だった。少し考えたら分かる事なのに。嫌がりながらも、どこかでディルクの甘い言葉に期待していた自分がいたんだ。…恥ずかしい。
このまま城を出て、何処か遠くへ行こう。色んな場所を放浪しながら旅をするのもいい。元々そのつもりだったのだから…。
アンジェリカの凄い形相に誰も話しかける事が出来ず、廊下にいた侍女達は引いていた。やがて廊下を抜け門が見えてくる。
方向音痴じゃなくて良かった。正直部屋を飛び出したのはいいが…出口が見つからなかったらどうしようかと思った。この広い城の中で迷子になどなりたくない。アンジェリカは少し胸をなで下ろす。
門に向かって突進する勢いのアンジェリカに門番は驚愕した。それもそうだろう、まさかドレスを靡かせたうら若き少女が猪突猛進の如く走ってくるなど驚く意外ない。
後少し!とアンジェリカが思った時。
「っ…⁈」
何かに当たりよろけた。前をよく見ないとこうなるのね…アンジェリカには門しか目に入ってなかった。まさか正面に誰か飛び出してくるなんて…。
そのまま倒れるかと思ったが誰かに抱き寄せられ、転倒するのを免れた。
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