本日私は姉を卒業します!

秘密 (秘翠ミツキ)

文字の大きさ
上 下
11 / 27

10

しおりを挟む
「左様でございますか。ですが陛下がお許しになられるかどうか…」

アンジェリカはディルクに抱えられたまま、ディルクの自室まで連れて行かれた。そこでようやく解放された。その後レニーが用意してくれたお茶をディルクと一緒に飲んでいる。

「父上が何と言おうと僕はアンジェリカを妃に迎える。でなければ僕は妃を娶らない」


また陛下が聞いたら頭を抱えそうな事をおっしゃる…レネーは苦悩する。ディルクを始めとしてこの国の王子達は本当に手がやける。どうも癖のある方ばかりだ…。陛下は人格者であり誰からも尊敬の念を向けられる様な方だが息子達は…見ての通り難ありだ。

「ディルク様、その様な事を仰られては困ります」

レネーは頭の次は胃が痛くなってきた…。もう若くはないが、そこまで歳でもない。だが今から長生き出来る気が全くしない。日々の心労が溜まり過ぎて…ある日ぽっくり逝くかも知れない。

「へぇ~。これが噂のご令嬢?」

扉を叩く音が聞こえるが、返事も待たずに開いた。

「ロラン…勝手に入らないでくれるかな」

ディルクに少し似た姿の美男子イケメンは我が物顔で部屋に入ると、アンジェリカの隣に勝手に腰を下ろした。

「そんなに怒らないでよ、兄さん。僕はただあの兄さんの心臓を貫いた女性を見にきただけなんだから」

「…ロラン、それだと僕は既にこの世にはいないと思うよ」

ディルクは呆れた表情を浮かべる。

「ロラン様、もし例えるならば『心を射止めた』の方が宜しいかと思います」

アンジェリカは思った。あ、ちょっと頭が弱いのかな…と。まあ、それは置いておくとしてディルクを『兄さん』と呼んでいる事からして、ディルクの弟でありこの国の王子なのだと分かる。見た目も所謂美男子イケメンだし何処と無くディルクに似ている。執事のレネーも含めて、この国は美男子イケメンが多いのかも知れない。

「どっちでも変わらないよ。本当に兄さんもレネーも細かいね。あ、レネー僕にもお茶淹れて」

アンジェリカもディルクも全然意味が違うだろうと呆れた顔をした。外見はいいのに中身が残念過ぎる。

「僕は、第2王子のロラン。君は?」

「わ、私はアンジェリカと申します…」

「アンジェリカか、可愛いね。アンジェって呼んでもいい?」

ロランはアンジェリカの手をさり気なくとる。顔が妙に近い…。アンジェリカは引き気味に笑った。

「ロラン、いい加減にしないと僕も怒るよ」

そう言うディルクの顔は既に怒っている。笑顔だが気迫を感じた。

「兄さん、心はもっと長くもたないとダメだよ」

それを言うならば広く若しくは大きくの間違いだ。アンジェリカは苦笑する。大丈夫かしら…この国は。

「本当に、君と話していると頭痛がしてくるよ」

「えっ風邪でも引いた?大丈夫?薬師でも呼ぼうか?」

本気で心配しているロランにディルクも苦笑いを浮かべる。何となく憎めないのが複雑だ。

「お話中失礼致します。ディルク様、陛下がお呼びです」

侍女が部屋の中に入って来るとそう告げた。どうやら早くもアンジェリカの事が耳に入ったらしい。まあ、あれだけ目立てば当たり前か…。ディルクは愉しそうに笑うと立ち上がる。

「レネー、僕は少し外す。アンジェリカを頼んだよ」

「承知致しました」

ディルクは部屋を出る際レネーに耳打ちをした。

ロランに余計な事を喋らせるな、と。


しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

婚約破棄の裏事情

夕鈴
恋愛
王家のパーティで公爵令嬢カローナは第一王子から突然婚約破棄を告げられた。妃教育では王族の命令は絶対と教えられた。鉄壁の笑顔で訳のわからない言葉を聞き流し婚約破棄を受け入れ退場した。多忙な生活を送っていたカローナは憧れの怠惰な生活を送るため思考を巡らせた。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

処理中です...