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ようやく城へ着いたのは更に数日後だった。隣国とは言えど長旅だった…。アンジェリカはため息を吐く。長時間同じ体勢だった所為か身体が痛い。
「さあ、お手をどうぞお姫様」
ディルクは少し戯けたように笑い、馬車を降りようとしていたアンジェリカに手を差し出した。
「お手を煩わせるまでもありません」
何時もなら誰かの手を借りて乗り降りするなど普通の事で、寧ろ差し出された手を断るなど礼儀に反する故絶対にしない。だが、何となく意地を張ってしまい条件反射で出していた手を引っ込めてしまった。こんな事初めてだ。
「意外と強情なんだね。嫌いじゃないよ、そういうの」
ディルクはそう言って可笑しそうに笑うとアンジェリカを抱き上げた。急に身体がふわりと浮き驚いたアンジェリカは声をあげる。
「ディルク様⁈」
「大丈夫、落としたりしないから」
そこじゃない!と内心アンジェリカは突っ込む。不意に嫌な予感がしてきて焦るアンジェリカを他所に、ディルクはそのまま歩き出した。
予想通りのまさかの展開。ディルクはアンジェリカを抱き上げたまま入城するつもりだ…。
「ディルク様!私歩けますから、おろして下さい!」
「大切な僕のお姫様だからね。丁重に扱わないと」
根本的にズレているディルクにアンジェリカは呆れて諦めた。これは何を言ってもダメだ。力では敵わないし、自らおりる事も出来ない。
アンジェリカは大人しく子供のように抱き上げられそのまま入城する他なかった。無論2人の姿を見て城の者達は驚愕した目でアンジェリカとディルクを見ていた。
でしょうね…。私だって驚いている。
「ディルク様⁈」
完全に諦め、なされるがままのアンジェリカを抱きかかえたディルクは上機嫌で廊下を歩いていた。そんな時正面から足早に此方へ向かってくる青年が見えた。大分急いだ様子で息を切らしている。
「あぁ、レネー。今戻ったよ」
青年に気付いたディルクはそう声を掛けた。アンジェリカはレネーを横目でちらりと見遣る。…格好から察するに、執事だろう。やや吊り目の細身で長身、黒の執事服、長めの黒髪を後ろで束ねている。
「ディルク様、お帰りなさいませ…ではありません!これは一体どの様な状況なのですか⁈」
レネーはディルクが戻ったと聞いてお茶の準備をしていた。道中の疲労が溜まっているだろうディルクの為に疲れが少しでもとれればと、ハーブーティーを用意し始めた矢先だった。
「王太子殿下が何処ぞの令嬢を抱きかかえ城内を歩き回っている」
と耳にし、レネーは一瞬耳を疑った。
ディルク様が令嬢を抱えて場内を歩き回っている…とはなんだ…。それが否かどうかは分からないが、本当なら色々と面倒くさい事になる。レネーはディルクの元へ駆け出した。
「あぁ、彼女はアンジェリカだよ。僕の大切な女性で将来僕の妃になる予定の女性だよ」
ディルクの言葉を受けレネーは色々と言いたいが一先ず止まる。誰が聞き耳を立てているか分からないこんな場所で話す事ではない。
しかし、隣国の王太子の婚儀で一体何がどうなればこの状況になるのか…。何故何処ぞの令嬢を抱え城の廊下を平然として歩いていたのか…ため息しかでない。本当に自由な方だ。
昔から他人の目を全く気にしない性質ではあるが、ディルクは今年で18になる。もう少し節度ある振る舞いをして貰いたい。頭が痛くなってくる…。
「ディルク様…予定とはどういう事かご説明頂けますか?」
レネーはため息混じりに口を開いた。
「さあ、お手をどうぞお姫様」
ディルクは少し戯けたように笑い、馬車を降りようとしていたアンジェリカに手を差し出した。
「お手を煩わせるまでもありません」
何時もなら誰かの手を借りて乗り降りするなど普通の事で、寧ろ差し出された手を断るなど礼儀に反する故絶対にしない。だが、何となく意地を張ってしまい条件反射で出していた手を引っ込めてしまった。こんな事初めてだ。
「意外と強情なんだね。嫌いじゃないよ、そういうの」
ディルクはそう言って可笑しそうに笑うとアンジェリカを抱き上げた。急に身体がふわりと浮き驚いたアンジェリカは声をあげる。
「ディルク様⁈」
「大丈夫、落としたりしないから」
そこじゃない!と内心アンジェリカは突っ込む。不意に嫌な予感がしてきて焦るアンジェリカを他所に、ディルクはそのまま歩き出した。
予想通りのまさかの展開。ディルクはアンジェリカを抱き上げたまま入城するつもりだ…。
「ディルク様!私歩けますから、おろして下さい!」
「大切な僕のお姫様だからね。丁重に扱わないと」
根本的にズレているディルクにアンジェリカは呆れて諦めた。これは何を言ってもダメだ。力では敵わないし、自らおりる事も出来ない。
アンジェリカは大人しく子供のように抱き上げられそのまま入城する他なかった。無論2人の姿を見て城の者達は驚愕した目でアンジェリカとディルクを見ていた。
でしょうね…。私だって驚いている。
「ディルク様⁈」
完全に諦め、なされるがままのアンジェリカを抱きかかえたディルクは上機嫌で廊下を歩いていた。そんな時正面から足早に此方へ向かってくる青年が見えた。大分急いだ様子で息を切らしている。
「あぁ、レネー。今戻ったよ」
青年に気付いたディルクはそう声を掛けた。アンジェリカはレネーを横目でちらりと見遣る。…格好から察するに、執事だろう。やや吊り目の細身で長身、黒の執事服、長めの黒髪を後ろで束ねている。
「ディルク様、お帰りなさいませ…ではありません!これは一体どの様な状況なのですか⁈」
レネーはディルクが戻ったと聞いてお茶の準備をしていた。道中の疲労が溜まっているだろうディルクの為に疲れが少しでもとれればと、ハーブーティーを用意し始めた矢先だった。
「王太子殿下が何処ぞの令嬢を抱きかかえ城内を歩き回っている」
と耳にし、レネーは一瞬耳を疑った。
ディルク様が令嬢を抱えて場内を歩き回っている…とはなんだ…。それが否かどうかは分からないが、本当なら色々と面倒くさい事になる。レネーはディルクの元へ駆け出した。
「あぁ、彼女はアンジェリカだよ。僕の大切な女性で将来僕の妃になる予定の女性だよ」
ディルクの言葉を受けレネーは色々と言いたいが一先ず止まる。誰が聞き耳を立てているか分からないこんな場所で話す事ではない。
しかし、隣国の王太子の婚儀で一体何がどうなればこの状況になるのか…。何故何処ぞの令嬢を抱え城の廊下を平然として歩いていたのか…ため息しかでない。本当に自由な方だ。
昔から他人の目を全く気にしない性質ではあるが、ディルクは今年で18になる。もう少し節度ある振る舞いをして貰いたい。頭が痛くなってくる…。
「ディルク様…予定とはどういう事かご説明頂けますか?」
レネーはため息混じりに口を開いた。
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