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隣国の王太子ディルクの登場に1人歓喜するアンジェラ。その隣では如何にも面白くないと言わんばかりの表情を浮かべている自国の王太子リクハルドがいる。
それもそうだろう。自身の最愛の妻が他所の男に目を輝かせている姿を見て面白い訳はない。
「ディルク王子、些か失礼ではないか。今は王太子妃の父君と母君との話の途中だと言うのに」
正直長話に嫌気をさしていたリクハルドだったが、そんな事は棚に上げここぞとばかりにディルクに言い放つ。
自国と隣国は友好国ではあるが、王太子同士の仲は余り良くない。表面上をいくら取り繕っても仲の悪さが滲みでてきてしまう。
「それは失敬。ただ僕は他の方々も待ち草臥れているのではないかと思ってね。例えば…王太子妃の姉君とか」
ディルクの言葉に一斉にアンジェリカに視線が集まる。
アンジェリカは瞬間心臓が跳ねた。まさか自分の事を言われるとは思わなかったので驚愕し暫し思考が停止した。
思わず顔が引き攣る。暑くもないのに汗が顔を伝うのが分かった。
「アンジェリカ嬢」
ディルクはわざわざアンジェリカの元へ来て手を差し伸べてきた。
アンジェリカが遠慮がちにディルクの顔を見ると微笑まれる。普通の令嬢なら皆この笑顔にときめきを覚えるだろう。無論アンジェラも例外ではない。だがアンジェリカは引いた。なんだろう。物凄く胡散臭い。
「さあ、お手をどうぞ」
いえ、結構です。と本音では言いたい。が言える訳がない。何しろ相手は隣国の王太子だ。拒否権などアンジェリカにはない。故にこれは脅迫に近いと思った…。
アンジェリカはぎこちなく笑みを浮かべると、仕方なしにディルクの手を取った。そして手を引かれてアンジェラとリクハルドの前へ連れて行かれた。
アンジェリカは2人の前で立ち止まり、両親は少し端に避けこちらを伺っていた。
アンジェリカは深呼吸し2人を見据える。予想外ではあったが寧ろ良い機会を与えられたと思う。
「王太子殿下、アンジェラ…いいえ、王太子妃殿下。この度はご成婚心よりお祝い申し上げます」
そう述べるとアンジェリカは正式な礼をとる。
「お姉様…ありがとうございます。でも王太子妃殿下なんて…他人行儀でアンジェラは寂しいです」
そう大袈裟に言いながらアンジェラは俯くが、視線だけはアンジェリカを睨んでいた。そして、その目は怒りに燃えている。先程ディルクがアンジェリカの手を引いて来たのが面白くないのだろう…。
「アンジェラ…」
アンジェリカは眉を寄せ笑みを浮かべて見せた。普通なら仲の良い姉妹の感動の場面だろうが冗談じゃない。相変わらずの猫被りに内心ドン引きをした。寂しい?リクハルドとの婚姻が正式に決まった時散々見下され莫迦にされた。「こんな行き遅れ女が双子の姉とか本当ありえないから。まあ、私が優雅に城で暮らすようになったらその辛気臭い顔を見る事はなくなるし、清々するけどねー」と。
「実は私、最愛の妹へ手紙を綴ってきたのですが…この場を借りまして読み上げさせて頂いても宜しいでしょうか?」
アンジェラは興味無さげな目をしているが、リクハルドは笑みを浮かべ快く承諾した。何故か未だに横に控えているディルクは興味津々な様子に見えた…。
アンジェリカは手紙を取り出し参列者の方へ身体を向けるとこう言い放つ。
「ご参列の皆様にも是非私から王太子妃殿下への手紙をお目通し頂きたく存じます」
その言葉に会場に控えていた侍女数名が徐に封筒を取り出すと参列者達に配り始めた。全員分は流石に用意出来なかったので2割くらいの者達の手に渡った。それを確認したアンジェリカは再びアンジェラとリクハルドへ向き直った。
「アンジェラ、私貴方が嫌いでした」
それもそうだろう。自身の最愛の妻が他所の男に目を輝かせている姿を見て面白い訳はない。
「ディルク王子、些か失礼ではないか。今は王太子妃の父君と母君との話の途中だと言うのに」
正直長話に嫌気をさしていたリクハルドだったが、そんな事は棚に上げここぞとばかりにディルクに言い放つ。
自国と隣国は友好国ではあるが、王太子同士の仲は余り良くない。表面上をいくら取り繕っても仲の悪さが滲みでてきてしまう。
「それは失敬。ただ僕は他の方々も待ち草臥れているのではないかと思ってね。例えば…王太子妃の姉君とか」
ディルクの言葉に一斉にアンジェリカに視線が集まる。
アンジェリカは瞬間心臓が跳ねた。まさか自分の事を言われるとは思わなかったので驚愕し暫し思考が停止した。
思わず顔が引き攣る。暑くもないのに汗が顔を伝うのが分かった。
「アンジェリカ嬢」
ディルクはわざわざアンジェリカの元へ来て手を差し伸べてきた。
アンジェリカが遠慮がちにディルクの顔を見ると微笑まれる。普通の令嬢なら皆この笑顔にときめきを覚えるだろう。無論アンジェラも例外ではない。だがアンジェリカは引いた。なんだろう。物凄く胡散臭い。
「さあ、お手をどうぞ」
いえ、結構です。と本音では言いたい。が言える訳がない。何しろ相手は隣国の王太子だ。拒否権などアンジェリカにはない。故にこれは脅迫に近いと思った…。
アンジェリカはぎこちなく笑みを浮かべると、仕方なしにディルクの手を取った。そして手を引かれてアンジェラとリクハルドの前へ連れて行かれた。
アンジェリカは2人の前で立ち止まり、両親は少し端に避けこちらを伺っていた。
アンジェリカは深呼吸し2人を見据える。予想外ではあったが寧ろ良い機会を与えられたと思う。
「王太子殿下、アンジェラ…いいえ、王太子妃殿下。この度はご成婚心よりお祝い申し上げます」
そう述べるとアンジェリカは正式な礼をとる。
「お姉様…ありがとうございます。でも王太子妃殿下なんて…他人行儀でアンジェラは寂しいです」
そう大袈裟に言いながらアンジェラは俯くが、視線だけはアンジェリカを睨んでいた。そして、その目は怒りに燃えている。先程ディルクがアンジェリカの手を引いて来たのが面白くないのだろう…。
「アンジェラ…」
アンジェリカは眉を寄せ笑みを浮かべて見せた。普通なら仲の良い姉妹の感動の場面だろうが冗談じゃない。相変わらずの猫被りに内心ドン引きをした。寂しい?リクハルドとの婚姻が正式に決まった時散々見下され莫迦にされた。「こんな行き遅れ女が双子の姉とか本当ありえないから。まあ、私が優雅に城で暮らすようになったらその辛気臭い顔を見る事はなくなるし、清々するけどねー」と。
「実は私、最愛の妹へ手紙を綴ってきたのですが…この場を借りまして読み上げさせて頂いても宜しいでしょうか?」
アンジェラは興味無さげな目をしているが、リクハルドは笑みを浮かべ快く承諾した。何故か未だに横に控えているディルクは興味津々な様子に見えた…。
アンジェリカは手紙を取り出し参列者の方へ身体を向けるとこう言い放つ。
「ご参列の皆様にも是非私から王太子妃殿下への手紙をお目通し頂きたく存じます」
その言葉に会場に控えていた侍女数名が徐に封筒を取り出すと参列者達に配り始めた。全員分は流石に用意出来なかったので2割くらいの者達の手に渡った。それを確認したアンジェリカは再びアンジェラとリクハルドへ向き直った。
「アンジェラ、私貴方が嫌いでした」
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